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第十三話:それぞれの事情
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次の日、華やかな女性神職正装を身に着けて朝からご機嫌な竜胆を連れ、玖藻神社の祭である玖藻斎院御禊へと出発した。
いつもと違い、頭に金色の飾りをつけているせいか、なんだか首が凝る。
日奈子長公主の代理で斎宮を務める巫女、維緋の装束も間に合ったようだ。
「維緋さん、とてもお綺麗ですよ」
社殿の奥。斎宮のために用意された部屋に通されると、そこには美しい唐衣を身に着けた維緋が立っていた。
「翼禮様、わたくしをこの大役に選んでくださり、本当にありがとうございます」
「いえいえ。維緋さんの日々の努力の賜物ですよ」
「うっ……」
感極まった維緋は声を押し殺して泣き始めてしまった。
「ほら、せっかくのお化粧がとれてしまいますよ」
「うっ、は、はい……」
維緋は深呼吸を繰り返すと、そっと目元を拭い、わたしをまっすぐと見つめた。
「『次こそは聖女が生まれてくるだろう』と一族に予言されていたにもかかわらず、わたくしはそう生まれてくることは叶いませんでした。それでも、両親はおしみない愛情を注いで育ててくれました。しかし、一族の者たちの口は閉じることが無く、両親に嫌味を言い続けております。『聖女が生まれなかったのは母親が人間だからだ』と。それが辛くて……。きっとわたくしが前世で聖女にそぐわぬ罪を犯してしまったのです。そのせいで……」
「前世のことなど誰にもわかりません。そんなもの、一部の強い霊感を持った人間たちの間で流行っている占いに過ぎません。だから、気に病むことなどないのですよ」
「翼禮様や仙子族の皆様はそう言ってくださいますが、魔女族は……。だから、今回、〈聖女〉と同様に素晴らしいお役目である〈斎宮〉になれたこと、心から嬉しいのです。やっと、やっと親孝行ができます」
ホッとしたような、柔らかな笑顔。
こんなにも華奢な体に課せられてきた重責は、さぞ辛かったことだろう。
「あなたが笑って生きていることが一番の親孝行だと思いますよ」
「翼禮様……。ありがとうございます。翼禮様の方がわたくしよりも二つほどお若いのに、なんだか母親のようなことを言ってくださるのですね」
「母がよくそう言ってくれるので。受け売りです」
「うふふ。翼禮様がお優しい理由がよくわかります」
「なんだか照れますね」
「うふふふふ」
甘く燻された香の匂いが漂ってきた。
いよいよだ。
玖藻神社の斎王と葦原国の斎宮がお披露目される。
もちろん大衆の前を輿で通るときには御簾で仕切られ、顔までは見えないが、ただよう静謐な雰囲気は伝わる。
わたしと竜胆は新たな斎宮に深く頭を下げると、一度外へと出た。
玖藻神社の社殿前に用意してある輿まで向かい、その横に立ち、待機した。
(ああ……、始まった)
宮司が祝詞を読み上げ、巫女が五色の布が付いた鈴をもって舞い、陰陽術師たちが一斉に祈祷を始めた。
玖藻神社に半透明な白いシャボン玉のようなものが浮かび始め、道を埋め尽くすほど集まった見物人の中から歓声が上がる。
わたしと竜胆はその間、弱まってしまう守護の結界を強化し続けながら一応周囲を警戒する。
白いシャボン玉に彩がつきはじめた。
太陽に煌めくそれらは、ゆっくりと弾けると、〈桜〉〈紫陽花〉〈梔子〉〈菊〉〈梅〉の花弁を振りまき、玖藻神社一帯を美しく彩っていった。
それを合図に、輿が持ち上げられ、内裏へ出発した。
「このあと、どうなるんだっけ?」
竜胆が小声で聞いてきた。
新しい神職の装束に浮かれていたから聞き逃したのだろう。
わたしはもう一度丁寧に説明した。
「内裏に向かい、皇帝陛下にご挨拶します。その後、霊廟にて皇帝家の祖霊の皆様方へ、神殿では葦原国の神々に祈りを捧げ、来た道とは逆回りの道順で玖藻神社へと戻ってきます。今日はそれで終わりですね。まぁ、何時間かかかりますけど」
「明日は?」
