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第2章 成長

精算

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森を出て、しばらく町に向かって歩いていると運良く後ろから馬車が来て乗せてもらえた。ガルドが居たことで多少騒がれたがガルドに膝をついてもらって使役してることを証明したらなんとか納得してくれた。

「これは、移動手段をなんとかしないとな。」

馬車の荷台で俺がぼやいたことが気になったのかガルドは俺に手を重ねてきた。

「(妻よ、何かあったか?心配事か?)」
「(大丈夫だよ、ありがとう。ただ、これからの活動での移動手段を考えてたんだ。)」
「(先ほどの騒ぎの事か、迷惑を掛けてすまないな。)」
「(ガルドが気にする事じゃないよ。)」

俺はガルドに微笑み掛けて、街までの道中、馬を買うか馬車を買うかなど色々考えを巡らせた。




街に入るときも少し問題になったがこちらも馬車の時と同じようにしてなんとか通してもらった。

俺達はそのまま急ぎ足でギルドに入ると、まっすぐカウンターに向かった。

「ひっ!オーク!」

受付嬢さんは俺の後ろに立つガルドに顔を青ざめる。

「すいません。こいつは新しく従魔にしてきたんです。従魔登録をお願いします。」
「か、かしこまりました。ギルドカードをお願いします。」
「これです。」

俺は異空間収納からギルドカードを取り出して渡した。

「お預かりします。……念のため使役出来ている事を確認させてもらってもいいですか。」
「えぇ、膝をつかせればいいですか?」
「指示を出して、それに従ってることを確認できれば。」
「わかりました。」

俺はガルドの腕に触れると念話と声に出して膝をつくように指示した。
ガルドは素直にそれにしても従ってくれる。

「はい、確認できました。ありがとうございます。」
「(何度も悪いな。)」
「(気にすることはない。)」

 俺は従魔登録を終えて、ギルドカードを見ると従魔の欄にオークと追加させていた。それを確認すると次に買取カウンターに向かう。

「ここで解体だけって言うのはやってますか?」
「あぁ、にぃちゃんか。買取の時より手数料が割高になるがやってるぞ。」

カウンターではいつものおっちゃんがナイフを研いでいた。

「それじゃあ、ちょっと量があるんですけどお願いできますか?」
「どのくらいだ?」
「オークが6、ブラックウルフが2、ゴブリンとコボルトが3ずつですね。オークは肉の納品依頼を受けてるので戻してもらえますか?」
「ずいぶん狩ってきたな。ちょっと時間かかるぞ。」
「じゃあオーク3体分だけ先にもらえますか?それ以外は明日とかでもいいので。」
「わかった。じゃあいつも通り倉庫に出してくれ。」

俺は倉庫でオーク3体を出すと木札を受け取って待合室に出た。

待合室では俺が椅子に座り、ガルドは俺の側で立っていた。座っていいと言ったけど、どうも従魔としてテイマーの俺を立ててくれているみたいだ。

解体は1時間程で終わった。

「おい、にぃちゃん。解体終わったぞ。」

買取カウンターでおっちゃんが手招きしている。俺はガルドの手を引いて、カウンターに行くことを伝える。

カウンターに着くと裏の倉庫に連れていかれた。

「じゃあ、これがオーク3体分の肉だ。」
「ありがとうございます。」
「オークからは他に魔石と睾丸が取れるがこっちは買取でいいんだな?」 
「はい、お願いします。」
「おぅ、じゃあ1体辺り、解体手数料を引いて魔石と睾丸で銀貨1枚、それが3体分で銀貨3枚だ。」
「……結構高値で買い取ってくれるんですね。」

銀貨3枚だと今回の依頼報酬とほぼ同額なる。

「オーククラスになると魔石の燃料としての価値が上がるからな。睾丸は質の良い媚薬ができるんだが1体から取れる量は少ないからな。じゃあこれが精算書だ総合カウンターに持っていきな。」
「ありがとうございます。じゃあ、残りも出して行っていいですか?」
「あぁ、ここに出していってくれ。明日の朝までには終わらせておくからな。」
「ありがとうございます。じゃあ、このオークも肉は戻してもらえますか?」
「わかった。分けておこう。」
「お願いします。」


俺は残りの魔物を出すと精算書と肉を受け取って総合カウンターで依頼の完了報告と精査を済ませた

「お待たせいたしました。オーク討伐が6体で銀貨3枚、オーク肉の納品で銀貨1枚、買取の精算で銀貨3枚、合計で銀貨7枚です。」
「ありがとうございます。」

受付嬢さんが銀貨5枚と2枚に分けて重ね、カウンターに出してくれた。俺はそれを魔法で収納した。

「タカシ様はすごいですね。まだEランクになったばかりなのにDランクの依頼をこなして、買取も込みで1日で銀貨7枚も稼ぐんですから。」
「いや、従魔に恵まれてるだけですよ。」

俺はチラリと後ろに立つガルドと腕のバラムを見る

「テイマーならそう言える従魔を従えてることが実力の証明ですよ。もっと胸を張って良いと思いますよ。」
「ありがとうございます。そうだ、ギルドの資料室に魔法の基礎と空間魔法の資料はありませんか?」

俺は移動手段の一つとして、転生時に考えていた空間魔法による部屋を作る方法だ。これなら俺一人で馬車に乗ればいいから今朝と同じように乗せてくれる人はすぐ見つかるだろう。

「確かあったと思います。具体的な魔法関連の資料は低レベル向けならちょうどEランクから閲覧できますよ。」
「そうですか。」
「ありがとうございます。明日にでも見てみます。あと、従魔を連れて泊まれる所はありませんか?」
「従魔連れでですか?少々おまちください。」

受付嬢さんは一度奥に下がるとファイルを持って戻ってきた。

「従魔を厩舎に入れて泊まるならいくつかありますけど。……タカシ様の様子からすると部屋に連れて上がれる宿を探してるんですよね?」
「できれば、ですが。」
「ラビット系の魔物ならペットとして連れている方もいるのであるにはあるのですが……オークとなるとどうなるか、直接行ってみないと。あとは料金も割高になりますし。」

ファイルをペラペラとめくり、1ページを開いて見せてくれる。

「街の北部にある宿ですが、料金が部屋ごとに違っていているのですが最低でも銀貨1枚です。実際の値段は宿で直接確認してみてください。」
 
俺はその宿の詳しい位置を聞いてギルドを出た。
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