めーぷる詰め合わせ<SS&短編集>

楓乃めーぷる

文字の大きさ
4 / 35

※設定縛り<キス・ファンタジー・明るい性格・戦う男・甘々な世界>

しおりを挟む
 
 ※若干ホラーな要素が含まれます。具体的描写は避けていますが苦手な方はご注意ください。


 +++
 

 僕は黒のレインコートを着込み、振り続いている雨の中を速足で歩いていた。
 夕方の帰宅時間のせいか、すれ違う人たちもどこか急いでいるように見える。
 
 僕にはどうしても確かめたいことがあった。
 想い人である、彼の元へ急ぐ。
 そろそろ彼の通っている予備校の授業が終わる時間だ。
 
 どうか僕の勘違いであってほしい。
 はやる気持ちを抑えて、目的地へ向かう。
 
 僕の横を通り過ぎようとする女子高生の明るい声は、耳障りなくらいのかしましさだ。
 彼女たちはお喋りしながら、楽しそうに歩いてくる。
 
「ねえ、また刺されたって。最近この事件ばっかり」
「やだぁー! しかも男の子だけって怖くない?」
「私たちは女だから大丈夫じゃない? ねえ、私欲しいものがあるんだけど」

 携帯でニュースでも見ているのか、話している内容は物騒だ。
 確かに最近騒がれている事件だけど、今の僕にとって重要なことではない。
 きゃっきゃと騒ぎながら、彼女たちは僕の隣を通り過ぎていく。
 
 漸く予備校のビルが見えてきた。
 遠目に彼がビルから出てきたのが見えて駆け寄ろうと足を踏み出した瞬間、見たくなかった光景が目に飛び込んできた。

 信じたくなかったけれど、僕の悪い予感は当たってしまった。
 建物から出てきた彼は、別の男と一緒だ。
 アイツは彼と同じ予備校に通ってる男で、いつもへらへらとしている。
 なんで、軽薄そうなヤツに彼は笑顔を向けているんだろう?
 心の奥がもやもやする。

 僕は少し離れたところから、彼らの後を追うことにする。
 二人は仲良く相合傘までして、途中まで一緒に帰るつもりなのだろう。
 といっても、彼の家はこの先の公園の中を通った方が近いはずだ。
 あともう少し我慢すれば、アイツは彼から離れていくに違いない。

 我慢して五分ほど後を追い続けると、予想通り彼は一人になった。
 傘を彼に押し付けると、邪魔者は笑顔で走り去っていく。

「良かった……これで彼に確かめることができる」

 僕は安堵して、公園へ向かう彼の背中を追いかける。
 大丈夫、彼は僕の思っている通りの優しい人だ。

「彼も分かってくれる。僕の気持ちを」

 右手をレインコートのポケットに差し入れる。
 中に忍ばせた冷たく固い感触の柄を握りしめながら、距離を縮めていく。

 後、数歩で彼の背中へ追いつける。
 日が沈みかけた公園には、僕と彼の二人きりだ。

 驚かせないように、慎重に彼の背後に近づく。
 あぁ、これで彼も僕のものだ。

「そうだよね、僕の大切な想い人」

 明るく声をかけると、驚いた彼が振り返る。
 僕は微笑んで、ポケットの中から引き抜いた右手を彼へ突き出した。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
家族にも見捨てられ、学校で孤独を感じていた静。 毎日が辛くて生きる意味を失いかけた彼の前に現れたのは、眩しい太陽のような青年天輝玲。 玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 しかしある日、玲の口から聞いたある言葉で、信頼から憎悪へと変わった。 それから十年。 玲と再会を果たした静は復讐を果たそうとする。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

処理中です...