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83 決めたこと①
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イマラ断罪決行の少し前、体内から有害物質の排出を終えたセドリックはベッドに横になった状態でこう言った。
『イマラに示談による不起訴を提案する』
セドリックのあり得ない言葉にユージンは目を見開き驚愕する。
もちろんユージンだけではなく、側に控えていた執事や前公爵夫妻も同様だった。
『ありえません!どうしてですか!?』
ユージンが声を荒げる。
『その通りだ。あんな目にあっておいて庇い立てするとは…まさか情でも抱いているのではないな…?』
前公爵でありユージンの祖父が厳しい眼差しをセドリックに向けた。
執事は『何故…』と呟いていたが、セドリックに対して声を上げることはしない。
セドリックは力が込められた瞳を閉じると首を横に振った。
『父上、貴方はわかっている筈です』
セドリックは自らの父親であり、今は爵位を譲り領地で隠居生活を送っていたマグナス・デクロンに訴えた。
マグナスはセドリックの言わんとしている言葉をわかっているのか何も答えない。
そんな二人を訳の分からない表情で見比べ困惑しているユージンは再び問いかけた。
『わかりません!!僕にもわかるように説明をしてください!!』
ユージンの言葉に、態度に、セドリックは目を瞑り、息を止め少しの間を取った後ゆっくりと吐き出した。
心を落ち着かせるためかわからない。
自分が犠牲になって迄イマラを庇おうとしている父親の気持ちなんて、ユージンにはわかるわけもなかった。
そしてセドリックは口を開く。
『……お前とリア……デメトリアの事故は仕組まれたものだったのだ』
『…………は?』
ユージンはセドリックの言葉に口をポカンと開いた。
想定外の言葉だった為に思わずとった行動だ。
『…待ってください、母上は……、いや、それでもあの女を不起訴処分にする理由がわかりません!』
ユージンはツカツカとセドリックが寝ているベッドへと近寄ると手を着き、身を乗り出すようにセドリックに訴える。
今までのイマラの行動を考えてみれば罪は明らかなものを、わざわざ穏便に済ませようとするセドリックの考えがわからなかったのだ。
ユージンの実の母親であるデメトリアが命を落とすことになった事故が、マントゥール侯爵家が仕組んだことならば、マントゥール侯爵家にも罪を償わせればいい。
イマラを不起訴処分とする理由がユージンにはわからなかった。
『……マントゥール侯爵家の企てた証拠を掴むことが出来なかったのだ』
『え……』
ユージンはマグナスに肩を叩かれるとセドリックから距離を取った。
いつの間に移動したのか、セドリックが横になっているベッドに近い位置に移動されていたソファへと腰を下ろす。
そんなユージンをみたセドリックは執事に支えられながら上半身を起こし、ユージンと前公爵夫妻に顔を向けた。
『……私はリアが亡くなった後、正気を保てなかった。リアにも控えるようアドバイスされていた酒に手を出し……間違いを犯してしまった……、そう思っていた』
セドリックはそう話を切り出した後語った。
デメトリアが亡くなり、荒れたこと。
やっと落ち着きを取り戻したと思えば、妊娠したと訴えるイマラのこと。
息子のユージンを支えなければならないのに、それなのに騒がしい周りの声の所為で、再びセドリックの心がかき乱されたこと。
再婚し騒がしかった声は大人しくなったが、男爵家で経済面でも厳しいイマラの実家メトキシス男爵の令嬢だった筈のイマラが暗殺者に依頼し、ユージンに危害を加えようとしたことがきっかけでセドリックは何か可笑しいと感じ始めた。
いくらなんでも顔も広くない男爵家の、しかも他家に働きに出ている令嬢が暗殺者に依頼するという思考になるのだろうか、と。
そう考えたセドリックはイマラの行動すべてが怪しく思えた。
そしてイマラが産んだ子、ナルシスと自分は血が繋がっていないのではないかと考えた。
『……つまり父上はナルが自分の血縁者ではないことを知っていた、ということですか…?』
ユージンはセドリックに尋ねながら執事の顔を見た。
執事はユージンの視線に気付くと、ブンブンと首を左右に振る。
“私はその事実を知らなかった”と言っているかのようだった。
『その通りだ。ナルシスと血の繋がりはないと知っていた』
『…執事は知らなかったようですが……』
『セバスは顔に出やすいからな。当然話していない』
セドリックの言葉に執事は愕然とし、わかりやすく肩を落とす。
「まぁまぁ、わかりやすいからこそ貴方が嘘をつけないとセドリックは知っているから信頼しているのよ」と前公爵夫人であるルーティがセバスに慰めの言葉をかける。
『私はイマラをもっと調べることにした。私と再婚する前の行動を詳しく調べたのだ。そして、マントゥール侯爵家次男であるジョニー・マントゥールにいきついた』
ユージンが自らも調べた内容はここまでだとわかると、ここからセドリックが何を話すのか、セドリックの言葉に覚悟するかのように唾を飲み込んだ。
ユージンが行きつくことが出来なかった真実を、今セドリックが語ってくれる。
ユージンは緊張していた。
