11 / 11
あとがきのような続き
しおりを挟む「それにしてもカイル。貴方はどうして髪の色を変えてエリーナの前に現れたの?」
カイル様に気持ちを伝え、抱擁を交わしていた私達…いえカイル様に王妃様が話しかける。
ビクリと体を強張らせるカイル様は、絶対に聞こえている筈なのに王妃様の質問に答えずギギッと、まるで可動部が壊れている機械のような音を出しながら後ろを振り向いた。
「な、何故それを…」
「何故?我々王族には常に影が控えているのよ。
いきなりウェルハート領に行きたいと駄々を捏ねた貴方の様子を不審に思い、影に事情を聞いたのよ。
そしたら貴方が魔法を使ったこともエリーナと接触したことも伝えられ、一緒にいたという執事にも話を聞いたら貴方が初恋をしたというじゃない。
その後にあの駄々、自暴自棄になったんだなと誰もが思って我儘を通したくなるってものよ」
「な、なぜそこまで詳しく…、いやそうじゃなくて!
今ここで言わなくてもいいではないですか!」
カイル様が顔を真っ赤に染め上げて王妃様に声を荒げると、陛下が「そうなのか?」と髭を触りながらつぶやいた。
「貴方は本当に恋愛事に疎いのね。
そもそも貴方がエリーナに一人ずつ会わせるというから、話がぐちゃぐちゃになってしまったのよ」
「な、何故だ?!一人ずつ会って知ったほうがいいだろう!?」
「機会は平等にしなければいけなかったといっているのよ。
エリーナがアルベルトを気に入ったから貴方はすぐに婚約を結んだんだろうけれど、それは友情で終わる可能性もあったわ。
現にエリーナとアルベルトが長年婚約関係でいたのに恋情を抱かなかったのがその証拠。
アルベルトに会わせた後、カイルにも会わせないといけなかったのよ」
「な、ならそう言ってくれれば…」
「私がいない時に行動に移していたんじゃない!」
そんな陛下と王妃様がやりとりを繰り広げている中、カイル様が赤い顔のまま「聞いてしまったよね?」と恥ずかしそうに呟いた。
その表情に私の胸は何かに打ち抜かれたかのような衝撃が走る。
(可愛い…!可愛い!!!)
「顔はアルベルト様とそっくりなのに、全然違う!なんて可愛いのかしら!」
「へ?」
「おい、口に出してるぞ。しかも俺に失礼だ」
私は思わず口を手で抑える。
これ以上変なことを口走らないように行動に移さないと、カイル様の可愛さの前ではうっかりが出てしまうかもしれないからだ。
「それで?何故貴方は髪の色を変えたの?」
「父上と話してたんじゃなかったんですか?!」
「それはそれよ」
あっけらかんとした態度で答える王妃様に、カイル様が赤い顔のまま口元を引きつらせる。
(器用ね)と思いながら、私も知りたいとカイル様にお願いすると、はぁと一呼吸ついてからカイル様が話してくれた。
「あの時は仕方がなかったんだ。
優秀な兄上がいたから」
「俺?」
自分の名前が出てくる事など思いもよらなかったのか、アルベルト様が首を傾げる。
「そうだよ。兄上は優秀で誰もが次の王は兄上だって言っていたんだ。
だから僕もエリーナに選ばれるのは兄上だって思っていた。
それに僕は兄上がエリーナに選ばれなかった場合に会うことが出来るって伝えられていたから、だから僕のままで会うことは出来ないと思った。
それで兄上に見えるように髪の色を変えたってわけだよ」
ふぅといくらか顔の熱が引いたのか、赤みが抑えられたカイル様はちらりと私を見る。
「でも、それならどうして瞳の色もかえなかったのですか?
アルベルト様の髪の色を真似たからと言って、瞳の色を変えなければ気付かれてしまうんじゃ…」
そういいながらも私はずっと気付かなかったわけだけど、それは脇に置いて質問する。
「それは……」
「それは?」
まるでオウム返しのようにカイル様の言葉を繰り返すと、カイル様は意を決した表情をつくり答える。
「……‥君の元にすぐに駆け付けたかったんだ」
「え?」
私は目を瞬かせた。
赤みが引いたはずのカイル様のお顔にまた朱が差し込む。
「君は花園に迷い込んだだろう?
