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隣国王子がやってきました

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 あーあ、王族の掟、破っちまったな。

「王族の妃探しに口を出すべからず」

 口どころか手も出しちまった……
 後で父上に叱責されるだろうな。まぁ、怒られるくらいで済むなら安いものだが……国同士の問題にならなきゃいいけど。

 俺は眠っているクラリスの頭をそっと撫でる。

 心配かけたな……

「ん、んー、ん? アルベルト様!」

 いきなりガバッと起きたクラリスに驚き、手を慌てて引っ込め、俺は目線を落としたが、クラリスは覗き込み、無遠慮に俺の顔をじっと見た。

「アルベルト様、起きたのですね……具合はどうですか?」
「ん、まぁ、大丈夫だ」
「アルベルト様……良かった……良かった」
「心配かけたな」
「良かった……」

 安心したのかクラリスの顔がフニャリと崩れ、何度も何度も「良かった」とつぶやき、澄んだ目からポロリと涙がこぼれる。俺はギョッとし、慌てふためき、クラリスの肩に手を置く。

 えっ……な、泣くなよ……

「目の前で急に倒れて、心配で心配で……」
「ごめん……」
「もうバカですかっ! 疲れた身体であんなに暑い日にうろうろして!」
「もう……ごめんってば……気をつけるから、泣くなよ」

 クラリスは怒りながらも涙は次から次に溢れ出てくるみたいで、一向に止まる気配がない。参ったな……と頭を掻きつつも、俺のために泣いている目の前の女の子が堪らなく愛しくて、頬に伝っていたクラリスのきれいな涙に俺は思わず唇を寄せた。

 クラリスの目がこれでもかというくらい真ん丸くなり、ボボボッとすごいスピードで頬を染め、キスした所を手で押さえる。

「な、な、な……に……アルベルト様!?」
「やっと泣き止んだ」

 俺が悪戯っぽく笑うと、クラリスは、もうっとプイッと横をむき、真っ赤な頬をぷぅと膨らませる。

「からかわないで下さい!」
「からかってなんかない。俺は……」
「起きたのですか?」
「!?」

 突然の第三者の声に俺は口をつぐみ……冷や汗がタラリと流れた。

 なんか、いやぁぁぁな声がした。いつからこの声の主はいたんだ!?
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