母親の死が仕組まれていたことだと、これからセドリックは話すのだから緊張して当然だった。
イマラ断罪決行の少し前、体内から有害物質の排出を終えたセドリックはベッドに横になった状態でこう言った。
『イマラに示談による不起訴を提案する』
セドリックのあり得ない言葉にユージンは目を見開き驚愕する。
もちろんユージンだけではなく、側に控えていた執事や前公爵夫妻も同様だった。
『ありえません!どうしてですか!?』
ユージンが声を荒げる。
『その通りだ。あんな目にあっておいて庇い立てするとは…まさか情でも抱いているのではないな…?』
前公爵でありユージンの祖父が厳しい眼差しをセドリックに向けた。
執事は『何故…』と呟いていたが、セドリックに対して声を上げることはしない。
セドリックは力が込められた瞳を閉じると首を横に振った。
『父上、貴方はわかっている筈です』
セドリックは自らの父親であり、今は爵位を譲り領地で隠居生活を送っていたマグナス・デクロンに訴えた。
マグナスはセドリックの言わんとしている言葉をわかっているのか何も答えない。
そんな二人を訳の分からない表情で見比べ困惑しているユージンは再び問いかけた。
『わかりません!!僕にもわかるように説明をしてください!!』
ユージンの言葉に、態度に、セドリックは目を瞑り、息を止め少しの間を取った後ゆっくりと吐き出した。
心を落ち着かせるためかわからない。
自分が犠牲になって迄イマラを庇おうとしている父親の気持ちなんて、ユージンにはわかるわけもなかった。
そしてセドリックは口を開く。
『……お前とリア……デメトリアの事故は仕組まれたものだったのだ』
『…………は?』
ユージンはセドリックの言葉に口をポカンと開いた。
想定外の言葉だった為に思わずとった行動だ。
『…待ってください、母上は……、いや、それでもあの女を不起訴処分にする理由がわかりません!』
ユージンはツカツカとセドリックが寝ているベッドへと近寄ると手を着き、身を乗り出すようにセドリックに訴える。
今までのイマラの行動を考えてみれば罪は明らかなものを、わざわざ穏便に済ませようとするセドリックの考えがわからなかったのだ。
ユージンの実の母親であるデメトリアが命を落とすことになった事故が、マントゥール侯爵家が仕組んだことならば、マントゥール侯爵家にも罪を償わせればいい。
イマラを不起訴処分とする理由がユージンにはわからなかった。
『……マントゥール侯爵家の企てた証拠を掴むことが出来なかったのだ』
『え……』
ユージンはマグナスに肩を叩かれるとセドリックから距離を取った。
いつの間に移動したのか、セドリックが横になっているベッドに近い位置に移動されていたソファへと腰を下ろす。
そんなユージンをみたセドリックは執事に支えられながら上半身を起こし、ユージンと前公爵夫妻に顔を向けた。
『……私はリアが亡くなった後、正気を保てなかった。リアにも控えるようアドバイスされていた酒に手を出し……間違いを犯してしまった……、そう思っていた』
セドリックはそう話を切り出した後語った。
デメトリアが亡くなり、荒れたこと。
やっと落ち着きを取り戻したと思えば、妊娠したと訴えるイマラのこと。
息子のユージンを支えなければならないのに、それなのに騒がしい周りの声の所為で、再びセドリックの心がかき乱されたこと。
再婚し騒がしかった声は大人しくなったが、男爵家で経済面でも厳しいイマラの実家メトキシス男爵の令嬢だった筈のイマラが暗殺者に依頼し、ユージンに危害を加えようとしたことがきっかけでセドリックは何か可笑しいと感じ始めた。
いくらなんでも顔も広くない男爵家の、しかも他家に働きに出ている令嬢が暗殺者に依頼するという思考になるのだろうか、と。
そう考えたセドリックはイマラの行動すべてが怪しく思えた。
そしてイマラが産んだ子、ナルシスと自分は血が繋がっていないのではないかと考えた。
『……つまり父上はナルが自分の血縁者ではないことを知っていた、ということですか…?』
ユージンはセドリックに尋ねながら執事の顔を見た。
執事はユージンの視線に気付くと、ブンブンと首を左右に振る。
“私はその事実を知らなかった”と言っているかのようだった。
『その通りだ。ナルシスと血の繋がりはないと知っていた』
『…執事は知らなかったようですが……』
『セバスは顔に出やすいからな。当然話していない』
セドリックの言葉に執事は愕然とし、わかりやすく肩を落とす。
「まぁまぁ、わかりやすいからこそ貴方が嘘をつけないとセドリックは知っているから信頼しているのよ」と前公爵夫人であるルーティがセバスに慰めの言葉をかける。
『私はイマラをもっと調べることにした。私と再婚する前の行動を詳しく調べたのだ。そして、マントゥール侯爵家次男であるジョニー・マントゥールにいきついた』
ユージンが自らも調べた内容はここまでだとわかると、ここからセドリックが何を話すのか、セドリックの言葉に覚悟するかのように唾を飲み込んだ。
ユージンが行きつくことが出来なかった真実を、今セドリックが語ってくれる。
ユージンは緊張していた。
母親の死が仕組まれていたことだと、これからセドリックは話すのだから緊張して当然だった。
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