「明日は国内外の貴族のみなさんからの参拝を御受けします」
「明後日は?」
「抽選で受かった一般の皆さんの参拝を御受けして終わりです」
「その次の日に陽永神宮に出発ってことね」
「その通りです。昨日は色々あって皇帝陛下のお力で玖藻祭の日程をずらすことが出来ましたけど、本来は今日が二日目の予定ですね」
「ああ、そうか。じゃぁ、街のひとたちがこんなにも今日熱狂しているのは、昨日突然延期になっちゃったからなのね」
「そうですね。そうだと思います」
平和だ。天候から気温から香りまで、すべてが〈春〉としてこの場に存在しているかのように。
「そういえば、竜胆は言っていましたよね。皇帝家には敵が多いって」
「ああ、そうだったわね」
「今のところ、目立った凶鬼からの襲撃はありませんね」
「ええ。そうなるように情報統制をしてきたからね」
「……え?」
「言ったのよ。兄弟姉妹たちに。『僕は、貴方たちの側にはつかない』って」
「そ、それって……!」
「そう。もう私は禍ツ鬼たちの敵になったってことね」
「でも、どうして! あなたの家族でしょう?」
「そうね。でも、私が選んでそうなったわけじゃない。自由に生きたかった。心が感じるままに、傷つけるのではなく救うひとになりたいの」
竜胆の黒い髪が、一瞬、元の色に紅く輝いて見えた。
「だからね、私、帰る場所がなくなっちゃった。東の太門も、今頃兄弟姉妹の誰かが荒らしていると思う。でも、禍ツ鬼や凶鬼はここへはこないから安心して」
「それは……」
わたしにはわからなかった。どうして襲ってこないという確信があるのか。
「禍ツ鬼に私のことは殺せないの。だって、私には〈聖女〉の血が流れているから。私を殺せば、私の亡骸を中心に数百キロメートルの範囲が強く浄化されるわ。例え禍ツ鬼でもひとたまりもないでしょうね。私は母が残した最終兵器なのよ。父に対する、ね」
「そ、そんな……」
母親が父親を殺すために子供を爆弾にする……?
「そんなことって……」
信じたくなかった。でも、竜胆の母は〈聖女〉で、禍ツ鬼の〈王〉を封印するために婚姻を結んだという背景がある。
〈聖女〉が、自分が亡き後、それを継ぐ者を用意していたとしたら……。
わたしは胸に何かが閊えているような、どうにもできない苦しさを感じた。
「では、わたしと暮らしましょう」
自分で何を言っているのか、正直なところを言うと驚いたが、でも、言葉にせずにはいられなかった。
「いつか竜胆が幸せに暮らせる場所を見つけるまで、そして、わたしの命があるかぎり、わたしはあなたの居場所になります」
竜胆は目を見開き、次の瞬間にはとても嬉しそうに微笑んだ。
それはこの世界にある花をすべて集めても敵わないほど美しく、素敵だった。
「ありがとう! そうなったらどんなに嬉しいだろうって、出会ったあの日からずっと思ってたの。翼禮の隣って暖かいのよね。でも、ただたんに暖かいだけじゃなくて、初夏に吹く涼しい風みたいに爽やかで、少し影を感じる。だから、あなたは私に完璧を求めずにいてくれるでしょう? とても居心地がいいの。それに、空枝空間のお家も気に入ったし」
「そ、そうですか。よかったです。その、過ごしやすいのなら、それが一番ですから」
「照れてんの? やだぁ、可愛いところもあるじゃない」
「褒められたら誰だって照れるでしょう」
「うふふ」
わたしは前を見ながら、この晴れやかな場になんと自分はそぐわないのだろうと考えていた。
わたしの世界は狭い。とてもとても、狭いのだ。
この両腕で護れる範囲が無事ならそれでいい。家族が安全な場所で平和に楽しく暮らしていればそれでいい。
そのためなら、他の誰が傷ついていようと、どうでもいいとさえ思ってしまうこともある。
いつも誰かに親切にするのは、その親切が巡り巡って家族を救うと信じているから。
誰のためでもない、全部自分のため。わたしが安心するため。
だから、「優しい」とか、「献身的」「自己犠牲」だとか、そういう言葉を交えて褒められると、まるで騙しているような、罪悪感にかられる。
