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第13話 青天の霹靂
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悲劇は突然やってきた。
いつものように、鈴木との旅行の計画を経てるためスマートフォンで検索をしていると速報の通知とWEBニュースが流れてきた。
「速報:新型の疫病が世界中で拡大。日本への入国制限強化へ」
早苗は思考停止した。その場から固まって動けなくなっていた。
スマートフォンに飛び込んできたのは、1件のニュース記事だった。
「海外で発生した新たな変異種が発見され、世界中に驚異的なスピードで感染勢力拡大中。日本政府は急遽、入国制限を強化することを決定」という内容で対象国には鈴木の滞在国も含まれていた。
早苗は頭が真っ白になった。目を疑い、ゆっくりと記事を何度も読み返したが「入国制限」と鈴木の滞在国が書いてあること以外は頭の中に入ってこない。
「……うそ……でしょ?」やっとのことでその一言だけ絞りだした。
鈴木は、一時帰国すらできなくなってしまうかもしれない。
動揺を隠せないまま鈴木にメールを送った。
「入国制限のニュース見た?」
「さっきニュースで見た。こっちでも騒ぎになってる」すぐに返信が来た。
短いやり取りだったが、お互いの動揺が伝わってくるようだった。
早苗は、いてもたってもいられず鈴木に電話をかけた。
「もしもし……鈴木?鈴木、大丈夫……?」
「ああ、おかげさまで。周りにはいないから問題ないけれど、ニュースは大々的に報道されているからパニック状態にはなっているかな。大丈夫だよ、まだ正式決定じゃないみたいだし状況を見守ろう」
鈴木は落ち着いた声で言った。
「でも……でも……もし……」
気が動転してそれ以上言えなかった。
「とりあえず今は待とう」早苗を落ち着かせるように穏やかな口調で鈴木は言った。
少しだけ落ち着きを取り戻したが、不安は拭いきれなかった。
速報で流すくらいの緊急性の高い内容で入国制限とまで書かれていて、簡単に「やはり止めます」と撤回するとは思えなかった。
もし入国制限を止めて感染拡大した場合、批判を受けるのが怖い、責任を追わないために一度言ったらそのままなのではないか……悪い想像ばかりが頭の中を支配した。
その日から毎日ニュースをチェックするようになった。入国制限の情報はもちろん、感染状況や各国の対応などあらゆる情報を集めた。鈴木とも頻繁に連絡を取り合い情報を共有した。
数日後、政府から正式な発表があり入国制限は強化されることになった。
鈴木の一時帰国は、事実上不可能になった。
予想はしていたがひどく落胆した。鈴木に会える日が長引くことになった。
その夜、早苗は鈴木とビデオ通話をした。
画面に映る鈴木は少し疲れた顔をしていたが、早苗に心配をかけないように努めて明るく穏やかな笑顔で振る舞っていた。早苗も泣きたい気分を堪え明るく笑顔を返した。
「残念だけど…仕方ない。次、会える時までお互い頑張ろう」鈴木が諭すように言うので早苗は頷くことしかできなかった。
画面越しに見つめ合う二人の間には、言葉では言い表せない寂しさ、そして「次」は一体いつになったらやってくるのだろうという漠然とした不安に襲われていた。
二人の笑顔の奥には哀しみと寂しさがひた隠しにされていた。
しかし、その不安や哀しみを口にしたら今堪えているものが崩れてしまいそうだった。
ダムが決壊するように止めどない不安や恐怖で押しつぶされてしまう。
そんな気がして、二人はお互いに希望のある言葉と言葉で紡ぎ、励ましあった。
いつものように、鈴木との旅行の計画を経てるためスマートフォンで検索をしていると速報の通知とWEBニュースが流れてきた。
「速報:新型の疫病が世界中で拡大。日本への入国制限強化へ」
早苗は思考停止した。その場から固まって動けなくなっていた。
スマートフォンに飛び込んできたのは、1件のニュース記事だった。
「海外で発生した新たな変異種が発見され、世界中に驚異的なスピードで感染勢力拡大中。日本政府は急遽、入国制限を強化することを決定」という内容で対象国には鈴木の滞在国も含まれていた。
早苗は頭が真っ白になった。目を疑い、ゆっくりと記事を何度も読み返したが「入国制限」と鈴木の滞在国が書いてあること以外は頭の中に入ってこない。
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鈴木は、一時帰国すらできなくなってしまうかもしれない。
動揺を隠せないまま鈴木にメールを送った。
「入国制限のニュース見た?」
「さっきニュースで見た。こっちでも騒ぎになってる」すぐに返信が来た。
短いやり取りだったが、お互いの動揺が伝わってくるようだった。
早苗は、いてもたってもいられず鈴木に電話をかけた。
「もしもし……鈴木?鈴木、大丈夫……?」
「ああ、おかげさまで。周りにはいないから問題ないけれど、ニュースは大々的に報道されているからパニック状態にはなっているかな。大丈夫だよ、まだ正式決定じゃないみたいだし状況を見守ろう」
鈴木は落ち着いた声で言った。
「でも……でも……もし……」
気が動転してそれ以上言えなかった。
「とりあえず今は待とう」早苗を落ち着かせるように穏やかな口調で鈴木は言った。
少しだけ落ち着きを取り戻したが、不安は拭いきれなかった。
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もし入国制限を止めて感染拡大した場合、批判を受けるのが怖い、責任を追わないために一度言ったらそのままなのではないか……悪い想像ばかりが頭の中を支配した。
その日から毎日ニュースをチェックするようになった。入国制限の情報はもちろん、感染状況や各国の対応などあらゆる情報を集めた。鈴木とも頻繁に連絡を取り合い情報を共有した。
数日後、政府から正式な発表があり入国制限は強化されることになった。
鈴木の一時帰国は、事実上不可能になった。
予想はしていたがひどく落胆した。鈴木に会える日が長引くことになった。
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「残念だけど…仕方ない。次、会える時までお互い頑張ろう」鈴木が諭すように言うので早苗は頷くことしかできなかった。
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二人の笑顔の奥には哀しみと寂しさがひた隠しにされていた。
しかし、その不安や哀しみを口にしたら今堪えているものが崩れてしまいそうだった。
ダムが決壊するように止めどない不安や恐怖で押しつぶされてしまう。
そんな気がして、二人はお互いに希望のある言葉と言葉で紡ぎ、励ましあった。
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