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オタクは恋のキューピットになる
しおりを挟む「アイ…?どうかし「…………わかりました!」……なにがですの?」
「エリーザたんの仇を私が討ちます!」
「いえ、あの…私の仇討ちといわれましても、私死んでいませんわよ?」
「見ててください!私の当たって砕けろ精神を!」
「砕けてはいけません!」
一緒にアイを止めて欲しかった私はベンガード様を振り返ると、彼はにこりと微笑んだ。
(あ、なんていい笑顔…)
ぽっと顔に熱がこもるが、私はすぐに頭を振り思考を止める。
「笑ってないで止めてください!」
「いや、ここは彼女に任せるべきだよ。エリーザたん」
「ですがアイが砕けるとかいってるんですよ!?放っておけません!」
「いや、彼女なら大丈夫。というより、アイツの見た目をしている彼女なら、取り巻きたちの耳に声が届くだろう。
だから彼女を掴んでいる手を放そう、エリーザ嬢」
アイシャ嬢をアイツ呼ばわりするベンガード様も相当彼女の事嫌っていたのね。
もしかして言い寄られたりしたのだろうか。
そう考えると、少しだけ胸がチクリと痛くなる。
「大丈夫です!ここが私が知っている世界なら私わかってますから!」
ニコッと笑うアイに私は観念して手を離した。
「無理はしないでくださいね」
なにをするのかはわからないけれども。
もしかしたら掛ける言葉が違うかもしれないが、それでも砕ける覚悟を決めたアイが心配だ。
だってアイ自信は何もしていないのに、私の為に_何をどう解決するつもりなのかわからないが_行動してくれようとしているのだ。
「殿下とその他の方たち」
アイが四人に歩み寄る。
殿下とその他お花畑脳たちが輝く笑顔でアイを見上げた。
「私は宮島 愛。あなたたちの愛するアイシャではありません」
「な!なにをいっているのだ!?あの女に洗脳でもされたのか!?」
「洗脳されているのはあなたたちです」
疑問符を頭に浮かばせる殿下たち。
ちなみに私もその一人だ。
ベンガード様は顎に手を当てているから、なにか思い当たることでもあるのだろう。
ごそごそと制服の胸元のボタンをとり、隙間からネックレスを取り出すアイ。
「なるほど…」
とベンガード様が呟いた。
「なにかわかったのですか?みたところなにやら魔法が組み込まれているように見えますが…」
王妃教育が終わっていない私は、魔法に関してはまだまだ勉強不足なところもあり、アイが取り出したペンダントを見てもわからなかった私はベンガード様に尋ねた。
「あれは魅了魔法が組み込まれています」
「え!?」
そう声を出す私は更にベンガード様に説明を求めようとしたが、アイが殿下たちに話し始めたため私はその内容を聞くことにした。
「……知ってますよね?これ」
「あ、ああ」
「これは持ち主に対して周囲の第一印象が飛躍的に上がる魅了魔法が組み込まれています。
勿論、普通に好意を抱くだけなので問題はありませんが、これを持ったまま継続的に同じ人物に接触する…この場合の接触はボディタッチですね。をするとただの好意が次第に愛情に変わります。
また対象人物にこのペンダントを触れさせると洗脳状態に陥らせることができます」
「は!?そんな馬鹿な!?俺たちはちゃんと彼女の事を!」
「これに触れましたよね?」
「うっ、確かに触れたが…」
「つまり貴方達はアイシャの魔法にひっかかったんですよ!!!!」
ガクリと崩れ落ちる四人は頭を垂れる形で四つん這い状態になっていて、それをアイ基いアイーシャが見下ろしていた。
今すぐにでも「ざまぁ」とでもいいそうなアイに私は少しだけひいた。
物理的にも。
「それなのに、騙されてた分際でエリーザたんに婚約破棄!?
