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「これが慰謝料の金貨千枚だ」
あの一件から一か月後。
応接間にて、アレンは金貨の入った重い袋を机の上に置いた。
そのずっしりとした雰囲気に圧倒されながらも、私は深く頭を下げる。
「協力して頂いて、本当にありがとうございました。アレン様がいなかったら、今頃真実は闇の中……私の身には何かあったかもしれません」
「いや、僕は当然のことをしただけさ。全てはあの馬鹿弟が元凶だ、それを正すのも兄としての役目だからね」
あの後、気絶したロイは兵士に連れて行かれ、即刻に刑務所に入れられた。
魔法の違法使用で終身刑となり、彼の魅了という魔法の特性上、面会も行うことはできないらしい。
私とは当然の如く離婚となり、慰謝料として金貨千枚をアレンが今日持ってきたのだ。
「それよりアリア。君はこれからどうするんだい? この屋敷は使っていても構わないが、一人じゃ退屈だろう?」
「ええ、そのことなのですが、私は実家に帰ることにしました。色々ありましたが、私はロイ様のことが好きだったので……彼との思い出が詰まったこの家は、少し住みにくいのです」
アレンを心配させないように笑って見せるが、上手く笑えなかったかもしれない。
彼は不安そうに私を見つめていた。
「そうか……もし……君が……」
そこまで言うと、アレンは言葉を止める。
急に恥ずかしくなったように頬が赤くなった。
「どうかしたのですか? 私、何か変なこといいましたか?」
そう尋ねるも、彼は焦ったように首を横に振り、早口に言う。
「そんなことは決してない! 君は完璧で素敵な女性だ! 僕が保証する!」
「え……ふふっ、まるで告白のセリフみたいですね」
言ってから私も急に恥ずかしくなった。
もしかして今のは……本当に告白……だったのだろうか?
恐る恐るアレンの顔を見ると、彼は決意を固めたような目で口を開いた。
「アリア……今の君にこんなことを言うのは酷かもしれない。でも、言わせてくれ。僕は君のことが好きだ。君の心からロイが消えるのをいつまでも待つ……だから、その時には僕の妻となってくれないだろうか?」
「……え?」
さっとは打って変わってストレートな告白に、私は目を見開く。
体中が熱くなり、恥ずかしさと嬉しさが込み上げてきた。
「しかし、私なんて別に……」
「君がいいんだ! 君以外なんて考えられないんだ!」
アレンの言葉には曇りない真実しか感じなかった。
まるで太陽のような光り輝く瞳を見ていると、それに吸い込まれそうになってしまう。
私は何とか自分を保ち、クルリと体を反転させた。
「と、とても時間がかかりますよ? い、一年……いや十年かも!」
「別に構わない。たとえこの足が動かなくなっても、君への愛は止まらない」
後ろを向いているので、彼の表情は分からないが、とても見ることはできなかった。
私はそのまま背を向けて、口を開く。
「アレン様……じゃ、じゃあとりあえず半年ほど待って頂けますか? それまでに気持ちに整理を付けますから」
「もちろんだよ。アリア」
すっと隣をアレンが通った。
彼は応接間の扉まで歩くと、私に振り返る。
「いつまでも君を待っている」
そして最後にその言葉を残すと、応接間を去っていった。
彼がいなくなって初めて、私は屈託のない笑顔を浮かべた……
あの一件から一か月後。
応接間にて、アレンは金貨の入った重い袋を机の上に置いた。
そのずっしりとした雰囲気に圧倒されながらも、私は深く頭を下げる。
「協力して頂いて、本当にありがとうございました。アレン様がいなかったら、今頃真実は闇の中……私の身には何かあったかもしれません」
「いや、僕は当然のことをしただけさ。全てはあの馬鹿弟が元凶だ、それを正すのも兄としての役目だからね」
あの後、気絶したロイは兵士に連れて行かれ、即刻に刑務所に入れられた。
魔法の違法使用で終身刑となり、彼の魅了という魔法の特性上、面会も行うことはできないらしい。
私とは当然の如く離婚となり、慰謝料として金貨千枚をアレンが今日持ってきたのだ。
「それよりアリア。君はこれからどうするんだい? この屋敷は使っていても構わないが、一人じゃ退屈だろう?」
「ええ、そのことなのですが、私は実家に帰ることにしました。色々ありましたが、私はロイ様のことが好きだったので……彼との思い出が詰まったこの家は、少し住みにくいのです」
アレンを心配させないように笑って見せるが、上手く笑えなかったかもしれない。
彼は不安そうに私を見つめていた。
「そうか……もし……君が……」
そこまで言うと、アレンは言葉を止める。
急に恥ずかしくなったように頬が赤くなった。
「どうかしたのですか? 私、何か変なこといいましたか?」
そう尋ねるも、彼は焦ったように首を横に振り、早口に言う。
「そんなことは決してない! 君は完璧で素敵な女性だ! 僕が保証する!」
「え……ふふっ、まるで告白のセリフみたいですね」
言ってから私も急に恥ずかしくなった。
もしかして今のは……本当に告白……だったのだろうか?
恐る恐るアレンの顔を見ると、彼は決意を固めたような目で口を開いた。
「アリア……今の君にこんなことを言うのは酷かもしれない。でも、言わせてくれ。僕は君のことが好きだ。君の心からロイが消えるのをいつまでも待つ……だから、その時には僕の妻となってくれないだろうか?」
「……え?」
さっとは打って変わってストレートな告白に、私は目を見開く。
体中が熱くなり、恥ずかしさと嬉しさが込み上げてきた。
「しかし、私なんて別に……」
「君がいいんだ! 君以外なんて考えられないんだ!」
アレンの言葉には曇りない真実しか感じなかった。
まるで太陽のような光り輝く瞳を見ていると、それに吸い込まれそうになってしまう。
私は何とか自分を保ち、クルリと体を反転させた。
「と、とても時間がかかりますよ? い、一年……いや十年かも!」
「別に構わない。たとえこの足が動かなくなっても、君への愛は止まらない」
後ろを向いているので、彼の表情は分からないが、とても見ることはできなかった。
私はそのまま背を向けて、口を開く。
「アレン様……じゃ、じゃあとりあえず半年ほど待って頂けますか? それまでに気持ちに整理を付けますから」
「もちろんだよ。アリア」
すっと隣をアレンが通った。
彼は応接間の扉まで歩くと、私に振り返る。
「いつまでも君を待っている」
そして最後にその言葉を残すと、応接間を去っていった。
彼がいなくなって初めて、私は屈託のない笑顔を浮かべた……
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