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「アナ。お前みたいな浮気女とは婚約破棄だ!」
貴族が集まるパーティー会場で、私の婚約者のリチャードは叫んだ。
突然の出来事に周囲から痛い視線がこれでもかと飛んでくる。
「あのリチャード?浮気?は?」
しかし、そんな視線なんて気にならないくらい、私は動揺していた。
リチャードとは半年前に知り合って、三か月前に婚約したばかり。
その彼からまさか婚約破棄を告げられるなんて。
「しらばっくれるな!お前がたくさんの男と話していたっていう証言があるんだ!俺というイケメンの婚約者がいながら不貞をしているとは……いい度胸だなぁ」
「はい?」
私は呆れてものも言えなかった。
人を浮気女よばわりするのだから、それ相応の証拠を突きつけてくると思っていたが、まさか私が男と話していただけで不貞だと言ってくるとは。
「ねえリチャード……私だってあなた以外の男の人と話すことくらいあるわよ。そんなものをいちいち浮気だとか不貞だとか言われていたんじゃ、身がもたないわ。大体そんなものが浮気になるわけないでしょ」
大きなため息をつくと、リチャードは顔を真っ赤にして怒った。
「なんだと……ふざけたこといいやがって……いいかアナ!警察に突き出されたくなかったら今すぐ慰謝料を払うと誓え!」
「……」
あぁ、もうダメだこれ。
いくら頭に血が上っているとはいえ、ここまで馬鹿だとは思わなかった。
冷静になってみると顔もそんなにかっこよくないし、声は異様にデカいし、いい所ないわ。
「調べられて困るのはあなたの方じゃないの?」
もう限界だった。
リチャードがいつか改心してくれると思って黙っていたが、その必要はなさそうだ。
「はぁ?何言ってる?自分の罪を認めたくないからって俺のせいに……」
「それはあなたのことでしょ!!!」
私が突然に大きな声を出したので、リチャードはびくっと体を震わした。
周囲の人達も皆一様に一歩だけ後退する。
私はそのままに勢いで言葉を続ける。
「あなたがたくさんの女性と浮気していたことは知っているのよ!これが証拠よ!」
私は服のポケットから数枚の写真を取り出した。
いつでも彼に突きつけられるようにと、肌身離さず持っていたのだ。
そこには複数の女性とイチャつくリチャードの姿が写っていた。
「え……どうして……そのことを……あ、いや今のは……」
リチャードの顔面がどんどん青くなっていく。
自分の失言に気づいた時にはもう遅い。
貴族たちから、ゴミでも見るような痛い視線を浴びせられていた。
「な、なあアナ。そ、それはほんの遊びだったんだ……本気じゃなかったんだよ。俺が心の底から愛しているのは君だけさ……な?」
リチャードがおそるおそる私に近づいてくる。
平和の握手でもしたいのか、彼の小汚い手が伸びてきた。
しかし、私はそれをバシっと叩くと、次いで彼の頬をビンタした。
「いたっ……なにすんだよ……うっ」
そんなに強く叩いたつもりはなかったが、彼は涙目になってしまう。
私は同情の言葉をかけることもなく、淡々と言う。
「リチャード。あなたとの婚約破棄受け入れます。ただし……慰謝料を払うのはあなたよ。いいわね?」
リチャードは助けを求めるように、キョロキョロしたが、残念なことに助ける人など誰もいない。
やがて諦めたように息をはくと、短く言った。
「あぁ……分かった」
貴族が集まるパーティー会場で、私の婚約者のリチャードは叫んだ。
突然の出来事に周囲から痛い視線がこれでもかと飛んでくる。
「あのリチャード?浮気?は?」
しかし、そんな視線なんて気にならないくらい、私は動揺していた。
リチャードとは半年前に知り合って、三か月前に婚約したばかり。
その彼からまさか婚約破棄を告げられるなんて。
「しらばっくれるな!お前がたくさんの男と話していたっていう証言があるんだ!俺というイケメンの婚約者がいながら不貞をしているとは……いい度胸だなぁ」
「はい?」
私は呆れてものも言えなかった。
人を浮気女よばわりするのだから、それ相応の証拠を突きつけてくると思っていたが、まさか私が男と話していただけで不貞だと言ってくるとは。
「ねえリチャード……私だってあなた以外の男の人と話すことくらいあるわよ。そんなものをいちいち浮気だとか不貞だとか言われていたんじゃ、身がもたないわ。大体そんなものが浮気になるわけないでしょ」
大きなため息をつくと、リチャードは顔を真っ赤にして怒った。
「なんだと……ふざけたこといいやがって……いいかアナ!警察に突き出されたくなかったら今すぐ慰謝料を払うと誓え!」
「……」
あぁ、もうダメだこれ。
いくら頭に血が上っているとはいえ、ここまで馬鹿だとは思わなかった。
冷静になってみると顔もそんなにかっこよくないし、声は異様にデカいし、いい所ないわ。
「調べられて困るのはあなたの方じゃないの?」
もう限界だった。
リチャードがいつか改心してくれると思って黙っていたが、その必要はなさそうだ。
「はぁ?何言ってる?自分の罪を認めたくないからって俺のせいに……」
「それはあなたのことでしょ!!!」
私が突然に大きな声を出したので、リチャードはびくっと体を震わした。
周囲の人達も皆一様に一歩だけ後退する。
私はそのままに勢いで言葉を続ける。
「あなたがたくさんの女性と浮気していたことは知っているのよ!これが証拠よ!」
私は服のポケットから数枚の写真を取り出した。
いつでも彼に突きつけられるようにと、肌身離さず持っていたのだ。
そこには複数の女性とイチャつくリチャードの姿が写っていた。
「え……どうして……そのことを……あ、いや今のは……」
リチャードの顔面がどんどん青くなっていく。
自分の失言に気づいた時にはもう遅い。
貴族たちから、ゴミでも見るような痛い視線を浴びせられていた。
「な、なあアナ。そ、それはほんの遊びだったんだ……本気じゃなかったんだよ。俺が心の底から愛しているのは君だけさ……な?」
リチャードがおそるおそる私に近づいてくる。
平和の握手でもしたいのか、彼の小汚い手が伸びてきた。
しかし、私はそれをバシっと叩くと、次いで彼の頬をビンタした。
「いたっ……なにすんだよ……うっ」
そんなに強く叩いたつもりはなかったが、彼は涙目になってしまう。
私は同情の言葉をかけることもなく、淡々と言う。
「リチャード。あなたとの婚約破棄受け入れます。ただし……慰謝料を払うのはあなたよ。いいわね?」
リチャードは助けを求めるように、キョロキョロしたが、残念なことに助ける人など誰もいない。
やがて諦めたように息をはくと、短く言った。
「あぁ……分かった」
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