地味系秘書と氷の副社長は今日も仲良くバトルしてます!

楓乃めーぷる

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第三章 自分のこと、これからのこと

42.話した結果は

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 少しの沈黙の後に、社長が口を開いた。

「ことりちゃんは……俺と正式に家族になるのは嫌?」
「それは……いきなりそう言われても、困ります」

 私の言葉に社長は悲しそうにしていたけど、結局私の意思を尊重すると言ってくれた。
 傍らの氷室さんは相変わらず難しい顔をしていたけど、急に口を開く。

「小鳥さんはそれでいいのか? 君は家族を……」

 氷室さんは口を噤む。
 きっと、家族を欲しているんじゃないかって言いたかったのかな。

 私は本当の家族がどんなものかは知らないけど、いきなり橘コーポレーションの会長の娘だとか言われても、実感も湧かないし。
 はいそうですか、って喜べるような家庭環境ではないのも身に沁みて分かる。

 だって、変な話。
 お金持ちの人と言えば……。
 遺産をどうするか? みたいなドラマで殺人事件にまで発展しちゃうし。
 それがフィクションだとしても、この前のパーティーでも別次元だなあって思ったばかりなんだから。

 そこに介入しろと言われても、本当に困る。
 しかも、会長の隠し子……ってことになるのかな。
 遺産目当てで社長に近づいたとか言われたらどうしよう……。

「父さんには、だから婚約者と認めるわけには行かないって言われた。まあ、それはそうだよね」

 異母姉弟となれば、常識的に考えて無理だものね。
 私と社長も知らなかったのだから、本当にたまたまだったけど。
 こんな機会じゃなければ、私は一生知ろうとも思わなかったかもしれない。

「元々婚約者になって欲しいって頼んだのも、じいちゃんとか含めた色々うるさい人達を黙らせるつもりだったから」
「そう、なんですか?」
「ああ。海音には別にやりたいことがあって、そこから目を逸らすためと、後は色々と婚約者を提案してこられるのが鬱陶しいという理由だ。本当に巻き込んですまない」

 氷室さんが何故か謝ってくるので、顔の前で何度も手を振る。

「なるほど。確かに毎回お見合いさせられたら大変そうですし。社長には社長のやりたいことがあったんですね」
「うん。それについてはまだ言えないけど……この件がきちんと落ち着いたら、話すよ」

 社長のやりたいことは分からないけど、ここまで来たらそれが何なのか知りたい。
 それまで私が秘書としていられるかも、分からないけど……。

「もう少し、考える時間をください。きっと社長のご家族も困惑されているでしょうし」
「それは……まあ、うん。俺も何か不思議な感じ。でも、嫌じゃないっていうか。ことりちゃんのほうが年上だからお姉ちゃんかって思ってさ。それにそもそも、朱音ねぇは母さんの連れ子だし」

 さらっと凄いことを言われているんだけど。
 色々複雑な事情があるんだろうけど、私、そこに入り込むのはやっぱり尻込みしちゃうな。

 そういえば、学年的には変わらないけど年齢的には社長の方が年下になるんだっけ。
 家系図を書いてもらわないと、何が何だか分からなくなっちゃいそう……。
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