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第四章 魔導都市の尋ね人
第64話 次なる目的地は魔導都市エルムヘルム!
エルムヘルムはユノミチから見るとオーシャスよりも遠くにあるそうで、転移ポータルをふたつ経由する必要があるそうだ。電車を乗り継ぐ感じだろうか。
そのため今回も準備はしっかりしていこうということになったが、さすがに冬場は動きにくい。そのため秋に出発することに決まった。
秋、そしてレモンの産地。
つまり遠征先でついにレモンを手に入れられるかもしれない。
そう考えると大変わくわくした。あれからオーシャスのココナッツからココナッツミルク、更にはそこからココナッツオイルを作ったが新しい食材が手に入るのはやはり嬉しい。
なんだか圧搾ばかりしている気がするけれども!
ちなみにココナッツシュガーは時期を逃したが、花蜜を取れる季節になれば作ることができそうだ。甘いものは貴重なので期待している。
そんな様々な期待を胸にユノミチを出発した私はふたつ目の転移ポータルから出ると同時にグッとこぶしを握った。
「――よし、ひとつ目もふたつ目も正常で良かった!」
転移にもかなり慣れてきた気がする。
初めは立っているのもままならなかったが、今では……、……壁に手をついて深呼吸を五回ほど繰り返したら回復の兆しが見える。
ハムステアはまだ転移が終わるなりぺっちゃんこになってるが。
「毎回大変ですね……」
「まだ憐れまれるくらいなのか……精進する……」
精進でどうにかなるのか疑問だという顔をしながらアスカニヒトは転移ポータル施設の出入り口を見遣った。ここも様々な理由で使われることが多かったそうで周りは綺麗に整備されている。
転移ポータルが洞窟の中にあったところはアレも観光スポットの一部だった可能性が出てきたな……。意外と商魂逞しい国民性のようだったから。
「エルムヘルムは施設を出てすぐのところにあります。レモンを栽培していた場所はここから見るとエルムヘルムを跨いだ先にあったと思いますが……どちらから先に調べますか?」
「レモンは気になって仕方ないが、まずは街から調べようか。魔導都市っていう響きも気になるしな、かっこいい!」
そうですかね、と呟きつつアスカニヒトは「案内します」と歩き始めた。
施設を出てしばらく進んだ先にあったのは奇妙な建造物の崩れた跡地だった。
形は小さめの塔っぽいが屋根だけ高いところから落としたようにめり込んで壊れている。屋根だけ崩れたにしても不思議な状態だ。
「さすがにこれは崩れましたか」
「アスカニヒトは元の建物を知ってるのか。これは何がどうなったんだ?」
「元は浮遊魔石で屋根を浮かせていたんですよ」
わざわざ!? と驚くとアスカニヒトは否定することなく頷いた。
「用途は物見やぐらのような感じでしたかね……コスパは悪いし浮かせる必要はまったくなかったんですが、技術を見せるのが目的の建物だったと言えばわかりやすいでしょうか」
「ああ……こんなことをできる技術がエルムヘルムにはあるんだぞ、ってアピールになるわけか。考えられてるな」
「街中はもっと凄かったですよ、光る壁や動く道なんかがありました」
この様子じゃ壊れているでしょうけどね、とアスカニヒトは肩を竦める。
それは残念だ、聞いた感じじゃ故郷の都会に似た雰囲気をしていそうだったのに。
まぁもしかすると残っているところがあるかもしれないし、アズサのいた大図書館っていう前例もあるんだから諦めるには早いな!
ひとまずエルムヘルムではレンズの加工をできそうなものや質の良い魔石がないか探してみよう。もちろん人間の生き残りの有無も引き続きチェックするぞ。
意気揚々と進んでいるといくつか同じ壊れ方をしている建物を横切った後に長いモンスター避けの壁が見え、その内側に大都市――の廃墟が広がっていた。
さっきの塔みたいに無理な構造の建物が多かったんだろうか。
これまで見てきたどの都市より荒れ果てて見えた。こんな弊害があるなんて住んでた人は思いもしないくらい発展してたんだろうな、という面影はある。
「これは……なかなかに酷いですね……」
「ほとんどの建物に魔法や魔石を使ってたみたいだな。――でもアズサは壊れそうになりつつも稼働してただろう、なのに魔導の最先端みたいな都市がこうなるのっておかしくないか?」
「疑問はあります」
頷いたアスカニヒトは警戒するように辺りを見たが、視界に入る範囲では特におかしいものはなかった。
「とりあえず今回も最初に【サーチ】をしませんか」
「そうだな。ただ……ここはかなり広いから、念のため前みたいに三ヶ所からやってみよう。跳びながらいくからナギハラたちは私とアスカニヒトにくっついてくれ」
『ぷ!』
『ニャンニャ!』
『わかりましたわ!』
私にナギハラとハムステアが、アスカニヒトにアズサがくっつく。
ただしアズサは触手機構を巻き付けているのでアスカニヒトが触手に捕まった人みたいになっていた。どう見えるのか本人は気づいてなさそうなのが救いだな……。
そうして三ヶ所から念入りに【サーチ】をかけた結果――生き物らしき反応はどこにもないということがわかった。
残念な気持ちが湧き上がるものの【サーチ】は生き物の有無しかわからないので今回も落ち込む前に自分の目で確かめに行くことにしよう。
アスカニヒトの結界のようなものがあれば近づけば気づけるかもしれないしな。
そんな想いを胸に、私は改めて荒廃したエルムヘルムに足を踏み入れたのだった。
――気になる痕跡を見つけたのは、ちょうどその一時間後のことである。
そのため今回も準備はしっかりしていこうということになったが、さすがに冬場は動きにくい。そのため秋に出発することに決まった。
秋、そしてレモンの産地。
つまり遠征先でついにレモンを手に入れられるかもしれない。
そう考えると大変わくわくした。あれからオーシャスのココナッツからココナッツミルク、更にはそこからココナッツオイルを作ったが新しい食材が手に入るのはやはり嬉しい。
なんだか圧搾ばかりしている気がするけれども!
