【本編完結】白永くんはいっぱい食べたい ~転生したら食事の神だったので、すべて美味しくいただきます!~

縁代まと

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番外編章

【番外編】結婚式は秋風の中 中編

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 この世界の教会は食事の神を主神としていることが多い。
 だから結婚式で使用することは稀だそうだ。

 結婚後も末永く同じ食卓を囲めますように、という祈りを込めて教会で式を挙げるパターンはあるそうだが、俺も「自分にそれを祈るのか……?」みたいな不思議な気持ちになるので、今回は屋外で行なうことにした。
 ちなみに結婚式は結構地域の特色が出るそうで、俺たちが選んだのはテーブリア村でよく行なわれる形式だ。

 まず会場には初めから新郎新婦が待機しておく。
 そこへ参列者が順番にやってきて、ふたりが持っているバスケットにひとつひとつ食べ物を入れていくそうだ。
 この時に入れるのは小さなものが推奨されているが、一抱えあるホールケーキを入れられても俺は受け取るぞ。確実に。むしろ大きさの制限なんてなくてもいい。
 ただそうすると重くてコムギが苦労するかもしれないので我慢した。

 その後に村から選出された代表者がいわゆる誓いの言葉のくだりを言う。
 代表者はべつに村長ではなくて、みんなの話し合いで決められた人や新郎新婦が選んだ人になるらしい。仲人がそのまま神父役をする感じかな?

 ただし新郎新婦の家族は担当できないので、今回は村でのフードファイトで何度もお世話になった審判のラクタに頼むことにしたんだが――ここでトラブルがあった。
 式の直前に控室に駆け込んできた男性が慌てた様子で説明をする。

「む、娘さんが産気付いて来れない!?」
「はい、折角の大役だというのに申し訳ありません! 罰は代わりに弟の私がいくらでも受けます……!」
「あ、いやいや、むしろそっちを優先してくれて良かった。こっちは問題ないから娘さんの傍にいてやってくれって伝えてもらえるか?」

 俺がそう言うとラクタの弟は涙目で頷くと頭を下げて去っていった。
 彼にもやるべきことが多いんだろう。
 しかしどうしようか、とコムギと次の代表者候補について話し合う。代役を買って出てくれる人は多そうだし、なんなら同じく審判のアミラゼに頼んでもいい。

 だがこれだけ急だと段取りなどの話し合いをしているだけで式の時間がずれ込みそうだ。
 悩んでいると――唐突に出入り口から「おい!」と声がかかった。
 もしかしてフライデルやタージュたちが手伝ってくれるんだろうか。でも参列者には見守っててほしいんだよな、と思いながらそちらへ目をやる。

 ドアにもたれかかる形で立っていたのは、赤色の髪をした男性と桃色の髪をした男性の二人組だった。

「誰だ!?」
「誰ですか!?」

 コムギと一緒に思わず素直なツッコミを入れてしまう。マジで誰だ。
 それを察したのかふたりが同時に口を開く。

「俺は愛の神ビスト!」
「そして僕は恋の神バル!」

 愛の神と恋の神。
 その二柱には直接会ったことはないが、王都レイザァゴの愛恋祭《あいれんさい》で幾度となく名前を耳にしていた。
 どうやら赤い髪のほうがビストらしい。ハート形の耳飾りを付けており、細く長い三つ編みを何本も垂らしている。人間でいうなら二十代中頃に見えた。

 バルは桃色の髪のほうで、襟首を刈り上げた短髪をしている。
 前髪は切り揃えており、ファッションなのか薄いピンク色のレンズが嵌ったサングラスを下にズラしてかけていた。眼鏡の神に作ってもらったのかもしれない。

 たしか今はその祭りができた頃の二柱から世代交代していて、親友同士だから祭りがちょっと気まずいんだったっけ……?

