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邂逅 ―カイコウ―

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 どうしても諦めきれない僕は、多少無理をしてでも彼女の姿を求め、町に探しに行った。

 空は青い。
 雲は白い。
 風は優しく、草木は生命力に溢れてる。
 川面はキラキラと光り、振り返った君は……いない。

 あの日と同じ風景なのに、君1人がいないだけで全然違う。

 町で彼女の消息が全く掴めない事に気落ちし、屋敷に帰るの繰り返し……それでも僕は彼女を探し続ける。


 そんな日々を過ごしていたある日。

 友人のミカエル・アルフォントから町へ買い物に誘われた。

 アルフォント公爵の養子であるミカエルは柔和な顔の美少年だ。元気すぎる幼馴染みのアルベルトとは全く別のタイプで、穏やかで落ち着いた雰囲気を持ち、一緒にいるだけで和やかな気分になる大切な友人だ。

 行きの馬車の中で、何を買うんだ? と尋ねたら、町でしか買えないお菓子があるからと幸せそうに笑った。詳しくは言わなかったが、どっちがいいかなぁ……と呟きながらお菓子を選んでいる様子から、好きな令嬢へのプレゼントだと思われる。

 どこの誰かなんて野暮な事は聞かないけど、身分、性格、容姿、全てにおいて文句のつけようがないミカエルは、どの家門の令嬢でも諸手を挙げて喜ばれるはず。よほどの事がない限り、ミカエルの恋は叶うだろう。

 嬉しそうにプレゼントを選んでいるミカエルが微笑ましいと思う反面、僕の胸には切なさが広がった。

 羨ましい……僕が思い浮かべるあのはどこの誰かもわからないのに……

「どうしたの?」

 少し感傷的になっていた僕に笑いかけるミカエルのアイスブルーの瞳が、彼女のコバルトブルーの瞳と重なりハッとする。

「いや、なんでもない」

 返事をしながら、ミカエルをちらりと見た。

 ブルー系の瞳にブラウンの髪色……何となく彼女に似てる気がする。本当に何となく、だけど。

 僕は苦笑しながら、いやいや……と自分の考えを否定した。

 彼女の事を想うあまり、何てことない共通点だけでミカエルが彼女に似てるかも……なんて、僕もかなり重症だな。
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