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幼なじみを探して
3話
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「お兄ちゃん!大変なの!!」
家に入ってからすぐ右にある階段をバタバタと駆け上がり、お兄ちゃんの部屋のドアを開ける。
扉を開けた先には、こちらを向いていつも通りの笑顔を浮かべてるお兄ちゃんがPCの前に座っていた。お兄ちゃんにレイのことを伝えるために近づくと、ふと違和感に気づく。
___なにかお兄ちゃんの笑顔が違う、のかな……?
少し不信感を抱き、そっとお兄ちゃんに近づいた。
「おかえり、シズク。隣においで?」
「……うん!ただいま!」
いつも通りの笑顔。
やっぱりただの勘違いなのかもしれない。お兄ちゃんの笑顔はいつも通りだし、声のトーンも同じだ。
レイのことがあったから、動揺しているのかも………
違和感について考えていると、お兄ちゃんがなかなか隣に来ない私を見て、少し考える仕草をしたあとに私の手首を掴んで自分の方へと引き寄せた。
「きゃっ!」
「おっと…ごめんね、シズク。ちょっと強引すぎたかな?」
そう言いながら、うっすらと微笑むお兄ちゃん。その笑顔は、お兄ちゃんが美形といわれる所以を明らかにしていた。
妹の私でも、顔が火照ってしまうくらいに……かっこいい。
「……ふふ、どうしたのシズク。顔が赤いよ?」
「っ!そ、そんなことない!」
「動揺しちゃって……俺に見惚れてたのかな?」
「……っ!!」
痛い所をつかれて、もっと頬に熱が集まる。おそらく、今の私の顔は真っ赤だろう。
何も言い返せない私の様子を見て、お兄ちゃんが意地悪な笑みを浮かべた。
私はいたたまれなくなって、慌てて前を向く。___その時。
「……っ!」
____チクリと。
ほんの少しだけ首筋に走った痛み。
しかしそれは、一瞬のことで、なにかあったのか確認するために後ろを向いても、満足そうな笑みを浮かべているお兄ちゃんの姿があっただけ。
___さっきの痛みは、気のせいなのかな……
私は特に気にすることも無いだろうと思い、再び前を向くと、お兄ちゃんのPC画面を覗いた。
_____お兄ちゃんが、歪んだ笑顔を浮かべていることにも気付かずに。
***
___異世界RPG、『インウィディア』。
ラテン語では、嫉妬という意味があるらしい。
このゲームは7つのシリーズに分かれていて、傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲___…嫉妬、すなわちインウィディアは、このうちのひとつであり、一番人気の高いゲームでもある。
