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バレンタイン小話1 人気者の彼と地味な僕
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今、壇上で話している彼は校内でも一、二を争う人気者だ。
学力トップ、スポーツ万能、ルックス抜群、ついでに実家はお金持ちのお坊ちゃま。
生徒会長も務める彼は、一般市民でモブキャラに過ぎない僕にとっては眩しすぎる存在だ。
当然バレンタインとなれば、チョコの量も恐ろしい数になる。
去年の僕と言えば、そんな彼を遠巻きに見て驚く一人に過ぎなかったのだけれど……。
「なあ、俺と付き合ってよ」
「へ?」
この一言で何故か彼とのお付き合いが決まってしまったのだ。
未だに何で僕が選ばれたのか、さっぱり分からない。
何かの間違いだと思っていたけれど、彼の真剣な瞳に捉えられてしまった僕は放心状態で頷いてしまった。
ただ、僕はどうしても現実を受け入れることができなくて他の人にこのことを知られたくないと必死に頼み込んだ。
「どうしてそんなに隠そうとする? 一つも恥ずかしいことはないのだから、堂々と公表すればいい」
「できる訳ないよ、そんなこと。君が僕と付き合っているだなんて学内で噂にでもなったら……僕はここにいられない」
彼には伝わりづらかったみたいだけど、僕が涙目で必死に頼んだせいか分かったと受け入れてくれた。
こうして僕たちは密かにお付き合いを続けてきたんだけど、ついに恋人になってから初めてのバレンタインが近づいてきた。
彼は僕からのチョコレートを楽しみにしていると言っていたけれど、いつも大勢の人に囲まれている彼にどうやって僕みたいな地味系男子がチョコレートを渡せるのだろう?
「無理、絶対無理」
勇気を振り絞って彼のいる生徒会室までは来たけれど、あと一歩がどうしても踏み出せない。
ドアの隙間からそっと覗くと、彼は同じ生徒会の学内の女性の中で一番人気の美人の才女にチョコレートをもらっているところだった。
「あ……」
どうみても二人は釣り合っていて、素敵なカップルだった。
僕は見ているのも辛くなって、その場から逃げ出してしまった。
彼女が渡していたチョコレートを見てから、胸の奥がジクジクと痛む。
こんな気持ちになる権利もないはずなのに、僕は自分勝手だ。
誰にも会いたくなくて、靴を履き替え外に飛び出した。
「……何やってるんだろう。男からチョコレートだなんて、気持ち悪いに決まってるのに」
僕は手作りのチョコレートを初めて作って、彼に渡そうとしていた。
僕には美味しい高級チョコレートを買いに行く勇気もなかったし、手作りだったらいいかなと軽く考えてしまった。
チョコレートの入った紙袋を抱えたまま、校庭の木の陰に隠れていると見つけた、という声が聞こえてきた。
「やっぱり、ここにいたか」
「え、え? なんで……」
「なんで? じゃないだろう。どうして逃げ出した」
「それは……」
彼の顔を見ていたら気が抜けて、ポロポロと涙があふれてきた。
「どうしたんだ? ほら、泣くな」
「うぅっ……ごめん。君はやっぱり……釣り合う相手と付き合うべきだよ。僕なんかじゃなくって……」
「どういう意味だ?」
「だから、あの生徒会の彼女にチョコレートを……」
そこまで言うと、彼は急に僕のことをぎゅっと抱きしめてきた。
「ふぇっ?」
「あぁ……そうか。やっと俺に興味を持ってくれたのか。そんなに泣く程、嫉妬してくれたんだろう?」
「嫉妬?」
「そうだ。お前を悲しませてしまったのは申し訳なかったが、それ以上に嬉しくて堪らないんだ」
彼はぎゅうぎゅうと僕を抱きしめて離してくれない。
僕が呆気にとられてると、彼は彼女が生徒会のみんなに義理チョコを配っていたのだと教えてくれた。
「だから、心配することはない。俺が欲しいのはお前からのチョコレートだけだから」
「~~っ! じゃあ、勝手に勘違いして……しかも嫉妬してただなんて……」
