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振り返ると、そこには幼馴染のモラルがいた。
家が近いこともあって、昔からよくフロイドも含めた三人で遊んでいた。
「モラル……何しに来た。僕は今、アリスと話をしているんだ。お前は入ってくるな」
「話? 一方的にいじめているようにしか僕には見えないが? ペティもどうしてフロイドの隣にいるんだ? アリスの親友だろう?」
モラルの淡々とした口調が気に食わないのか、ペティは舌打ちをする。
「アリスのストーカーのあなたに言われたくないのだけど? ちょうどいい所で登場してヒーロー気取りたいのかもしれないけど、そういうの本当にダサいよ」
ペティの言葉にフロイドもニヤリと笑みを浮かべる。
しかしモラルは一向に気にする様子もなく、私を守るように、二人の間に立ちふさがった。
「僕のことは何とでも言っていればいいが、これ以上アリスのことを傷つけることは幼馴染として見過ごすわけにはいかない。それでも戦いたいというのなら容赦はしないが」
モラルが眼光を鋭くすると、ペティがすかさず口を開いた。
「そ、それはこっちのセリフよ! 私は卒業したら聖女として働くことが決まっているのよ! 私の魔法であんたたちなんて一瞬で消し飛ばしてあげるわ」
フロイドも「そうだ!」と短く続く。
モラルはため息をつくと、やはり淡々とした口調で言う。
「やれるものならやってみるといい。しかし、身勝手な理由から人を吹き飛ばすような女に聖女の仕事は荷が重すぎると思うが。卒業したら無職になってもいいなら、別だけどね」
「うっ……」
ペティが悔しそうに下唇を噛む。
「ふん、せいぜい今の内にほざいてなさい……行くわよ、フロイド!」
「あ、ああ……」
二人が不機嫌そうに去っていくと、モラルは私を心配そうに見つめた。
「大丈夫だったか? 怪我とかしていないか?」
「うん、ありがとうモラル。あなたが来てくれなかったら私……」
言葉はそこで止まってしまう。
モラルが助けてくれたことに安堵したのか、はたまた愛してないと言われた悲しみを思い出したのか、涙が出てきたのだ。
泣き出してしまった私にモラルはハンカチを渡す。
「まだ使ってないから……ほら、その……拭いた方がいいぞ」
彼は恥ずかしそうにそっぽを向いていた。
私は微笑むと、それを受けとる。
「ありがとね」
私が涙を拭き終わると、ふいにモラルが口を開く。
「それで、これからどうするつもりなんだ? あの様子だとフロイドは君を何とも思ってないみたいだし、ペティも親友のままではいられないだろ?」
「そうね……」
少しだけ冷静になった頭で考えてみるも、明確な解決策のようなものは発見できない。
やはりまだフロイドのことが好きだったし、ペティのことも、嫌いにはなれなかった。
「卒業まであと三か月あるから……それまでに答えは決めようと思う。今日のことも、イライラしていただけかもしれないし……」
私の言葉にモラルは呆れたようにため息をつくが、微かに笑ってみせた。
「全く……君という人はどこまでお人よしなんだ。まあ、それが君の良いところでもあるけどね。分かったよ、また何かあればすぐに駆け付ける。どうやら僕は君のストーカーみたいだから」
「ふふっ、お願いね、モラル」
季節に似つかわしくない温かな風がそっと吹いていた。
家が近いこともあって、昔からよくフロイドも含めた三人で遊んでいた。
「モラル……何しに来た。僕は今、アリスと話をしているんだ。お前は入ってくるな」
「話? 一方的にいじめているようにしか僕には見えないが? ペティもどうしてフロイドの隣にいるんだ? アリスの親友だろう?」
モラルの淡々とした口調が気に食わないのか、ペティは舌打ちをする。
「アリスのストーカーのあなたに言われたくないのだけど? ちょうどいい所で登場してヒーロー気取りたいのかもしれないけど、そういうの本当にダサいよ」
ペティの言葉にフロイドもニヤリと笑みを浮かべる。
しかしモラルは一向に気にする様子もなく、私を守るように、二人の間に立ちふさがった。
「僕のことは何とでも言っていればいいが、これ以上アリスのことを傷つけることは幼馴染として見過ごすわけにはいかない。それでも戦いたいというのなら容赦はしないが」
モラルが眼光を鋭くすると、ペティがすかさず口を開いた。
「そ、それはこっちのセリフよ! 私は卒業したら聖女として働くことが決まっているのよ! 私の魔法であんたたちなんて一瞬で消し飛ばしてあげるわ」
フロイドも「そうだ!」と短く続く。
モラルはため息をつくと、やはり淡々とした口調で言う。
「やれるものならやってみるといい。しかし、身勝手な理由から人を吹き飛ばすような女に聖女の仕事は荷が重すぎると思うが。卒業したら無職になってもいいなら、別だけどね」
「うっ……」
ペティが悔しそうに下唇を噛む。
「ふん、せいぜい今の内にほざいてなさい……行くわよ、フロイド!」
「あ、ああ……」
二人が不機嫌そうに去っていくと、モラルは私を心配そうに見つめた。
「大丈夫だったか? 怪我とかしていないか?」
「うん、ありがとうモラル。あなたが来てくれなかったら私……」
言葉はそこで止まってしまう。
モラルが助けてくれたことに安堵したのか、はたまた愛してないと言われた悲しみを思い出したのか、涙が出てきたのだ。
泣き出してしまった私にモラルはハンカチを渡す。
「まだ使ってないから……ほら、その……拭いた方がいいぞ」
彼は恥ずかしそうにそっぽを向いていた。
私は微笑むと、それを受けとる。
「ありがとね」
私が涙を拭き終わると、ふいにモラルが口を開く。
「それで、これからどうするつもりなんだ? あの様子だとフロイドは君を何とも思ってないみたいだし、ペティも親友のままではいられないだろ?」
「そうね……」
少しだけ冷静になった頭で考えてみるも、明確な解決策のようなものは発見できない。
やはりまだフロイドのことが好きだったし、ペティのことも、嫌いにはなれなかった。
「卒業まであと三か月あるから……それまでに答えは決めようと思う。今日のことも、イライラしていただけかもしれないし……」
私の言葉にモラルは呆れたようにため息をつくが、微かに笑ってみせた。
「全く……君という人はどこまでお人よしなんだ。まあ、それが君の良いところでもあるけどね。分かったよ、また何かあればすぐに駆け付ける。どうやら僕は君のストーカーみたいだから」
「ふふっ、お願いね、モラル」
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