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学園編 17歳
66 心をこめて贈りましょう
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屋敷へと戻ったエリーナは湯あみをし、サリーたちによって全身を磨き上げられ、クリスが用意したドレスを身に纏う。淡い水色のドレスで、幾重にもチュールが重なり色の変化と大人っぽさを演出している。胸元はすっきりと開いており、アメジストのネックレスが光を返していた。
クリスには広間に入らないように言ってあるため、部屋まで迎えに行く。サリーと料理長からは準備ができていると伝えられていた。
気持ちを静めてからクリスの部屋をノックすると、正装に身を包んだクリスが出てきた。珍しく髪を撫でつけており、まじまじと見ると「サリーに遊ばれた」と返ってくる。
「大人っぽく見えるわ」
クリスは十分大人だが、髪型一つで雰囲気がだいぶ変わる。今日はビシッと決まっており、大人の色気が感じられるのだ。
「ありがとう。エリーも一段と美しいよ」
「うふふ、ありがとう」
広間までクリスと共に歩き、二人に気が付いた侍女が扉を開けた。今日は二人で、そして屋敷みんなでの夜会だ。毎年屋敷の使用人全員でクリスの誕生日を祝っている。
「わぁ……すごい」
思わずクリスの口から感嘆の声が漏れる。広間はパーティー会場に様変わりしていた。管弦楽の四重奏が流れ、料理は様々な国のものが並んでいる。ところどころ見たことのない料理があった。そして何より目を引くのは、壁にかかっている「お誕生日おめでとう」と書かれた布。
呆気に取られてそれに釘付けになっているクリスに、上手くいったとにんまりエリーナは笑った。
「あれはね、リズが教えてくれた誕生日を祝うものらしいわ。他にもいろいろ言ってたんだけど、再現できなくて」
他には紐を引いたら中身が飛び出すおもちゃや、ケーキの上にさす数字のろうそくなどがあったが、この世界では難しかった。
「エリー」
そう呼ぶクリスの表情は嬉しそうで、エリーナまで嬉しくなってくる。砂糖がとけたような甘くて幸せそうな笑みだ。
「すごく幸せだよ。ありがとう」
「うふふ、まだ早いわ。さぁ、みんな楽しむわよ!」
広間には使用人たちがおり、本邸で勤務している人たちも今日はこちらに来ている。エルディがクリスとエリーナを席まで案内し、ワインを注ぐ。そして楽しく温かなパーティーが始まった。
料理長が腕を振るった料理が運ばれ、使用人たちも盛られている料理を取り分けていく。今回の料理はリズからもレシピをもらっており、向こうの世界の料理がいくつかあった。唐揚げとハンバーグが一押しらしい。
二人は料理を食べながら話をし、使用人たちとも会話を弾ませる。向こうの料理は皆に好評で、ローゼンディアナ家のレシピに加えられた。
食事がひと段落すればダンスの曲が流れ始め、クリスはエリーナの手を取る。屋敷でも夜会でも何度もクリスと踊っている。流れるような息の合うダンスはいつも心地よい。誰よりも安心感があった。二人を見つめる使用人たちの目は温かく、幸福感に満たされていく。
「僕はローゼンディアナ家に来られて、本当によかったと思うよ」
踊りながらクリスはしみじみとそう呟いた。
「私もクリスがいてくれて嬉しいわ。クリスがいなかったら、きっと寂しくてつまらなかったもの」
本来なら、それがこのゲームのストーリーだった。
続いて二曲目、三曲目と踊っていく。クリスとエリーナは見つめ合い、微笑を浮かべる。出会った頃からの思い出を浮かべながら、優美な曲に包まれていった。
そして曲が終わったところで、サリーが小さな箱を持って近づいて来た。それを受け取って、照れ臭く思いながらクリスに差し出す。ちゃんとしたプレゼントはこれで二回目。