僕は恥ずかしくてどうにかなりそうだったけど、もう少しこのままでいたくて彼に甘えるように身体をあずけた。
学力トップ、スポーツ万能、ルックス抜群、ついでに実家はお金持ちのお坊ちゃま。
生徒会長も務める彼は、一般市民でモブキャラに過ぎない僕にとっては眩しすぎる存在だ。
当然バレンタインとなれば、チョコの量も恐ろしい数になる。
去年の僕と言えば、そんな彼を遠巻きに見て驚く一人に過ぎなかったのだけれど……。
「なあ、俺と付き合ってよ」
「へ?」
この一言で何故か彼とのお付き合いが決まってしまったのだ。
未だに何で僕が選ばれたのか、さっぱり分からない。
何かの間違いだと思っていたけれど、彼の真剣な瞳に捉えられてしまった僕は放心状態で頷いてしまった。
ただ、僕はどうしても現実を受け入れることができなくて他の人にこのことを知られたくないと必死に頼み込んだ。
「どうしてそんなに隠そうとする? 一つも恥ずかしいことはないのだから、堂々と公表すればいい」
「できる訳ないよ、そんなこと。君が僕と付き合っているだなんて学内で噂にでもなったら……僕はここにいられない」
彼には伝わりづらかったみたいだけど、僕が涙目で必死に頼んだせいか分かったと受け入れてくれた。
こうして僕たちは密かにお付き合いを続けてきたんだけど、ついに恋人になってから初めてのバレンタインが近づいてきた。
彼は僕からのチョコレートを楽しみにしていると言っていたけれど、いつも大勢の人に囲まれている彼にどうやって僕みたいな地味系男子がチョコレートを渡せるのだろう?
「無理、絶対無理」
勇気を振り絞って彼のいる生徒会室までは来たけれど、あと一歩がどうしても踏み出せない。
ドアの隙間からそっと覗くと、彼は同じ生徒会の学内の女性の中で一番人気の美人の才女にチョコレートをもらっているところだった。
「あ……」
どうみても二人は釣り合っていて、素敵なカップルだった。
僕は見ているのも辛くなって、その場から逃げ出してしまった。
彼女が渡していたチョコレートを見てから、胸の奥がジクジクと痛む。
こんな気持ちになる権利もないはずなのに、僕は自分勝手だ。
誰にも会いたくなくて、靴を履き替え外に飛び出した。
「……何やってるんだろう。男からチョコレートだなんて、気持ち悪いに決まってるのに」
僕は手作りのチョコレートを初めて作って、彼に渡そうとしていた。
僕には美味しい高級チョコレートを買いに行く勇気もなかったし、手作りだったらいいかなと軽く考えてしまった。
チョコレートの入った紙袋を抱えたまま、校庭の木の陰に隠れていると見つけた、という声が聞こえてきた。
「やっぱり、ここにいたか」
「え、え? なんで……」
「なんで? じゃないだろう。どうして逃げ出した」
「それは……」
彼の顔を見ていたら気が抜けて、ポロポロと涙があふれてきた。
「どうしたんだ? ほら、泣くな」
「うぅっ……ごめん。君はやっぱり……釣り合う相手と付き合うべきだよ。僕なんかじゃなくって……」
「どういう意味だ?」
「だから、あの生徒会の彼女にチョコレートを……」
そこまで言うと、彼は急に僕のことをぎゅっと抱きしめてきた。
「ふぇっ?」
「あぁ……そうか。やっと俺に興味を持ってくれたのか。そんなに泣く程、嫉妬してくれたんだろう?」
「嫉妬?」
「そうだ。お前を悲しませてしまったのは申し訳なかったが、それ以上に嬉しくて堪らないんだ」
彼はぎゅうぎゅうと僕を抱きしめて離してくれない。
僕が呆気にとられてると、彼は彼女が生徒会のみんなに義理チョコを配っていたのだと教えてくれた。
「だから、心配することはない。俺が欲しいのはお前からのチョコレートだけだから」
「~~っ! じゃあ、勝手に勘違いして……しかも嫉妬してただなんて……」
僕は恥ずかしくてどうにかなりそうだったけど、もう少しこのままでいたくて彼に甘えるように身体をあずけた。
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