あんたにはもったいないお方なのに、あんたから婚約破棄!?頭おかしいんじゃないの!?」
「アイ、聞いてもいいかしら?」
「はい!エリーザたん!」
「あなたそのネックレスに魅了魔法が組み込まれているといってたけれど、それじゃあどうして殿下たちだけが魔法にかかったの?」
私もそうだが、この学園の中にアイシャ嬢に対していい印象をもっている人があまりいないのだ。
「あくまでもこれは第一印象がよくなるだけの魔法なんです。その後関係を築けるのは本人次第。
なので、どうしようもないくらい性格が悪かったら人々は離れていきます。殿下たちがアイシャに好意的だったのは恐らくアイシャが愛想を振りまくっていたからだと思います」
確かに彼女は苦言を呈す人には顔をしかめて聞く耳も持たなかった。
それどころか周囲に”虐められた”のだと声を上げていたという。
そんな彼女の言動を見たものが一人二人と増えていき、彼女を愛したのが今の取り巻き四人だというわけだ。
「そういうことだったのね」
「はい!!!…それでエリーザたん…婚約は…」
「ええ。殿下から破棄を申し付けられた事実がある以上私は受け入れるつもりよ。
勿論早くお父様から陛下に伝えてもらえるように、今日中にお話するつもりだわ」
そう告げた私の言葉に、ぱああと表情が明るくなるアイ。
私はなんだか心が温かくなる。
「なんだか不思議ね。見た目は同じなのにアイはとてもかわいらしく見えるわ。
………もしかして”それ”使っているの?」
「あ、確かにそうかもですが…これは同性には友情が深まるくらいの効果しかなかったはずですよ…?」
恐る恐る見上げるアイの頭をよしよしと撫でる。
「冗談だから気にしないで。
アイとしての今までのあなたは非常に好感が持てるいい女性だったわ。
それより貴方はこれから先どうするつもりなの?元の世界に戻れる保証ないのでしょう?」
「ハッ!確かに!」
「では私の侍女にならない?貴方なら歓迎するわ」
「本当ですか?!嬉しいです!!!!
………あと、エリーザたんに聞きたいのですが…」
「なに?」
もじもじとする彼女に私は首を傾げる。
ちらちらと四つん這い状態で放心している取り巻きたちと、ベンガード様に目線を送っているところから、もしかしたら他の人がいる場では言いづらいことなのかと思った私は耳を彼女に近づけた。
『エリーザたん、ベンガード様が好きなんですよね?』
こそっと呟かれた言葉に、私は一気に顔を赤く染める。
『ベンガード様は私の世界でも評判いいので早く婚約申し込まないととられてしまいますよ』
私から離れてニコッと微笑むアイ。
聞こえてはいないだろうかとベンガード様を振り向くと、彼は彼でなにか考えているようだった。
そして後日、正式に殿下と婚約を解消できた私に、スパイでも潜り込ませていたのかと疑うほどに即座にベンガード様からの婚約の話が舞い込んできて
私はベンガード様と婚約したのであった。
■■■■■■■■■■■■■■■■
うっひゃー--!生エリーザたんかわいいいいい!
真面目な顔しているときはちょっとこわいかなっていう印象を受けるんだけど、ベンガード様(あまりにもカッコよくて私は様付けしている)の横に立つエリーザたんはもう本当にかわいいのよ!
顔を赤らませて、きつそうに見えてた顔も照れてて、もうギャップ萌えというやつよね!
ベンガード様もエリーザたん萌えーとか思ってるに違いないわ!
だって私がエリーザをエリーザたんって言ってたら、疑問に思わず真似していたくらいだもの!
しかもエリーザたんも気付いてないのかスルーしてたし!
まぁそんなところもポイント高いのよね!
オタクな私の耳は聞き逃さないわよー!とウキウキしたの!
ちなみにいうとベンガード様が人気あるというのは、1作品目で国外追放されてしまったエリーザたんを追いかけて、彼女と一緒に旅をしつつ、彼女を命を懸けて守っている姿がもうそれは素敵すぎてお似合いカップル…つまり王道カップルとして人気だったわけ。
2作目の始まりからしてもうこいつら好きあってんだろ!?って思ってたから、絶対今の時点で両片思いだと思ってたんだよね!
だからエリーザたんがベンガード様とちゃんとくっついてくれて私も安心!
あ、でも二人の旅の話が見れなくなってしまったのは悲しいけど、でもさ!推しが幸せになるのって嬉しいじゃない?だから、全然オッケー!
私?私はエリーザたんが拾ってくれて、エリーザたんの侍女として…まだ見習いだけど頑張っているわ。
それにしてもエリーザたんから渡された手鏡…これって返した方がいいのかな…あああ、返したくないい!!
あとでもらっていいか聞いてみよ!……エリーザたん渡したことも忘れてそうだけど…寧ろ言わない方がいい?
いや、でもそれでエリーザたんからの信用なくなったらやだなぁー……
ま、後で考えよっと!
ではでは!ハッピーエンドということで!
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