「お誕生日おめでとう、クリス。感謝の気持ちよ」
「……開けてもいい?」
「えぇ」
クリスは嬉しそうにそっとリボンを解いて箱を開ける。箱の中に入っていたのはブローチだった。小さめのブローチで、金の台座にはルビーとアメジストが埋まっており、その二つを囲むように細工が施されている。
「きれいな色だ」
クリスは目を細めて慎重にブローチを手に取った。台座の裏には今日の日付とローゼンディアナ家の紋章が入っている。細やかな気遣いに胸が締め付けられた。
「これは一生の宝物だよ。とてもつけられない」
「つけてくれないと、ブローチが泣くわよ」
それは困るなぁとクリスは苦笑し、タキシードの胸元につけた。彼の髪色とルビーが引き立て合ってよく似合っている。彼は本当に嬉しそうに相好を崩し、何度もお礼を口にする。その瞳は、少し潤んでいた。
「ありがとう、エリー。大好きだよ」
エリーナは照れ臭そうに笑って、「私もよ」と返すのだった。
そして最後はクリスが全員に感謝の気持ちを述べて、お開きになった。使用人たちはここからが本番の二次会なので、エリーナとクリスは自室に戻る。彼らもたまには息抜きが必要だ。
クリスは部屋に入るとネクタイを取り、静かに息を吐いて頬を緩ませた。心は弾んでおり、しばらくは余韻が残りそうだ。今日のパーティーはエリーナが色々と計画してくれたことが随所から伝わった。それが何よりもうれしい。
(僕は……エリーの特別になれるかな)
お酒が入っていることもあって、つい素直な心の声が漏れる。クリスはゆっくりとブローチを外し、しばらく眺めるとそっとアメジストに口づけた。
(いつか他の誰かを選んでも……今だけは自惚れていいよね)
そして、部屋の奥にある机の引き出しを開け、木箱を取り出した。片手で持てるぐらいの小さな箱だ。そのダイヤルを回して鍵を開け、ブローチを優しく置く。まるで子供の宝箱。ブローチの隣りには古い懐中時計と小さな金の指輪が入っていた。
それらを一つずつ大切そうに指で撫で、蓋を閉じて鍵をかける。
(大切な日まで、おやすみ)
箱を引き出しに戻し、静かに引き出しを閉める。誰も知らないクリスの宝箱。大事な大事な秘密の箱だった……。
クリスには広間に入らないように言ってあるため、部屋まで迎えに行く。サリーと料理長からは準備ができていると伝えられていた。
気持ちを静めてからクリスの部屋をノックすると、正装に身を包んだクリスが出てきた。珍しく髪を撫でつけており、まじまじと見ると「サリーに遊ばれた」と返ってくる。
「大人っぽく見えるわ」
クリスは十分大人だが、髪型一つで雰囲気がだいぶ変わる。今日はビシッと決まっており、大人の色気が感じられるのだ。
「ありがとう。エリーも一段と美しいよ」
「うふふ、ありがとう」
広間までクリスと共に歩き、二人に気が付いた侍女が扉を開けた。今日は二人で、そして屋敷みんなでの夜会だ。毎年屋敷の使用人全員でクリスの誕生日を祝っている。
「わぁ……すごい」
思わずクリスの口から感嘆の声が漏れる。広間はパーティー会場に様変わりしていた。管弦楽の四重奏が流れ、料理は様々な国のものが並んでいる。ところどころ見たことのない料理があった。そして何より目を引くのは、壁にかかっている「お誕生日おめでとう」と書かれた布。
呆気に取られてそれに釘付けになっているクリスに、上手くいったとにんまりエリーナは笑った。
「あれはね、リズが教えてくれた誕生日を祝うものらしいわ。他にもいろいろ言ってたんだけど、再現できなくて」
他には紐を引いたら中身が飛び出すおもちゃや、ケーキの上にさす数字のろうそくなどがあったが、この世界では難しかった。
「エリー」
そう呼ぶクリスの表情は嬉しそうで、エリーナまで嬉しくなってくる。砂糖がとけたような甘くて幸せそうな笑みだ。
