鈍感令嬢に恋した時から俺の苦労は始まった

桜乃

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隣国王子がやってきました

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 こんな事態にならない為に今まで頑張ってきたのに、なんでこうなっちゃたんだよ……

 俺は失意のどん底の中、王宮に帰り着くと、学園から先に帰ってきていたのかセドニー王子を見かける。俺は背筋を伸ばし、声をかけた。

「セドニー王子、学園体験お疲れ様でした」
「アルベルト王子、ありがとうございます。クラリスとお話中でしたので、先に帰ってきてしまいましたが……」

 相変わらずのアルカイックスマイルなのだが、どことなく声が浮かれているように聞こえ、俺は唇を噛む。

「それは構いません。それより、明日はクラリスと出かけるそうですね?」

 視線に「クラリスに手を出すな」という思いを込めるが、王子は気づいているのかいないのか、楽しそうに話し始めた。

「クラリスから聞いたんですか? 明日、デートします。クラリスは優しくていい子ですね」
「もちろんです。私のですから」
「ああ、そうでしたね。でも、婚約者を名乗っていられるのも今日が最後かもしれませんよ?」

 王子は碧い瞳に含みを持たせ、クスリと笑うと「では……」と俺の前から去っていく。

 俺はしばらくその場に立ち尽くしていたが、自分の頬をパシンッと叩き、気合いを入れ直す。

 俺がどれくらい長い間、想い続けていると思うんだ……そんじゃそこらの恋じゃないんだぞ。他の男に取られてたまるか!

 
 ……というわけで、俺は今、公園の木の陰に隠れてクラリスとセドニー王子を見張っている。

 一国の王子がコソコソと人のデートについていくなんて、ナクサスが知ったら、情けない……と大泣きするかも。でも、しょうがないだろー! 国の外交だの、王族の掟だの、暗黙の了解だの色々とあるんだから!! 俺が動くのが一番手っ取り早いんだよっ。

 そして、どこで聞きつけたのか、ジェスター、ミカエルも一緒にコソコソしていて……傍から見たら、男3人何してんの?って思われてそうだ……

 今日は真夏の太陽が戻ってきたのかと思うような暑さで、公園から見える海に太陽光がギラギラ反射して眩しい。クラリスはアイボリーの半袖ワンピースに同じカラーの帽子をかぶり、胸にはザラのペンダント……さぁ、虫よけ男よけのペンダントよ、思う存分発動しちゃって下さい……って発動しないのかよっ!
 あーあ、なんか楽しそうに笑ってるなぁ……

 クラリス達はあちこちの店を楽しそうに覗いていた。お店に気を取られていたクラリスが段差につまづき、王子がクラリスの腰に手を回し、転ぶのを防ぐ。クラリスは恥ずかしそうに王子にペコリペコリと何度も謝り……

 ガタンッ

 俺の頭に血がのぼるよりも先に、苛立ったジェスターが壁を叩き、その振動で近くに積んであった木箱が倒れる。普段のジェスターからは想像できない行動に俺もミカエルも怒りより先に驚いてしまう。「ごめん」と謝罪するジェスターと3人で木箱を直す。

 なにやってんだろう……俺達。
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