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5. 久しぶりのダンジョン探索

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そして、遂にやって来た土曜日の朝。俺は日が昇る前には自然と目が覚めてベッドから抜け出していた。

手早く身支度を済ませ、車に荷物を詰め込む。忘れ物がないこと確認すると予定よりも2時間も早く家を出た。

車を走らせて隣の市にあるダンジョンに着くと駐車場の空きは少なく、すでにそれなりの人が集まっていた。

「予定より早く家を出て正解だったかもな。」

予定道理に家を出ていたら駐車場は満車で車が止められなかったもしれない。

俺は空いてるスペースに車を止めると荷物を持ってダンジョン館に向かう。

ロッカールームでジャージに着替え、このあいだ買った装備を身に付ける。武器の斧は刃の部分だけ覆うカバーだけ着けてケースはロッカーに仕舞えば準備完了だ。

入場待ちの列に俺も並ぶ。ダンジョンの入場管理もJDOが駅の改札を厳重にしたようなゲートを設置して管理していて入場時にライセンスを読み取ってライセンスを持たない人間がダンジョンに入らないようにしている。

20分程で俺の番がきたのでライセンスを読み込ませる。ライセンスはダンジョン内で落とすと大変なため衣服に繋ぐケーブル付きのケースにSカードと一緒に入れてある。読み込みが完了してゲートをくぐるとすぐ目の前はダンジョンに降りる階段だ。

俺はライセンスをポケットにしまい、斧のカバーを外してダンジョンに踏み込んだ。



階段を下ると大人が3人並んで余裕で歩けるくらいの道幅の通路がまっすぐ伸びている。ダンジョンの壁はぼんやりと光り、ライトなんかは必要ない。俺は前方を注意しながら最初の分かれ道まで進む。
調べておいた情報によるとこのダンジョンの1層に出るのは角ウサギと呼ばれる額から角が1本生えた大型ウサギらしい。角ウサギは突進で角を突き出してくる単調で直線的な攻撃しかしない。そのうえ、突進の最後の跳躍の時には分かり易く足に力を溜める動作があるらしい。

十字路に着くと俺は左に曲がる。右に曲がると下り階段への最短ルートだから、右かまっすぐなら人も少ないだろう。

「いたな。」

しばらく行くとようやく角ウサギを見付けてた。あちらもこっちに気がついていて既に臨戦態勢だ。

俺は斧を構えると角ウサギをしっかりと見据えて一撃目をかわすことに専念する。角ウサギがこちら向かって走ってくるので最後に跳躍して飛び掛かって来るのを待ち構えていると……。

「来た!」

 角ウサギが脚に力を溜める動作を見逃さずに跳躍の瞬間、横にずれてそれをかわした。すかさず振り返り、角ウサギに駆け寄ると斧を振りかぶって首を狙い振り下ろした。

初めてモンスターを倒した時は中々来るものがあったが一度乗り越えてしまえばブランクがあってもショックはほとんどない。

「よし。」

首を落とされた角ウサギが光の粒子になって消えるとそこには紫色の丸い結晶だけが残されている。

「なんだ、コアか。」

角ウサギからのドロップで確認されてるのはコア、毛皮、角、兎肉だ。

コアと呼ばれているのはどのモンスターからでもドロップすることが確認されているピンポン玉サイズの丸い濃く深い紫色の結晶だ。

このコアは小説や漫画でモンスターの体内にある魔石のようなエネルギーの塊じゃないかと言われているが、いまだ活用方法が確立していないためほとんどドロップ品の中でも1位2位を争う安さで買い取られる。

「まぁ、いきなりドロップがあったんだ。幸先の良いスタートだろ。」

俺はそのまま3時間程探索を続け、15匹目を倒した所で休憩にして携帯食を噛る。今のところドロップ品はコアが4、兎肉が2、毛皮が3、角が4と8割くらいの確率でドロップしている。

「昔潜った時は10匹倒して1つドロップすればいい方だったのにな。」

しかし、これではまだまだ生活できない。コアは最安値だし、他の物も浅い階層でドロップしたものはたいした値段がつかない。

「それでもこれだけドロップ率がいいなら5層まで降りれば数を稼いでやっていけるか?その為にもまずは俺自身と装備の強化だな。」

食べ終わったゴミをリュックにしまい、探索を再開した。

1層で角ウサギを狩り続けて、そろそろ切り上げるかというときにこれまでと違い、1枚のカードがドロップした。

「スキルカード!」

スキルカードはドロップ率が極めて低いため、どのモンスターから何のカードがドロップするか確かな情報はないが今まで出ている情報に一貫性がないため低確率でどのモンスターからでもドロップするのでは?と言われている。