 そう思い返しているとビストが「一度は会っておきたいと思ったんだよ」と話を続けた。

「天界じゃ最後まで日和見組だったからな、今も食通同盟に参加はしてるが積極的には関わってないし」
「それに食事の神と旧食事の神の巫女のカップルは天界でも有名だった」
「あ、あはは、改めてそう言われると照れ――」
「そのせいで天界でも愛恋祭の存在が広がってしまった!!」

 愛恋祭の際中に俺がコムギにプロポーズしたことでその名が知れ渡ったらしい。
 祭りを先代の黒歴史扱いしているふたりにとってはなかなかにキツかったんじゃないだろうか。
 だからお礼参りに来たとか? っと問い掛けて身構えているとバルが「まあキツかったですけどッ!」と力強い前置きをして言った。

「だから物申そうとわざわざ降りてきたんです、あと祝いの品も渡したかったですし! でも結婚式という晴れ舞台でこんなトラブルに見舞われているのを見たら――頭を突っ込むしかないでしょう!?」
「真面目で律儀で良い人だ!」

 思ったより恨まれてなくて良かった。
 そしてふたりはこの事態をなんとかしてくれようとしているらしい。

 ビストとバルは同時にドンッと自分の胸を叩いた。

「式に代表者が必要ならば、俺たちがその役割りを担ってやろう!」
「二柱だけれど気にしなくていいですよ、愛の神と恋の神なら申し分ないでしょうし例外も通るでしょう!」
「わ、わ、頼もしいですねシロさん! 是非お願いしましょう!」

 ソワソワわくわくしているコムギに反対する理由はないな。

 お礼を伝えてビストとバルに頼むと、ふたりは「なら我々が準備に移る前にこれを渡しておこう」と箱を差し出した。
 ハートマークだらけの箱だ。
 これがふたりの趣味なのか神としての特性かなにかなのかちょっと気になるところだな……。

「これはさっき言ってた祝いの品か?」
「ああ、パートナー同士がそれぞれの片耳に付ける耳飾りが入っている。先約がなければ式で付けるといい」
「我々の手作りですよ!」

 それはご利益がありそうだ。
 蓋を開けると中に収まっていたのは赤い石が付いた耳飾りだった。この赤い石はそれぞれの心臓を表している、とビストが説明してくれる。

 そして赤い石の上には小さな石も付いていた。
 片方が緑、もう片方が青色だ。

「これは互いの目の色です。いつも傍で見守っていることを表すものですね」
「ということは俺が青い方を付けるんだな」

 それはどうやらコムギの感性に刺さったらしく、口元を手で隠しながらキラキラとした視線を送っている。にやけてるのかもしれない。
 衣装に着替えるのはこの後だが、その時に外すにせよ付けたまま準備するにせよ俺が最初にコムギの耳に付けたいなと不意に思った。

 村式の結婚式では指輪交換はしないが、俺は自分の故郷のしきたりとして指輪を用意させてもらっている。その前にひとつ増えても問題ないだろう。

「コムギの耳に付けてもいいか?」
「!? もっ、もちろんです」

 コムギがそう何度も頷く。
 それじゃ付けれないぞ、と笑うとピタッと止まった。やっぱり可愛い。
 コムギの左耳に触れると赤くなっているせいか熱かった。耳飾りはイヤリング式だが、なるべく痛くないように慎重に付ける。

 ――うん、大事な存在の間近に自分の色があるっていうのは想像以上に良い。

「ほら、コムギも俺に付けてくれ」
「いいんですか? ……ふふ、私からも付けてあげたいなって思ってたんです」

 嬉しそうに手を伸ばし、コムギも俺の右耳に耳飾りを付けてくれた。
 普段あまりこういうものは付けないから違和感があるが、その違和感が溶けて消えるくらいずっと付けておきたいな。

 すると俺たちの様子を眺めていたビストとバルが満足げに笑った。

「思わずここで式を執り行うところだったぞ!」

 本番が楽しみだ、とビストはにこやかに言って親指を立てる。
 愛の神と恋の神のお墨付きを貰えたんだ。きっと良い式になるだろう。

 そんな想いを込めて隣を見ると、コムギが俺の色と共に目を細めて微笑んだ。
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