「すごく幸せだよ。ありがとう」
「うふふ、まだ早いわ。さぁ、みんな楽しむわよ!」
広間には使用人たちがおり、本邸で勤務している人たちも今日はこちらに来ている。エルディがクリスとエリーナを席まで案内し、ワインを注ぐ。そして楽しく温かなパーティーが始まった。
料理長が腕を振るった料理が運ばれ、使用人たちも盛られている料理を取り分けていく。今回の料理はリズからもレシピをもらっており、向こうの世界の料理がいくつかあった。唐揚げとハンバーグが一押しらしい。
二人は料理を食べながら話をし、使用人たちとも会話を弾ませる。向こうの料理は皆に好評で、ローゼンディアナ家のレシピに加えられた。
食事がひと段落すればダンスの曲が流れ始め、クリスはエリーナの手を取る。屋敷でも夜会でも何度もクリスと踊っている。流れるような息の合うダンスはいつも心地よい。誰よりも安心感があった。二人を見つめる使用人たちの目は温かく、幸福感に満たされていく。
「僕はローゼンディアナ家に来られて、本当によかったと思うよ」
踊りながらクリスはしみじみとそう呟いた。
「私もクリスがいてくれて嬉しいわ。クリスがいなかったら、きっと寂しくてつまらなかったもの」
本来なら、それがこのゲームのストーリーだった。
続いて二曲目、三曲目と踊っていく。クリスとエリーナは見つめ合い、微笑を浮かべる。出会った頃からの思い出を浮かべながら、優美な曲に包まれていった。
そして曲が終わったところで、サリーが小さな箱を持って近づいて来た。それを受け取って、照れ臭く思いながらクリスに差し出す。ちゃんとしたプレゼントはこれで二回目。
「お誕生日おめでとう、クリス。感謝の気持ちよ」
「……開けてもいい?」
「えぇ」
クリスは嬉しそうにそっとリボンを解いて箱を開ける。箱の中に入っていたのはブローチだった。小さめのブローチで、金の台座にはルビーとアメジストが埋まっており、その二つを囲むように細工が施されている。
「きれいな色だ」
クリスは目を細めて慎重にブローチを手に取った。台座の裏には今日の日付とローゼンディアナ家の紋章が入っている。細やかな気遣いに胸が締め付けられた。
「これは一生の宝物だよ。とてもつけられない」
「つけてくれないと、ブローチが泣くわよ」
それは困るなぁとクリスは苦笑し、タキシードの胸元につけた。彼の髪色とルビーが引き立て合ってよく似合っている。彼は本当に嬉しそうに相好を崩し、何度もお礼を口にする。その瞳は、少し潤んでいた。
「ありがとう、エリー。大好きだよ」
エリーナは照れ臭そうに笑って、「私もよ」と返すのだった。
そして最後はクリスが全員に感謝の気持ちを述べて、お開きになった。使用人たちはここからが本番の二次会なので、エリーナとクリスは自室に戻る。彼らもたまには息抜きが必要だ。
クリスは部屋に入るとネクタイを取り、静かに息を吐いて頬を緩ませた。心は弾んでおり、しばらくは余韻が残りそうだ。今日のパーティーはエリーナが色々と計画してくれたことが随所から伝わった。それが何よりもうれしい。
(僕は……エリーの特別になれるかな)
お酒が入っていることもあって、つい素直な心の声が漏れる。クリスはゆっくりとブローチを外し、しばらく眺めるとそっとアメジストに口づけた。
(いつか他の誰かを選んでも……今だけは自惚れていいよね)
そして、部屋の奥にある机の引き出しを開け、木箱を取り出した。片手で持てるぐらいの小さな箱だ。そのダイヤルを回して鍵を開け、ブローチを優しく置く。まるで子供の宝箱。ブローチの隣りには古い懐中時計と小さな金の指輪が入っていた。
それらを一つずつ大切そうに指で撫で、蓋を閉じて鍵をかける。
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