「まさか、1階層の角ウサギからドロップするとは。」

角ウサギが消えた後に残ったカード拾うと内容を確認した。

《脚力強化》
タイプ:パッシブ
効果:脚力を強化する


「純粋な強化スキルか。探索者でやっていくならあると便利だよな。けど、売ればそれなりの金になるし……。」

俺は悩んだ末自分で使うことに決めた。あらかじめ調べておいた通り、カードを持ったまま使用と念じるとカードは光の粒子になって体に吸い込まれていく。

効果を確認するため全力で前に跳んだり走ったりしてみるが大きな変化があったようには感じない。
 
「特に変わった気はしないけど……。Sカードの表示は。」


No.000AE24CC51
Name.重森 大地
Age.25
Skill.《脚力強化 Lv1(0/10)》

「確かに追加されてけど、これはLv1だからたいした効果が無いってことか? それじゃあ0/10は経験値とか熟練度的なものか。この数値が上がる条件は検証しないとわからないか。」

俺は試しにダンジョンの入り口まで走って戻ることにした。


ダンジョンの外に出ると16時を過ぎていた。俺はロッカールームで着替えるとドロップ品を持って買取受付に向かった。

講習で聞いていた通り、ダンジョンから持ち出した物は全てここで一度調べられる。ポーションや特殊な効果が付与されたアイテムはここで調べて貰うまでは効果がわからないからだ。調べた結果、毒物など危険な物は没収されるが問題なければ買い取ってもらうか持ち帰るか選べる。

調べるには鑑定効果を持つ道具と鑑定のスキルを持つ職員が調べてるらしい。ちなみにこの鑑定スキルとアイテムで人を鑑定すると強化具合がLvやステータス値でわかるそうだ。それを利用したステータスチェックサービスもあるがBonusがある俺は鑑定に表示されるかもしれないから受けるわけにはいかない。

まだ少し早い時間のためか順番待ちの番号札を取って少し待つと直ぐに呼ばれた。

「お待たせいたしました。ライセンスの照会をしますのでこちらライセンスでこちらにタッチをお願いします。」

指示通りに目の前のリーダーにライセンスを乗せるとピピッという電子音が鳴る。

「重森様ですね。ではドロップアイテムをお預かりします」」
「これをお願いします。」

カウンターにドロップアイテムを入れた袋を乗せる。今回の戦利品は最終的に45匹倒してコアが13、毛皮が8、角が10、兎肉が5つだ。

「ずいぶん多いですね。……コアが13個、毛皮が8個、角が10本、肉のブロックが5つですね。こちらの札の番号でお呼びしますのであちらに座ってお待ち下さい。」

後ろのベンチに座ると鑑定待ちのあいだにSカードを確認する

No.000AE24CC51
Name.重森 大地
Age.25
Skill.《脚力強化 Lv1(1/10)》

「熟練度が少し上がってるな。脚を使ってると上がるのか?脚に掛かる負荷で熟練度の上がり方が変わるかもな。」

帰ったら走り込みでもしてみるか。そんな事を考えながら待っていると30分程待ってようやく呼ばれたのでカウンターに向かう。

「お待たせ致しました。こちらが買取の場合の査定結果になります。買取と持ち帰りどちらにいたしますか?」

コア                       13  ×   50         =   650 円
角ウサギの毛皮     8  × 150         = 1200 円
角ウサギの角       10  × 100         = 1000 円
兎肉    5つ 計1750g × 100/100g = 1750 円
                                         合計    4600 円

「買取でお願いします。」
「かしこまりました。ライセンス登録された銀行口座に振り込みでよろしいですか?」
「はい、それでお願いします。」
「かしこまりました。ではこちらが買取の明細になります。」
「ありがとうございます」
「本日は探索お疲れ様でした。お気をつけてお帰り下さい。」

俺は改めて発行された明細を受け取って久しぶりのダンジョン探索は終了した。
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