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隣国王子がやってきました

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 クラリスと王子は市場に行き、出店でみせを見てまわっていた。ドーナツの出店を見つけると、テッカテカのチョコがけのドーナツにするかカラフルなベリーのドーナツにするかを真剣に悩み、結局2つ買っていた。王子と半分づつにすることに決めたらしい。王子も優しい眼差しをクラリスにむけながら、嬉しそうに食べ歩いている。
 
 もう、俺はどうしたらいい?

 羨ましすぎて、今すぐにでも王子を引っ剥がし、俺がクラリスと並びたい。隣を見るとジェスター、ミカエルも同じことを考えているのか、歯ぎしりが聞こえる。

 クラリスがお勧めのサンドイッチがあると購入し、木陰になっているベンチに座った2人。少し会話を交わすと、クラリスが紅潮させた頬を両手で押さえ、うつむいてしまう。

 その様子に俺の心臓が大きくドクンと震えた。

 何があったんだ。クラリス……
 今、口説かれてるのか?

 下を向いているクラリスの肩に手を回し、抱き寄せようとする王子。それを目の当たりにした俺はとうとう堪忍袋の緒が切れた。
 ミカエルとジェスターの「落ち着け」と俺を止める声が聞こえたが、クラリスが目の前で口説かれているのに落ち着いていられるか!

 俺はスタスタと2人に近づき、クラリスの肩に触れていた王子の手をパシンと払い、クラリスの腕を掴んだ。そして、セドニー王子ににっこり笑いかける。

「俺の婚約者なんで連れて帰ります」

 いきなり俺が出てきたものだから、クラリスは目をパチクリさせていたが、構わずクラリスを引っ張り、そのまま王家の馬車に乗り込んだ。

「え? アルベルト様? 一体何が……」

 勢いで連れてきてしまったが、どう説明しようかとクラリスから視線を外し、考えていると……視界がグニャリと歪んだ。目の前が暗くなり……頭がズキズキと痛みだす。あれ? と思っている間に俺は倒れてしまう。

「アルベルト様ーー」

 俺の名を呼びながら泣くクラリスの声がだんだん遠のいていき、俺は意識を失くしてしまった……
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