異世界転移物語

状況説明

　さっき現場に居合わせた４人の他に、釣りキチさん、林さん、海原君、和也、料子さん、安食さん、いのりの７人が加わった。全部で11人になる。

「もうご存知かも知れませんが、先ほど金田さんの姿が消えました。行方不明とかじゃなくて、僕たち数人の目の前で消えてしまったのです」

　一同を前にして僕は簡単に説明した。

「どんな状況だったんですか？」

　安食さんが尋ねる。

「僕と理科さん、桂坂さん、陽子さんが外で星を見ながら話してると、そこへ金田さんが現れたんです。金田さんはかなり苦しそうだったので僕たちは家で休むよう勧めたんですが、本人が構わないと言うので、そこで横になって僕たちと一緒になって会話することにしたんです」

　海原君も林さんや和也も真剣に僕の話を聞いてくれている。料子さんは不安そうな表情が顔に出ている。

「それでいきなり金田さんが大事な話を始めようとしたんです。その途中で、頭が痛いと言い出し、そんな状況で金田さんの身体が消え失せたというわけです」

「それって転移したってこと？」

　料子さんが質問する。今までのことを考えれば「転移」が念頭に思い浮かぶのは当然の流れだろう。

「それは分かりません。どこかに再度現れることで、それが転移だったんだと振り返ることは出来ると思いますが」

「金田さんはね、自分で自らの命はもう長くないって言ってたのよ」

　陽子さんが付け加える。

「なんでそんなことが分かるの？」と安食さん。

「間（はざま）の空間で、天の声を聞いたんですって」

「え？」

　流石にそれだけでは説明不足だろう。僕は金田さんが体験したという不思議な現象とそれが病気の原因となっていることについて、出来るだけ金田さんの言ったことに忠実な説明を試みた。

　半信半疑的な面持ちで耳を傾けていた海原君たちであったが、直に聞いた僕たちですら、どこまで信じていいのか分からない話なので仕方ないだろう。

「金田さんが体験したと言っていることは、夢とか、思い込み、錯覚みたいな可能性もあるんじゃないですか？」

　海原君の疑問はもっともだ。金田さんの真摯な表情からは嘘をついているようには見えなかったが、本人自信も完全に信じこんでいる幻覚という可能性は確かにある。

「そうだね。あまりに非現実的な話だしね」

「いや、非現実的なんて言ったらそもそもこの世界に転移すること自体が非現実的やないかい！」

　林さんが一蹴する。

「おっしゃる通りです。それに実際に金田さんは原因不明の病気になっていたし……。ただの夢では片付けられないと思います」