お兄ちゃんとレイはこのゲームをよく一緒にしていたらしい。
私も自他ともに認める中々のゲーマーではあるけど、このゲームはしたことが無い。お兄ちゃんとレイはこのゲームの中でとても有名なプレイヤーらしい。
ゲームのスタート場面をいじっていたお兄ちゃんが、私に声をかけた。
「__シズク、アカウントを作成しよう。俺のサブキャラとしてだけどね」
お兄ちゃんはそう言うと、PCの画面を私に向けた。
「うん、わかった!ちょっと待っててね」
カチャカチャとキーボードを打つ音が部屋の中にこだまする。
キャラクターが完成した瞬間に、画面全体にメッセージのアイコンが点滅した。
「……?お兄ちゃん、なんか送られてきた」
「……ん、なんだ?えーと…」
お兄ちゃんがメッセージを開いた瞬間、目を見開いた。どうしたのか気になって画面を覗き込むと、そこには
____『SOS』
その一文だけだった。
差出人を見てみると…
「__レイン?だれそれ」
お兄ちゃんに聞いてみると、お兄ちゃんはポツリと呟いた。
「____レイ」
「え?」
「レインって言うのは、レイがこのゲームで使っていたキャラクター名だよ」
「嘘!?じゃあ、レイからメッセージが来たってことは、どこかに居るんだよね?ためしにこっちからもメッセージを送ってみよ___っ!?」
メッセージを送ろうとした時、視界全体が白に染まった。
「___ま、ぶし!!」
目を瞑った瞬間、体を襲ったのは気持ち悪くなるくらい酷い浮遊感。
「___お兄ちゃ……!!」
___そこで、意識がプツリと切れた。
家に入ってからすぐ右にある階段をバタバタと駆け上がり、お兄ちゃんの部屋のドアを開ける。
扉を開けた先には、こちらを向いていつも通りの笑顔を浮かべてるお兄ちゃんがPCの前に座っていた。お兄ちゃんにレイのことを伝えるために近づくと、ふと違和感に気づく。
___なにかお兄ちゃんの笑顔が違う、のかな……?
少し不信感を抱き、そっとお兄ちゃんに近づいた。
「おかえり、シズク。隣においで?」
「……うん!ただいま!」
いつも通りの笑顔。
やっぱりただの勘違いなのかもしれない。お兄ちゃんの笑顔はいつも通りだし、声のトーンも同じだ。
レイのことがあったから、動揺しているのかも………
違和感について考えていると、お兄ちゃんがなかなか隣に来ない私を見て、少し考える仕草をしたあとに私の手首を掴んで自分の方へと引き寄せた。
「きゃっ!」
「おっと…ごめんね、シズク。ちょっと強引すぎたかな?」
そう言いながら、うっすらと微笑むお兄ちゃん。その笑顔は、お兄ちゃんが美形といわれる所以を明らかにしていた。
妹の私でも、顔が火照ってしまうくらいに……かっこいい。
「……ふふ、どうしたのシズク。顔が赤いよ?」
「っ!そ、そんなことない!」
「動揺しちゃって……俺に見惚れてたのかな?」
「……っ!!」
痛い所をつかれて、もっと頬に熱が集まる。おそらく、今の私の顔は真っ赤だろう。
何も言い返せない私の様子を見て、お兄ちゃんが意地悪な笑みを浮かべた。
私はいたたまれなくなって、慌てて前を向く。___その時。
「……っ!」
____チクリと。
ほんの少しだけ首筋に走った痛み。
しかしそれは、一瞬のことで、なにかあったのか確認するために後ろを向いても、満足そうな笑みを浮かべているお兄ちゃんの姿があっただけ。
___さっきの痛みは、気のせいなのかな……
私は特に気にすることも無いだろうと思い、再び前を向くと、お兄ちゃんのPC画面を覗いた。
_____お兄ちゃんが、歪んだ笑顔を浮かべていることにも気付かずに。
***
___異世界RPG、『インウィディア』。
ラテン語では、嫉妬という意味があるらしい。
このゲームは7つのシリーズに分かれていて、傲慢、憤怒、嫉妬、怠惰、強欲、暴食、色欲___…嫉妬、すなわちインウィディアは、このうちのひとつであり、一番人気の高いゲームでもある。
お兄ちゃんとレイはこのゲームをよく一緒にしていたらしい。
私も自他ともに認める中々のゲーマーではあるけど、このゲームはしたことが無い。お兄ちゃんとレイはこのゲームの中でとても有名なプレイヤーらしい。
ゲームのスタート場面をいじっていたお兄ちゃんが、私に声をかけた。
「__シズク、アカウントを作成しよう。俺のサブキャラとしてだけどね」
お兄ちゃんはそう言うと、PCの画面を私に向けた。
「うん、わかった!ちょっと待っててね」
カチャカチャとキーボードを打つ音が部屋の中にこだまする。
キャラクターが完成した瞬間に、画面全体にメッセージのアイコンが点滅した。
「……?お兄ちゃん、なんか送られてきた」
「……ん、なんだ?えーと…」
お兄ちゃんがメッセージを開いた瞬間、目を見開いた。どうしたのか気になって画面を覗き込むと、そこには
____『SOS』
その一文だけだった。
差出人を見てみると…
「__レイン?だれそれ」
お兄ちゃんに聞いてみると、お兄ちゃんはポツリと呟いた。
「____レイ」
「え?」
「レインって言うのは、レイがこのゲームで使っていたキャラクター名だよ」
「嘘!?じゃあ、レイからメッセージが来たってことは、どこかに居るんだよね?ためしにこっちからもメッセージを送ってみよ___っ!?」
メッセージを送ろうとした時、視界全体が白に染まった。
「___ま、ぶし!!」
目を瞑った瞬間、体を襲ったのは気持ち悪くなるくらい酷い浮遊感。
「___お兄ちゃ……!!」
___そこで、意識がプツリと切れた。
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