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懸念 ―ケネン―
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しおりを挟む淡々と発言し、僕をじろり睨みつける薄紫色の瞳を真っ直ぐ睨み返す。
他の命令には従う。だが、死神の僕に許された、たった1つの恋。誰になんと言われようとも手放すものか。
「まぁまぁ。ザラもジェスターも落ち着け。とりあえず、だ。王子とクラリスの婚約破棄が先決だな」
「まぁ、そうだね」
人懐っこい笑顔で僕らの仲裁に入り、ザラと会話をし始めたエドワードをまじまじと見てしまう。
えっ? なんでこの2人がクラリスとアルベルトの婚約破棄に首を突っ込む? 最強の2人が婚約破棄の後押しをしてくれれば、心強いけど……
思考を巡らせるが、どうしても悪い予感がしてならない。いや、悪い予感しかしないと言っても過言ではないだろう。
エドワードは僕の考えを察したのかククッと可笑しそうに笑い、僕の予感の裏付けをする。
「ジェスター、ついでだ。お前、クラリス、諦めろ」
……全然、心強くないじゃないか……っていうか、なんのついでだよ!
眉根を寄せ、不愉快な気持ちを顔全体で思いっきり表した。冷静沈着がモットーのシトリン家としては、些かよろしくないのはわかっているが、どうにもクラリスの事だけは感情が表に出てしまう。
僕はブスッとエドワードに物申す。
「エドワード先生、以前は頑張れと応援してくれたじゃないですか」
「状況が変わったんだ。それはそうと早く行け」
僕の不満は軽くあしらわれ、わかったな! と念押しと共に、異論を唱える隙も与えられず、執務室から追い出されてしまった。
…………
…………
…………納得いかない。これ、本気で納得いかない!
なんだ、あの2人の変わりようは。
魔力制御装置を受け取りにきたクラリスとブライトン兄弟の間に何があったんだ?
疑問だらけの状況だが、1つだけ確実な事がある……今まで以上に厄介事が増えたという事だ。
暗澹たる思いが僕の心を埋め尽くし、特大の溜息が自然と漏れてしまう。
まぁ、まずは目の前の問題解決だ……と気持ちを切り替え、足早にクラリスとアルベルトの元に向かった。
その後、クラリスの膝枕でアルベルトが昼寝をしようとしている場面に出くわし、即座に引き離す。ギリギリ間に合ったものの、油断も隙もない。
邪魔され、意気消沈しているアルベルトを横目で見ながら、僕は思った。
やはりアルベルトはぶっ潰そう……と。
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