異世界転移物語

相互報告

　僕は帰途に着きながら、ふと思い出した。そういえばメロンパンのことも確かめなかったな、と。

　待ち合わせ場所まで戻ると、海原君と桂坂さんが待ちくたびれたような顔をしていた。

「遅いじゃない！　もう～、どこまで行ってたのよ？」

　ちょっとお怒りのようだ。ここは安食さんに説明してもらうのが得策だろう。僕は安食さんに目配せした。

「すみません。遅くなりました。でも収穫がありましたよ」

　安食さんが善蔵さんたちに会ったことを話すと「本当？」と桂坂さんらは驚いた表情を見せた。

「二人だけで四か月もすごいですね！」

　海原君の素直な感想だ。彼らの心境たるや、ちょっと想像がつかないのは確かだ。

「それにしても夫婦二人一緒にこっちに来るなんて、まったく新しいパターンね。ここではまたかなり仕組みが違うのかな？」

「そうだね、桂坂さん。僕らが体験したことが必ずしもスタンダードではないかもしれないってことだよね」

　僕らは色々疑問に思うこともたくさんあって、帰り道でもそれについて話しながら歩いたが、すべては想像でしかなく、もう一度彼らに会って話をしないと分からないことばかりだった。少し遅くなったので、集落に戻る前に暗くなってしまった。

　もう少しで集落という辺りで、家の方からこちらに向けて灯りが放たれているのが見えた。懐中電灯だろうか。

「おお、帰ってきたな～」

「ただいま～」

　金田さんの声が聞こえたので、僕も大声で返事をした。よく見ると、金田さんの横に見知らぬ人が立っている。もしかしたら新しい人？

「遅かったな」

　家の前まで来ると、すかさず金田さんから声が掛かった。

「すみません。ちょっと色々あったんで……。ええと、その隣の人は……？」

「僕は栗本研と言います。今日、こっちにやってきたばかりです」

　ハキハキとした答えが帰ってきた。暗くて分かりづらいが、スラッとした高身長の感じの良さそうな青年だ。僕より歳上なのは間違いないと思うのだが。

　僕らは一旦中に入ることにした。楓さんと林さんも居て、これで全員揃っている。

「先に報告させてください」

　僕は座ると同時にそう切り出した。朗報は早く伝えたほうがいいに決まってる。

「ほう。何かいい報告でもあるのかな」

　林さんがお手並拝見といった体で僕に発言を促す。僕の様子から悪い報告ではないと察したのだろう。

「僕と安食さんのペアは、午前中の終わりに、新しく老人夫婦に出会いました」

「老人夫婦？」

「ええ、夫婦なんです。しかも二人同時にこちらに来たそうです」

　おおっ、というどよめきが上がった。