あのまま一人にしては寂しくなって泣いてしまうんじゃないかって思ったし、第一君が花を求めた妖精みたいで早く捕まえに行かないと消えてしまうんじゃないかって思ったんだ」
「妖精って」
アルベルト様がカイル様の言葉に若干笑いを含んだ声で呟く。
私はというとそう言われたことに対し嬉しさと恥ずかしさで一気に熱が上がったようだ。
指先で頬を冷やしているとカイル様がアルベルト様に鋭い眼差しを向ける。
「兄上だって思ったんじゃないのか?」
「俺はそんなこと思わない」
カイル様が言及するとアルベルト様は腕を組み、それを否定する。
だが、ここでまさかの応援が入った。
「それと似たようなことは思っただろう?」
まさかの陛下だ。
王妃様から恋愛事情に関しては疎いと言われていたが、ここでまさかの陛下の乱入にアルベルト様がカッと目を見開いた。
「はぁ!?」
「だってお前赤い顔してそっぽむいたじゃないか。
あれはお前の照れ隠しだろ」
「違う!というかどうして俺の話になっているんだ!
カイルの話だろ!?」
「なんだ、照れているのか?」
「照れてなどいない!」
フーフーと、まるで借りてきた猫のように鼻息を荒くするアルベルト様に私は一言だけ伝える。
「あの……、ごめんなさい」
「何がだ!」
アルベルト様の気持ちが私に向かっていないと、今ならはっきり言える。
何故なら王妃様が言っていたように、私達の間にあったのは友情、もっと良く言えば友愛とも呼べる感情だけだったからだ。
だけど、今の陛下とアルベルト様のやり取りがあった今、私がアルベルト様にかける言葉は謝罪に限ると口にすると、やっぱりアルベルト様は声を荒げた。
「つまり纏めると、各々が勘違いしてしまった為に今の状況があるということね」
「私はこの人が全て悪いのだと思っていたわ」と陛下にジト目を向ける王妃様がそう話す。
私はカイル様とアルベルト様を間違えてしまったし、カイル様は私に選ばれるのはアルベルト様だと勘違いして変装した。
陛下もお父様も私が好きなのはアルベルト様だと思っていたようだし、王妃様もアルベルト様と私の仲を疑わなかった。
「いや、俺はなにも勘違いなどしてないぞ」
そうアルベルト様が言っていたけれど、王妃様がすかさず「脈あり的な態度を見せる貴方も悪い部分はあるわ」と告げる。
神託の件もあって王妃と決まった私に次期王となる旦那様を小さい頃に選ばせたようだけど、王妃様の今の発言でやはり自分の子供は可愛いのだなと感じた。
カイル様への公平な扱いを要求していたことも、友愛か恋情か区別が難しいかもしれないけれど、それでもいい関係を築いていた仲を引き裂きたくなかったという親心。
私はそんな親心のお陰で、再びチャンスを得られたことに気付くことが出来た。
(王妃様もお父様のように子供の事を考えたのね)
神託だけではなく、子供の気持ちを。
恋愛結婚という言葉に憧れるものは多くいるが、政略結婚がいまだに浸透している貴族社会では子の気持ちが反映されない結婚がザラにある。
私の立場が公爵家の娘だったということもあっただろうけれど、カイル様の気持ちに気付き、そして友情しか抱いていないアルベルト様の為に機会を設けてくれた王妃様の気持ちが嬉しかった。
「カイル様、これから忙しくなると思いますが、よろしくお願いしますね」
私がカイル様を選んだことで、王太子が変更となる。
つまりカイル様が次の王となるのだ。
今迄ウェルハート領にいたカイル様は社交の場に全く出てこなかった。
帝王学を学び始めてはいるが、地盤がしっかりと出来ていないのだ。
これからは王となるための教育と貴族達との交友で忙しくなるだろう。
それを婚約者としてしっかりと支えよう。
愛しい人の為に。
end
ここまでお読みいただきありがとうございました!
