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善蔵さん夫婦の家
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「わしと妻は地域の防災講座に参加しとっての。ちょうど非常食の試食をやったったのじゃ。そこでめまいが起こって、気がついたら二人で見知らぬ森の中じゃ。驚いたことに、近くに置いてあった水やら非常食の山もわしらと一緒にこっちに届いた。わしら元々少食なんで、それを細々と食いつないでおるのじゃ」
善蔵さんはそう言うと台座を指さした。よく見ると台座の下が空洞になっていて、確かに奥に非常食らしきものが見える。
「もうそんなに残ってないがの。缶詰もたくさんあったんで傷むことはなかったしな」
「水はどうしたんですか?」
「ああ、それは雨水じゃな。たまたま次亜塩素の瓶もあったから、それを入れて殺菌に使っとる。入れる塩素はほんのわずかじゃから、まだまだもつ」
ゴミなどはおそらく外に捨てているのだろう。室内には余分なものは何もない。
「あのかまどは善蔵さんたちが?」
「ああ、あれか。あれはわしが作った。火を起こすものがなかったでな。苦労して起こした火を絶やさないようにするためじゃ」
「あんな離れたところにわざわざ作ったのは何故ですか?」
「そりゃお前。家の中や近くに作るわけにはいかないやろ。火が燃え移ったらどうする?」
「あっ」
僕はハッとした。実際、それで僕らは火事を経験している。この狭いところで火を使う危険性は確かに高い。
「あれが燃えて煙を出してたおかげで、私たちはここを発見出来たんです」と安食さん。
「そうか。そりゃ、思ってもみなかったな。なにせ、ここに来てから妻以外誰にも会ってないでな」
「そうなんですか!」
僕のあまりの驚きように善蔵さんは怪訝な顔をした。
「そんなにびっくりするようなことなのか?」
僕は今までのことをかいつまんで話した。前の村で毎日一人ずつ新しい人が来ていたことも。
「はあ。そんなにおるんか」
僕の話を聞いた善蔵さんはため息をついた。
「是非会ってみたいですわ」
緑さんがニコニコしながら目を輝かせる。
「みんなもきっと喜ぶと思います」と安食さんが答えた。
僕はふと思い出して時刻を確認した。まずい。そろそろ帰らなくては。
「善蔵さん、すみません。今日のところはこれで失礼させてもらいます。明日から明後日あたりまた来ますので、その時またお話しましょう」
僕は少し名残惜しかったけれど、そう告げて帰途に着くことにした。二人は僕と安食さんを手を振って送り出してくれた。そういえば、今日は聞けなかったけど、四か月もの間、あの二人はどんな暮らしをしてきたのだろうか。とても興味がある。
善蔵さんはそう言うと台座を指さした。よく見ると台座の下が空洞になっていて、確かに奥に非常食らしきものが見える。
「もうそんなに残ってないがの。缶詰もたくさんあったんで傷むことはなかったしな」
「水はどうしたんですか?」
「ああ、それは雨水じゃな。たまたま次亜塩素の瓶もあったから、それを入れて殺菌に使っとる。入れる塩素はほんのわずかじゃから、まだまだもつ」
ゴミなどはおそらく外に捨てているのだろう。室内には余分なものは何もない。
「あのかまどは善蔵さんたちが?」
「ああ、あれか。あれはわしが作った。火を起こすものがなかったでな。苦労して起こした火を絶やさないようにするためじゃ」
「あんな離れたところにわざわざ作ったのは何故ですか?」
「そりゃお前。家の中や近くに作るわけにはいかないやろ。火が燃え移ったらどうする?」
「あっ」
僕はハッとした。実際、それで僕らは火事を経験している。この狭いところで火を使う危険性は確かに高い。
「あれが燃えて煙を出してたおかげで、私たちはここを発見出来たんです」と安食さん。
「そうか。そりゃ、思ってもみなかったな。なにせ、ここに来てから妻以外誰にも会ってないでな」
「そうなんですか!」
僕のあまりの驚きように善蔵さんは怪訝な顔をした。
「そんなにびっくりするようなことなのか?」
僕は今までのことをかいつまんで話した。前の村で毎日一人ずつ新しい人が来ていたことも。
「はあ。そんなにおるんか」
僕の話を聞いた善蔵さんはため息をついた。
「是非会ってみたいですわ」
緑さんがニコニコしながら目を輝かせる。
「みんなもきっと喜ぶと思います」と安食さんが答えた。
僕はふと思い出して時刻を確認した。まずい。そろそろ帰らなくては。
「善蔵さん、すみません。今日のところはこれで失礼させてもらいます。明日から明後日あたりまた来ますので、その時またお話しましょう」
僕は少し名残惜しかったけれど、そう告げて帰途に着くことにした。二人は僕と安食さんを手を振って送り出してくれた。そういえば、今日は聞けなかったけど、四か月もの間、あの二人はどんな暮らしをしてきたのだろうか。とても興味がある。
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