ちなみにココナッツシュガーは時期を逃したが、花蜜を取れる季節になれば作ることができそうだ。甘いものは貴重なので期待している。
そんな様々な期待を胸にユノミチを出発した私はふたつ目の転移ポータルから出ると同時にグッとこぶしを握った。
「――よし、ひとつ目もふたつ目も正常で良かった!」
転移にもかなり慣れてきた気がする。
初めは立っているのもままならなかったが、今では……、……壁に手をついて深呼吸を五回ほど繰り返したら回復の兆しが見える。
ハムステアはまだ転移が終わるなりぺっちゃんこになってるが。
「毎回大変ですね……」
「まだ憐れまれるくらいなのか……精進する……」
精進でどうにかなるのか疑問だという顔をしながらアスカニヒトは転移ポータル施設の出入り口を見遣った。ここも様々な理由で使われることが多かったそうで周りは綺麗に整備されている。
転移ポータルが洞窟の中にあったところはアレも観光スポットの一部だった可能性が出てきたな……。意外と商魂逞しい国民性のようだったから。
「エルムヘルムは施設を出てすぐのところにあります。レモンを栽培していた場所はここから見るとエルムヘルムを跨いだ先にあったと思いますが……どちらから先に調べますか?」
「レモンは気になって仕方ないが、まずは街から調べようか。魔導都市っていう響きも気になるしな、かっこいい!」
そうですかね、と呟きつつアスカニヒトは「案内します」と歩き始めた。
施設を出てしばらく進んだ先にあったのは奇妙な建造物の崩れた跡地だった。
形は小さめの塔っぽいが屋根だけ高いところから落としたようにめり込んで壊れている。屋根だけ崩れたにしても不思議な状態だ。
「さすがにこれは崩れましたか」
「アスカニヒトは元の建物を知ってるのか。これは何がどうなったんだ?」
「元は浮遊魔石で屋根を浮かせていたんですよ」
わざわざ!? と驚くとアスカニヒトは否定することなく頷いた。
「用途は物見やぐらのような感じでしたかね……コスパは悪いし浮かせる必要はまったくなかったんですが、技術を見せるのが目的の建物だったと言えばわかりやすいでしょうか」
「ああ……こんなことをできる技術がエルムヘルムにはあるんだぞ、ってアピールになるわけか。考えられてるな」
「街中はもっと凄かったですよ、光る壁や動く道なんかがありました」
この様子じゃ壊れているでしょうけどね、とアスカニヒトは肩を竦める。
それは残念だ、聞いた感じじゃ故郷の都会に似た雰囲気をしていそうだったのに。
まぁもしかすると残っているところがあるかもしれないし、アズサのいた大図書館っていう前例もあるんだから諦めるには早いな!
ひとまずエルムヘルムではレンズの加工をできそうなものや質の良い魔石がないか探してみよう。もちろん人間の生き残りの有無も引き続きチェックするぞ。
意気揚々と進んでいるといくつか同じ壊れ方をしている建物を横切った後に長いモンスター避けの壁が見え、その内側に大都市――の廃墟が広がっていた。
さっきの塔みたいに無理な構造の建物が多かったんだろうか。
これまで見てきたどの都市より荒れ果てて見えた。こんな弊害があるなんて住んでた人は思いもしないくらい発展してたんだろうな、という面影はある。
「これは……なかなかに酷いですね……」
「ほとんどの建物に魔法や魔石を使ってたみたいだな。――でもアズサは壊れそうになりつつも稼働してただろう、なのに魔導の最先端みたいな都市がこうなるのっておかしくないか?」
「疑問はあります」
頷いたアスカニヒトは警戒するように辺りを見たが、視界に入る範囲では特におかしいものはなかった。
「とりあえず今回も最初に【サーチ】をしませんか」
「そうだな。ただ……ここはかなり広いから、念のため前みたいに三ヶ所からやってみよう。跳びながらいくからナギハラたちは私とアスカニヒトにくっついてくれ」
『ぷ!』
『ニャンニャ!』
『わかりましたわ!』
私にナギハラとハムステアが、アスカニヒトにアズサがくっつく。
ただしアズサは触手機構を巻き付けているのでアスカニヒトが触手に捕まった人みたいになっていた。どう見えるのか本人は気づいてなさそうなのが救いだな……。
そうして三ヶ所から念入りに【サーチ】をかけた結果――生き物らしき反応はどこにもないということがわかった。
残念な気持ちが湧き上がるものの【サーチ】は生き物の有無しかわからないので今回も落ち込む前に自分の目で確かめに行くことにしよう。
アスカニヒトの結界のようなものがあれば近づけば気づけるかもしれないしな。
そんな想いを胸に、私は改めて荒廃したエルムヘルムに足を踏み入れたのだった。
――気になる痕跡を見つけたのは、ちょうどその一時間後のことである。
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