『わたしは、そんな善いひとではないんです!』と叫びたくなる。
いつだって想像してしまう。いつかわたしは多くの人を傷つけるだろう、と。
棘薔薇はきっとそのためにあるのだ。
わたしがわたしを罰するために。
わたしがわたしを、殺すために。
いつもと違い、頭に金色の飾りをつけているせいか、なんだか首が凝る。
日奈子長公主の代理で斎宮を務める巫女、維緋の装束も間に合ったようだ。
「維緋さん、とてもお綺麗ですよ」
社殿の奥。斎宮のために用意された部屋に通されると、そこには美しい唐衣を身に着けた維緋が立っていた。
「翼禮様、わたくしをこの大役に選んでくださり、本当にありがとうございます」
「いえいえ。維緋さんの日々の努力の賜物ですよ」
「うっ……」
感極まった維緋は声を押し殺して泣き始めてしまった。
「ほら、せっかくのお化粧がとれてしまいますよ」
「うっ、は、はい……」
維緋は深呼吸を繰り返すと、そっと目元を拭い、わたしをまっすぐと見つめた。
「『次こそは聖女が生まれてくるだろう』と一族に予言されていたにもかかわらず、わたくしはそう生まれてくることは叶いませんでした。それでも、両親はおしみない愛情を注いで育ててくれました。しかし、一族の者たちの口は閉じることが無く、両親に嫌味を言い続けております。『聖女が生まれなかったのは母親が人間だからだ』と。それが辛くて……。きっとわたくしが前世で聖女にそぐわぬ罪を犯してしまったのです。そのせいで……」
「前世のことなど誰にもわかりません。そんなもの、一部の強い霊感を持った人間たちの間で流行っている占いに過ぎません。だから、気に病むことなどないのですよ」
「翼禮様や仙子族の皆様はそう言ってくださいますが、魔女族は……。だから、今回、〈聖女〉と同様に素晴らしいお役目である〈斎宮〉になれたこと、心から嬉しいのです。やっと、やっと親孝行ができます」
ホッとしたような、柔らかな笑顔。
こんなにも華奢な体に課せられてきた重責は、さぞ辛かったことだろう。
「あなたが笑って生きていることが一番の親孝行だと思いますよ」
「翼禮様……。ありがとうございます。翼禮様の方がわたくしよりも二つほどお若いのに、なんだか母親のようなことを言ってくださるのですね」
「母がよくそう言ってくれるので。受け売りです」
「うふふ。翼禮様がお優しい理由がよくわかります」
「なんだか照れますね」
「うふふふふ」
甘く燻された香の匂いが漂ってきた。
いよいよだ。
玖藻神社の斎王と葦原国の斎宮がお披露目される。
もちろん大衆の前を輿で通るときには御簾で仕切られ、顔までは見えないが、ただよう静謐な雰囲気は伝わる。
わたしと竜胆は新たな斎宮に深く頭を下げると、一度外へと出た。
玖藻神社の社殿前に用意してある輿まで向かい、その横に立ち、待機した。
(ああ……、始まった)
宮司が祝詞を読み上げ、巫女が五色の布が付いた鈴をもって舞い、陰陽術師たちが一斉に祈祷を始めた。
玖藻神社に半透明な白いシャボン玉のようなものが浮かび始め、道を埋め尽くすほど集まった見物人の中から歓声が上がる。
わたしと竜胆はその間、弱まってしまう守護の結界を強化し続けながら一応周囲を警戒する。
白いシャボン玉に彩がつきはじめた。
太陽に煌めくそれらは、ゆっくりと弾けると、〈桜〉〈紫陽花〉〈梔子〉〈菊〉〈梅〉の花弁を振りまき、玖藻神社一帯を美しく彩っていった。
それを合図に、輿が持ち上げられ、内裏へ出発した。
「このあと、どうなるんだっけ?」
竜胆が小声で聞いてきた。
新しい神職の装束に浮かれていたから聞き逃したのだろう。
わたしはもう一度丁寧に説明した。
「内裏に向かい、皇帝陛下にご挨拶します。その後、霊廟にて皇帝家の祖霊の皆様方へ、神殿では葦原国の神々に祈りを捧げ、来た道とは逆回りの道順で玖藻神社へと戻ってきます。今日はそれで終わりですね。まぁ、何時間かかかりますけど」
「明日は?」
「明日は国内外の貴族のみなさんからの参拝を御受けします」
「明後日は?」
「抽選で受かった一般の皆さんの参拝を御受けして終わりです」