本当は男爵令嬢を悪魔にしないで、婚約者の男に近寄った男爵令嬢を公爵令嬢が殺してしまう。
「ああ、見られちゃった。なら消さないと」とか言って婚約者も殺しちゃった★そんな公爵令嬢の前に辺境伯の令息が現れる♪
的な感じで最初書いていたのですが血みどろな場面が書けずに軌道修正しまくりました。
でもアルベルトは選ばれなかったとしても取り乱すことはしてほしくなかったので「俺を選ぶな」とかっこよく言わせられたので、書けて良かったです!
楽しくお読みいただけたら幸いです。
読んでくださり、本当にありがとうございました。
是非他作品にも目を通していただけると嬉しいです!
234
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
旦那様に「君を愛する気はない」と言い放たれたので、「逃げるのですね?」と言い返したら甘い溺愛が始まりました。
海咲雪
恋愛
結婚式当日、私レシール・リディーアとその夫となるセルト・クルーシアは初めて顔を合わせた。
「君を愛する気はない」
そう旦那様に言い放たれても涙もこぼれなければ、悲しくもなかった。
だからハッキリと私は述べた。たった一文を。
「逃げるのですね?」
誰がどう見ても不敬だが、今は夫と二人きり。
「レシールと向き合って私に何の得がある?」
「可愛い妻がなびくかもしれませんわよ?」
「レシール・リディーア、覚悟していろ」
それは甘い溺愛生活の始まりの言葉。
[登場人物]
レシール・リディーア・・・リディーア公爵家長女。
×
セルト・クルーシア・・・クルーシア公爵家長男。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』
みこと。
恋愛
「あなたと子を作るつもりはない」
皇帝シュテファンに嫁いだエリザは、初夜に夫から宣言されて首をかしげる。
(これは"愛することのない"の亜種?)
前世を思い出したばかりの彼女は、ここが小説『冷酷皇帝の最愛妃』の中だと気づき、冷静に状況を分析していた。
エリザの役どころは、公爵家が皇帝に押し付けた花嫁で、彼の恋路の邪魔をするモブ皇妃。小説のシュテファンは、最終的には運命の恋人アンネと結ばれる。
それは確かに、子どもが出来たら困るだろう。
速やかな"円満離婚"を前提にシュテファンと契約を結んだエリザだったが、とあるキッカケで彼の子を身ごもることになってしまい──?
シュテファンとの契約違反におののき、思わず逃走したエリザに「やっと見つけた」と追いすがる夫。
どうやら彼はエリザ一筋だったらしく。あれ? あなたの恋人アンネはどうしたの?
※小説家になろう様でも掲載しています
※表紙イラスト:あさぎかな先生にコラージュアートをいただきました
※毎朝7時に更新していく予定です
愛されていないはずの婚約者に「貴方に愛されることなど望んでいませんわ」と申し上げたら溺愛されました
海咲雪
恋愛
「セレア、もう一度言う。私はセレアを愛している」
「どうやら、私の愛は伝わっていなかったらしい。これからは思う存分セレアを愛でることにしよう」
「他の男を愛することは婚約者の私が一切認めない。君が愛を注いでいいのも愛を注がれていいのも私だけだ」
貴方が愛しているのはあの男爵令嬢でしょう・・・?
何故、私を愛するふりをするのですか?
[登場人物]
セレア・シャルロット・・・伯爵令嬢。ノア・ヴィアーズの婚約者。ノアのことを建前ではなく本当に愛している。
×
ノア・ヴィアーズ・・・王族。セレア・シャルロットの婚約者。
リア・セルナード・・・男爵令嬢。ノア・ヴィアーズと恋仲であると噂が立っている。
アレン・シールベルト・・・伯爵家の一人息子。セレアとは幼い頃から仲が良い友達。実はセレアのことを・・・?
で、お前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか?
