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バレンタイン小話2 溺愛攻めくんと無自覚受けくん
しおりを挟む今年もアイツにチョコレートを忍ばせる日がやってきた!
人の熱視線に全く気づかないアイツを悪い虫から守り続けて早十数年。
幼稚園から高校まで、一途な想いを秘めてきた。
俺は、幼なじみのアイツが大好きだ。
アイツはぶっきらぼうだし、人当たりがいい方じゃないけどそれがクールだなんて言う女子もいた。
そんな話を聞いたらすぐに他のヤツを紹介して、ターゲットから外したりしてたなんてアイツは知らないだろうな。
「アイツは誰にも渡さない。例えオレに気がなかったとしても! アイツの隣はオレだけのものだ」
呪文のように唱えて、リュックに忍ばせたチョコレートをそっと取り出した。
教室には誰もいない。
アイツは図書委員で、今は先生の頼まれ事をしているのは把握済だ。
「後は机の中に忍ばせておけば、任務完了っと」
今日は机の中身を持ち帰る日だもんな。
それに、毎年誰かが自分好みなチョコレートをくれるって喜んでたし。
いくら無自覚だとしても、今年もチョコレートの存在は気になってるはずだ。
例年通りに忍ばせようと中を覗くと――
「え、なんで?」
まさかの先客? 机の中にはチョコレートらしきラッピングされた箱が入っていた。
こんなこと今までなかったのに……。
今年だってアイツが目立たないように必死に立ち回ったし、常にアイツの側でアンテナを張り巡らせてたんだ。
だから、オレが悪い虫に気付かないはずはないのに!
「先を越されるなんて……ありえない」
ショックで真っ白になってしまった。
その場に立ち尽くしていると、アイツが教室に戻ってきた。
今日も、ツンとした髪と無愛想な顔でとっつきにくそうだが笑うとめちゃくちゃ可愛いことを知っている。
「あれ、まだ帰ってなかったのか」
「あ、ああ。オレも用事を済ませてたから。そろそろ帰ってくるんじゃないかなーと思って」
話しながら慌てて手に持ったままのチョコレートの箱をリュックへとしまい込む。
オレのことはあまり気にせず、スタスタと歩いて机に近づいてきた。
先客は一体誰だったのか知らないが、オレのチョコレートは渡せないと思うと内心悔しさでいっぱいになる。
だが、仕方ない。
オレは何も知らない顔で、幼なじみを見守った。
「そうだ。お前がいるならちょうど良かった」
「ちょうど良かったって何が?」
「ほら、コレ。いつも俺だけもらってたから。今年は俺も買ってみた」
「は……? これ、もらったチョコレートだろ?」
オレに何故か机の中に入っていたチョコレートを差し出してきたから、両手をあげて遠慮する。
先を越されていたことはショックだけど、誰かの想いが詰まったチョコレートを横流しされる訳にはいかない。
「いや、話聞いてた? 俺が買ったチョコレート」
「買った? お前が?」
「だって、今までずっとチョコレートくれてただろ?」
「誰が、何を?」
オレは話に全くついていけなくてポカンとしていた。
だが、目の前のコイツが違うのか? と、しきりに首を捻っているのを見て漸くオレが用意していたことがバレたんだと理解できた。
「どうしてオレが渡していると思ったんだ?」
「最初は誰がくれたのか分かんなかったけどさ。毎回俺が好きな味で、食べ切れる量だなって気付いて」
「気付いたのはいつ?」
「去年くらいから、なんとなく」
あぁ……そうか。
コイツが好きすぎて、好みに合わせすぎていたんだ。
だから、無自覚でも自覚できたって訳か。
「あまりにも自然すぎたから、気付かなくてごめん。今までの分もありがとな」
「いや、それはいいんだけど。オレにくれるのはなんで?」
「ホワイトデーでもいいかなと思ったけど、俺からもちゃんも伝えるべきかと思って」
「伝えるって何をだよ」
意味深なことを言われたら、心臓がバクバクするだろ。
期待せずに、素知らぬ顔ができてればいいんだけどな。
さすがに手に変な汗をかいてきた。
「いつもありがとな。俺のことをずっと見守ってくれて。オレもお前みたいにカッコよくなりたいから、これからも側にいてくれ」
「カッコイイか。そうか。なら良かった。嫌って言っても側にいるからな……幼なじみとして」
付け加えておかないと、勘違いしそうだからな。
完璧な笑顔でチョコレートを受け取ったのに、なんか不満そうな顔をしてるな。
「なんだよ、どうした」
「おい、俺の言ったこと流すなよ。側にいてくれって言っただろ」
「ああ。だから側に……」
「お前はホント人の話を聞かないな。俺もやっと気付いたんだよ。俺の隣にいるのはお前しかありえないって」
「……マジで? オレと同じ意味で?」
確認すると、赤い顔をして頷いてきた。
うわ、無自覚が自覚した瞬間! 録画したい!
「これだから……オレの幼なじみは最高!」
「バ、バカ! 教室でハグすんなって!」
両想いになれるとは欠片も思ってなかった。
このあと幸せをハグで堪能してから、オレのチョコレートも無事渡すことができた。
帰り道、仲良く手を繋ぎながらこれからはもっと分かりやすく想いを伝えようと決心した。
隣で恥ずかしそうに笑う幼なじみは、今日オレの恋人になった。
おしまい🍫✨
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