「その次の日に陽永神宮に出発ってことね」
「その通りです。昨日は色々あって皇帝陛下のお力で玖藻祭の日程をずらすことが出来ましたけど、本来は今日が二日目の予定ですね」
「ああ、そうか。じゃぁ、街のひとたちがこんなにも今日熱狂しているのは、昨日突然延期になっちゃったからなのね」
「そうですね。そうだと思います」
平和だ。天候から気温から香りまで、すべてが〈春〉としてこの場に存在しているかのように。
「そういえば、竜胆は言っていましたよね。皇帝家には敵が多いって」
「ああ、そうだったわね」
「今のところ、目立った凶鬼からの襲撃はありませんね」
「ええ。そうなるように情報統制をしてきたからね」
「……え?」
「言ったのよ。兄弟姉妹たちに。『僕は、貴方たちの側にはつかない』って」
「そ、それって……!」
「そう。もう私は禍ツ鬼たちの敵になったってことね」
「でも、どうして! あなたの家族でしょう?」
「そうね。でも、私が選んでそうなったわけじゃない。自由に生きたかった。心が感じるままに、傷つけるのではなく救うひとになりたいの」
竜胆の黒い髪が、一瞬、元の色に紅く輝いて見えた。
「だからね、私、帰る場所がなくなっちゃった。東の太門も、今頃兄弟姉妹の誰かが荒らしていると思う。でも、禍ツ鬼や凶鬼はここへはこないから安心して」
「それは……」
わたしにはわからなかった。どうして襲ってこないという確信があるのか。
「禍ツ鬼に私のことは殺せないの。だって、私には〈聖女〉の血が流れているから。私を殺せば、私の亡骸を中心に数百キロメートルの範囲が強く浄化されるわ。例え禍ツ鬼でもひとたまりもないでしょうね。私は母が残した最終兵器なのよ。父に対する、ね」
「そ、そんな……」
母親が父親を殺すために子供を爆弾にする……?
「そんなことって……」
信じたくなかった。でも、竜胆の母は〈聖女〉で、禍ツ鬼の〈王〉を封印するために婚姻を結んだという背景がある。
〈聖女〉が、自分が亡き後、それを継ぐ者を用意していたとしたら……。
わたしは胸に何かが閊えているような、どうにもできない苦しさを感じた。
「では、わたしと暮らしましょう」
自分で何を言っているのか、正直なところを言うと驚いたが、でも、言葉にせずにはいられなかった。
「いつか竜胆が幸せに暮らせる場所を見つけるまで、そして、わたしの命があるかぎり、わたしはあなたの居場所になります」
竜胆は目を見開き、次の瞬間にはとても嬉しそうに微笑んだ。
それはこの世界にある花をすべて集めても敵わないほど美しく、素敵だった。
「ありがとう! そうなったらどんなに嬉しいだろうって、出会ったあの日からずっと思ってたの。翼禮の隣って暖かいのよね。でも、ただたんに暖かいだけじゃなくて、初夏に吹く涼しい風みたいに爽やかで、少し影を感じる。だから、あなたは私に完璧を求めずにいてくれるでしょう? とても居心地がいいの。それに、空枝空間のお家も気に入ったし」
「そ、そうですか。よかったです。その、過ごしやすいのなら、それが一番ですから」
「照れてんの? やだぁ、可愛いところもあるじゃない」
「褒められたら誰だって照れるでしょう」
「うふふ」
わたしは前を見ながら、この晴れやかな場になんと自分はそぐわないのだろうと考えていた。
わたしの世界は狭い。とてもとても、狭いのだ。
この両腕で護れる範囲が無事ならそれでいい。家族が安全な場所で平和に楽しく暮らしていればそれでいい。
そのためなら、他の誰が傷ついていようと、どうでもいいとさえ思ってしまうこともある。
いつも誰かに親切にするのは、その親切が巡り巡って家族を救うと信じているから。
誰のためでもない、全部自分のため。わたしが安心するため。
だから、「優しい」とか、「献身的」「自己犠牲」だとか、そういう言葉を交えて褒められると、まるで騙しているような、罪悪感にかられる。
『わたしは、そんな善いひとではないんです!』と叫びたくなる。
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