Debby
恋愛
ヴェルトが友人からの手紙を手に辺境伯令嬢であるレィディアンスの元を訪れたのは、その手紙に「詳細は彼女に聞け」と書いてあったからだ。
簡単にいうと、手紙の内容は「学園で問題を起こした平民──エボニーを妻として引き取ってくれ」というものだった。
一方その話を聞いてしまった伯爵令嬢のオリーブは動揺していた。
ヴェルトとは静かに愛を育んできた。そんな自分を差し置いて、言われるがまま平民を妻に迎えてしまうのだろうか。
そんなオリーブの気持ちを知るはずもないエボニーは、辺境伯邸で行儀見習いをすることになる。
オリーブは何とかしてヴェルトを取り戻そうと画策し、そのことを咎められてしまう。もう後は無い。
オリーブが最後の望みをかけてヴェルトに自分を選んで欲しいと懇願する中、レィディアンスが静かに口を開いた。
「で、そろそろお前が彼女に嫌がらせをしている理由を聞かせてもらおうか」
「はい?」
ヴェルトは自分が何を言われたのか全く理解が出来なかった。
*--*--*
覗いてくださりありがとうございます。(* ᴗ ᴗ)⁾⁾
★全31話7時19時更新で、全話予約投稿済みです。
★★「このお話だけ読んでいただいてもOKです!」という前提のもと↓↓↓
このお話は独立した一つのお話ですが、「で。」シリーズのサイドストーリーでもあり、第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」の「エボニーその後」でもあります(あるいは「最終話」のその後)。
第一弾「で、私がその方に嫌がらせをする理由をお聞かせいただいても?」
第二弾「で、あなたが私に嫌がらせをする理由を伺っても?」
第三弾「で、あなたが彼に嫌がらせをする理由をお話しいただいても?」
どれも女性向けHOTランキングに入り、特に第二弾はHOT一位になることが出来ました!(*´▽`人)アリガトウ
もしよかったら宜しくお願いしますね!
王太子は妃に二度逃げられる
たまこ
恋愛
デリンラード国の王太子アーネストは、幼い頃から非常に優秀で偉大な国王になることを期待されていた。
初恋を拗らせ、七年も相手に執着していたアーネストが漸く初恋に蹴りを付けたところで……。
恋愛方面にはポンコツな王太子とそんな彼をずっと支えていた公爵令嬢がすれ違っていくお話。
※『拗らせ王子と意地悪な婚約者』『先に求めたのは、』に出てくるアーネストのお話ですが、こちらだけでも楽しめるようになっております。
婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜
ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、
完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。
だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。
理由は簡単だった。
「君は役に立ちすぎた」から。
すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、
“静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。
そこで待っていたのは――
期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。
前に出なくていい。
誰かのために壊れなくていい。
何もしなくても、ここにいていい。
「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」
婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、
何者にもならなくていいヒロインの再生と、
放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。
これは、
“役に立たなくなった”令嬢が、
ようやく自分として生き始める物語。
何度時間を戻しても婚約破棄を言い渡す婚約者の愛を諦めて最後に時間を戻したら、何故か溺愛されました
海咲雪
恋愛
「ロイド様、今回も愛しては下さらないのですね」
「聖女」と呼ばれている私の妹リアーナ・フィオールの能力は、「モノの時間を戻せる」というもの。
姉の私ティアナ・フィオールには、何の能力もない・・・そう皆に思われている。
しかし、実際は違う。
私の能力は、「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」。
つまり、過去にのみタイムリープ出来るのだ。
その能力を振り絞って、最後に10年前に戻った。
今度は婚約者の愛を求めずに、自分自身の幸せを掴むために。
「ティアナ、何度も言うが私は君の妹には興味がない。私が興味があるのは、君だけだ」
「ティアナ、いつまでも愛しているよ」
「君は私の秘密など知らなくていい」
何故、急に私を愛するのですか?
【登場人物】
ティアナ・フィオール・・・フィオール公爵家の長女。リアーナの姉。「自身の記憶を保持したまま、世界の時間を戻せる」能力を持つが六回目のタイムリープで全ての力を使い切る。
ロイド・エルホルム・・・ヴィルナード国の第一王子。能力は「---------------」。
リアーナ・フィオール・・・フィオール公爵家の次女。ティアナの妹。「モノの時間を戻せる」能力を持つが力が弱く、数時間程しか戻せない。
ヴィーク・アルレイド・・・アルレイド公爵家の長男。ティアナに自身の能力を明かす。しかし、実の能力は・・・?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる