めーぷる詰め合わせ<SS&短編集>

楓乃めーぷる

文字の大きさ
22 / 35

お兄さんと猫

しおりを挟む
 クボキリツさん(@kbk_Ritsu)の描かれたフリーイラストをお借りしてイメージしたお話を書かせていただきました。
 リツさん、ありがとうございます!

 素敵なイラストはこちら↓



 +++

 お兄さんは傘を差したまま、しゃがんでボクを見ていた。
 見た目は少し怖いけれど、眼差しは優しいお兄さんだ。

「お前、腹空いてないか? 買ってきたんだけど……食える?」

 差し出されたのはボクの好きなおやつだ。
 差し出されるまま、パクリとかぶりついた。

「良かった。飯は食えるみたいだな。しっかし、この雨の中にこんなところにいたら風邪引くよな? どうしよ……俺んち来るか?」

 お兄さんは優しく手を差し出してくれる。
 どうしようか? この手を掴めばきっと暖かいところへ連れて行ってもらえそうだ。
 だけど……甘えていいのだろうか。
 お兄さんはボクを連れて行って、怒られたりしないだろうか?

「お、怖がられなかった。俺、大体怖がられちまうんだけど……良かった。じゃあ、帰ろう」

 お兄さんに抱っこされて、お兄さんの家まで連れていかれる。
 お兄さんのお家は広くはないけど、キレイに片づけてあった。
 部屋の端っこにはギターが置いてあるから、もしかしたらバンドマンなのかもしれない。
 お兄さんと一緒にお風呂に入って、身体も洗ってもらった。
 ボクはキレイにしてもらえて、一緒のベッドへ寝かされる。

「お前……名前なんていうの? なかったら俺が付けてもいいかな。じゃあ……テン」

 名前まで付けてくれた。カッコイイ名前だ。
 お兄さんに撫でてもらっていたら、だんだん眠くなってきた。

「お前、大人しくていいこだな。俺も眠くなってきた。おやすみ、テン」

 お兄さんにすり寄る。お兄さんに出会えたのは幸せだ。
 ボクも何か恩返しできたらいいのに……。

 +++

 次の日、目覚めたらお兄さんがビックリしてた。
 ボクは首を傾げたんだけど……なんだか不思議な感じ。

「テン……だよな? 待って、俺まだ寝ぼけてる?」

 お兄さんは思い切りほっぺたをつねったけど、すごく痛そうだ。
 ボクは心配になってお兄さんに近づく。

「お兄さん、そんなにつねったら痛いよ……」

 ぺろぺろとほっぺたを舐めると、お兄さんはみるみるうちに顔が真っ赤になってくる。
 あれ? ボクの声がお兄さんにも聞こえるのかな?

「テン……お前、猫じゃなくって人間? いや、でも耳は猫か? じゃなくって! えぇぇー!」
「ん、ボクは猫だよ……って、あれれ?」

 そう、ボクは猫だったのになぜかお兄さんと同じ人間になっていたのだ!
 でもお兄さんに恩返ししたかったし……これでいいのかもしれない。

「よく分かんないけど、お兄さんこれからよろしくね」
「いや……でも、人間になっても可愛いとか反則……」

 お兄さんは驚いていたけど、結局ボクをなでなでしてくれた。
 これから一緒に暮らせるだなんて、すごく楽しみだなぁー。
 
 おしまい♡
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完】君に届かない声

未希かずは(Miki)
BL
 内気で友達の少ない高校生・花森眞琴は、優しくて完璧な幼なじみの長谷川匠海に密かな恋心を抱いていた。  ある日、匠海が誰かを「そばで守りたい」と話すのを耳にした眞琴。匠海の幸せのために身を引こうと、クラスの人気者・和馬に偽の恋人役を頼むが…。 すれ違う高校生二人の不器用な恋のお話です。 執着囲い込み☓健気。ハピエンです。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

死ぬほど嫌いな上司と付き合いました

三宅スズ
BL
社会人3年目の皆川涼介(みながわりょうすけ)25歳。 皆川涼介の上司、瀧本樹(たきもといつき)28歳。 涼介はとにかく樹のことが苦手だし、嫌いだし、話すのも嫌だし、絶対に自分とは釣り合わないと思っていたが‥‥ 上司×部下BL

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

君に不幸あれ。

ぽぽ
BL
家族にも見捨てられ、学校で孤独を感じていた静。 毎日が辛くて生きる意味を失いかけた彼の前に現れたのは、眩しい太陽のような青年天輝玲。 玲の存在は、静の壊れかけていた心の唯一の救いだった。 しかしある日、玲の口から聞いたある言葉で、信頼から憎悪へと変わった。 それから十年。 玲と再会を果たした静は復讐を果たそうとする。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

同居人の距離感がなんかおかしい

さくら優
BL
ひょんなことから会社の同期の家に居候することになった昂輝。でも待って!こいつなんか、距離感がおかしい!

処理中です...