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 卒業式から数日が立ったが、僕はまだ父に怒られていた。
 書斎が震えるんじゃないかと思えるほどの大声を父は上げていた。

「お前のせいで我が家は汚名を浴び、サラ嬢は悲しみの底にいるのだぞ! お前は分かっているのか!」
 
 父は行動力こそあるものの、根が馬鹿なので、毎回のように同じ言葉で怒ってくる。
 僕は聞き飽きた言葉を浴びながら、上辺だけの謝罪をする。

「ほ、本当に反省しています……サラには取り返しのつかないことをしました。家族にも迷惑をかけて……もし時が戻るのなら、僕は昔の自分を殴ってやりたいです……本当にごめんなさい……」

 父に土下座をするのは屈辱だが、状況的に仕方がなかった。
 僕はその場に膝をつくと、形だけの土下座をする。
 しかし父に見えない顔は屈辱に満ち、強く歯ぎしりをしていた。

「ふん……たったそれだけの謝罪の言葉で私が許すと思っているのか?」

 僕が土下座を披露したにも関わらず、父は許す気はないらしい。
 呆れたような声に怒気を含ませ、そう言った。
 僕は顔だけ上げると、懇願するように早口に言う。

「そんなことは分かっています! 自分がどれだけ愚かな行為をしたのか……しかし、これ以上何を言えと言うのですか……ぼ、僕はこの身がどうなっても構いません……どうか厳正な罰と共に、僕に許しをください……」

 正直、こんなに長く説教が続くとは思ってもみなかった。
 結局マリーの妊娠した子は、僕の子じゃなかったからいいじゃないか。
 そろそろ我慢の限界だし、この無駄に長い説教から早く解放されたかった。

「ほう、じゃあお前は何でもするか?」

 父の挑発するような軽い声に、僕はイラつきながらも、それを心の底に隠して口を開いた。

「もちろんです! 僕はどんな罰でも受けます!」

 こうは言ったが、父のことだから過剰な罰を与えることはしないだろう。
 一番大事な所で父は甘いのだ。
 僕は半ば勝利した気分で、土下座を解き、体を上げた。
 父は僕を試すように見つめると、微かに口角を上げる。

「じゃあお前には、私が目を付けている遠方の地を開拓してもらう。そこの土にはとある貴族の隠し財産が眠っているとされている。私の代わりに指揮をとり、隠し財産を発掘してこい! いいな!」

「は、はい!」

 隠し財産……その言葉を聞いただけで、僕は楽しみになってきた。
 自分が指揮をとるということは、自分が一番の権力を持っているということだ。
 父に内緒で少しだけ盗んだりしてもバレはしない。
 僕の企みに気づく様子もなく、父は僕に言う。

「任せたぞ! アレン!」

 それから二週間後。
 僕は家を旅立ち、遠方の土地へ向かった。
 そこは見渡す限りの山で、近くに寂れた街があるだけの辺鄙な場所だった。
 気が重くなったが、隠し財産を見つけるまでだと割り切り、僕は覚悟を決めた。

 しかしそれからいくら土を掘っても、隠し財産など見つかることはなかった。
 次第に騙されたような気分になってきて、僕の気持ちが伝播したのか、作業員たちの作業スピードも遅くなっていった。 

 僕はこんなこと止めて早く帰りたかったが、父によって派遣された見張りによって、四六時中見張られていて、こっそり抜け出すことは不可能だった。

 そこには学園で満喫できたような幸せな毎日はなかった。
 女といえば子供か老婆しかいなくて、観光客も来る気配はなかった。
 僕は完全に絶望し、次第に諦め始めた。

 そして今日も、いつも通り、隠し財産を探すのだ。
 きっといつまでも。
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