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生まれた時から可愛かった私は、母に溺愛された。
母は私に何でも買い与えてくれたし、面倒なことは代わりにやってくれた。
そんな母がいつもおまじないのように言っていた言葉がある。
『たくさんの男の人を愛しなさい。そうすればあなたは幸せになれるわ』
母は過去に心の底から愛する人がいた。
しかしその人に裏切られて、自殺未遂をするほどに悲しんだらしい。
そして気づいたのだという。
愛する人がもっとたくさんいれば、こんな気持ちにはならなかったのだと。
純粋無垢な好奇心を持っていた子供の私は、母のいうことを信じることにした。
幸い容姿には恵まれていたので、自分から誘わなくても、男の子の方から寄ってきた。
そして母の言いつけ通り、たくさんの子を好きになった。
学園に入学を果たした時も、その考えに変りはなかった。
私は手当たり次第に男の人と関係を結び、私の恋人にした。
皆私を愛してくれて、私も愛していた。
しかしそんな日々は妊娠をきっかけに崩れ去った。
私を妊娠させた男は私を振って、アレンも自分の子じゃないと分かると、簡単に私を切り捨てた。
後に残ったのは慰謝料とこのお腹の子だけだった。
「マリー。お前は自分が何をしたのか分かっているのか?」
卒業式の数日後。
事情を知った父は、私に怒号を飛ばした。
「複数の男に手を出し、妊娠して……さらに婚約者がいる男にまで手を出し……こ、この馬鹿娘が!!!」
父は手を出さんばかりの勢いで私に怒鳴りつけた。
お腹の子がいなかったら確実に私は殴られていただろう。
助けを求めるように母を見るも、母は唇を噛んで俯いていた。
目すら合わせてくれない母に失望して、私はその場に崩れ落ちた。
「ごめんなさい……こんなことになるなんて想像していなかったの……そ、そうよ……悪いのは全部お母さんよ……私はお母さんの言いつけに従っただけで……」
「なんだと!?」
父が怒りの矛先を母に向けるが、彼女は首を横に振る。
「私は何もしていないわ! 悪いのは全部この子よ! 私は関係ないわ!」
「そんな! 悪いのは全部お母さんよ! お母さんが言ってたじゃない! たくさんの男を愛せって……」
「うるさい!!!」
口論する私たちに、父が叫んだ。
恐る恐るその顔を見ると、鬼のように真っ赤に歪んでいた。
「互いに罪を擦り付け合うとは汚いぞ……それでも本当に貴族か? お前たちのような馬鹿にはこの家に住む権利はない……そして私の家族でいる権利もない! 即刻修道院に送ってやる!」
父の猛々しい言葉に母が泣いて縋りつく。
「止めて! あなた、私を信じて!」
しかし父はギロリと母を睨みつけると、冷たい口調で言う。
「ふん誰がお前なんて信じられるか……私は知っているのだぞ、最近若い男と街を歩いているのを……」
「え……」
母の顔が絶望したように真っ青になる。
どうやらたくさんの男を愛した所で幸せになれるわけではないらしい。
父は私に目を向けると、先ほどの冷たい口調で言う。
「マリー。その子はお前が責任を持って世話をするんだ。最低限の援助はしてやるが、もうここに戻ることは許さない。お前は我が家の面汚しだ」
その後、私と母は揃って修道院に送られた。
母は私に何でも買い与えてくれたし、面倒なことは代わりにやってくれた。
そんな母がいつもおまじないのように言っていた言葉がある。
『たくさんの男の人を愛しなさい。そうすればあなたは幸せになれるわ』
母は過去に心の底から愛する人がいた。
しかしその人に裏切られて、自殺未遂をするほどに悲しんだらしい。
そして気づいたのだという。
愛する人がもっとたくさんいれば、こんな気持ちにはならなかったのだと。
純粋無垢な好奇心を持っていた子供の私は、母のいうことを信じることにした。
幸い容姿には恵まれていたので、自分から誘わなくても、男の子の方から寄ってきた。
そして母の言いつけ通り、たくさんの子を好きになった。
学園に入学を果たした時も、その考えに変りはなかった。
私は手当たり次第に男の人と関係を結び、私の恋人にした。
皆私を愛してくれて、私も愛していた。
しかしそんな日々は妊娠をきっかけに崩れ去った。
私を妊娠させた男は私を振って、アレンも自分の子じゃないと分かると、簡単に私を切り捨てた。
後に残ったのは慰謝料とこのお腹の子だけだった。
「マリー。お前は自分が何をしたのか分かっているのか?」
卒業式の数日後。
事情を知った父は、私に怒号を飛ばした。
「複数の男に手を出し、妊娠して……さらに婚約者がいる男にまで手を出し……こ、この馬鹿娘が!!!」
父は手を出さんばかりの勢いで私に怒鳴りつけた。
お腹の子がいなかったら確実に私は殴られていただろう。
助けを求めるように母を見るも、母は唇を噛んで俯いていた。
目すら合わせてくれない母に失望して、私はその場に崩れ落ちた。
「ごめんなさい……こんなことになるなんて想像していなかったの……そ、そうよ……悪いのは全部お母さんよ……私はお母さんの言いつけに従っただけで……」
「なんだと!?」
父が怒りの矛先を母に向けるが、彼女は首を横に振る。
「私は何もしていないわ! 悪いのは全部この子よ! 私は関係ないわ!」
「そんな! 悪いのは全部お母さんよ! お母さんが言ってたじゃない! たくさんの男を愛せって……」
「うるさい!!!」
口論する私たちに、父が叫んだ。
恐る恐るその顔を見ると、鬼のように真っ赤に歪んでいた。
「互いに罪を擦り付け合うとは汚いぞ……それでも本当に貴族か? お前たちのような馬鹿にはこの家に住む権利はない……そして私の家族でいる権利もない! 即刻修道院に送ってやる!」
父の猛々しい言葉に母が泣いて縋りつく。
「止めて! あなた、私を信じて!」
しかし父はギロリと母を睨みつけると、冷たい口調で言う。
「ふん誰がお前なんて信じられるか……私は知っているのだぞ、最近若い男と街を歩いているのを……」
「え……」
母の顔が絶望したように真っ青になる。
どうやらたくさんの男を愛した所で幸せになれるわけではないらしい。
父は私に目を向けると、先ほどの冷たい口調で言う。
「マリー。その子はお前が責任を持って世話をするんだ。最低限の援助はしてやるが、もうここに戻ることは許さない。お前は我が家の面汚しだ」
その後、私と母は揃って修道院に送られた。
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