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隣国王子がやってきました

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 見覚えのある天井が目に入る。

 ああ、自分のベッドに寝てるんだ……あれ? 俺、どうしたっけ? 

 上半身を起こすと、頭がズキッと痛い。
 とりあえず乾いた喉を潤すため、水を持ってきてもらおうとサイドテーブルのベルに手を伸ばし……うぉっ。

「びっくりしたぁ……」

 思わず口から驚きの言葉が漏れてしまう。

 だって、クラリスがサイドテーブルにつっぷして寝ているんだぜ? びっくりするだろ。

「クラリス……?」

 俺は小声で呼んでみたが、くぅくぅ眠っていて起きそうもない。モソモソベッドのはじに移動し、そっとクラリスの長く柔らかい髪に触り、寝ているクラリスの顔を覗き込み、唇に……

 ガチャ

「おや、王子、起きましたか」

 扉の開く音とナクサスの声にビクッと肩を震わせ、慌てて素知らぬ振りをした。

「どうしたんだ、俺は」
 
 ベッドに寝ていた理由を確認すべく、ナクサスに問いかけたが、なんとなく気まずさもあり視線を外す。

 ……ナクサスに見られてたか? 何もしてないけどさ。

「馬車の中で倒れたんですよ。このところ寝る間もないくらい忙しかったですからねぇ。お医者様も疲れだろうとのことでしたし」
「そうか……それで、なんでクラリスがここで寝てるんだ?」
「クラリス様が王子の事を心配して心配して、王子の目が覚めるまでここにいるとおっしゃって……喉が乾いたでしょう、王子、お水をどうぞ」
「ああ、ありがとう」

 俺はナクサスから水の入ったコップを渡され、コクリと飲む。あ、なんか、干からびてた体の隅々に水分が行き渡るようだ。

「本当に王子はバカですか? もう少し体調管理をしっかりして下さい。クラリス様が心配しますよ?」
「そう、だな。気をつける」

 俺がクラリスを見つめながら返事をすると、ナクサスは拍子抜けしたような顔をする。

「おや、珍しく素直ですね。さすがクラリス様です」
「セドニー王子はどうした?」
「ああ、あの後、ジェスター様とミカエル様が町を案内したみたいです。結構、楽しくすごされたようですよ」

 ナクサスはククッと笑うと空のコップを受け取り「もう一杯飲みますか?」と聞いてきた。
 俺は頷き「では少々お待ち下さい」とナクサスは部屋を出ていく。再び俺とクラリスは2人になった。
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