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埋まらない喪失感
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冒険者ギルドでのやり取りは、いつも変わらない。
目の前の受付嬢にため息を吐かれ、心配と呆れが混ざり合った視線を投げかけられる。
前はもっと根掘り葉掘り突っ込まれたものだが、俺の心に響かないと悟ったのか最近は苦言を呈するくらいに留まっている。
「シルヴァ! あんたまた無理をして……」
「約束のオークの牙だ」
「はぁ……見てられないね」
ミューンがいなくなってからは心が空っぽになり、ただ日々を過ごすだけだった。
何もかも失ってしまったような喪失感。
この気持ちが愛だったのだと気付いてしまったのは、ミューンがいなくなってからのことだった。
もう二度と、愛などという感情を抱きたくはない。
そう思い、感情を殺して生きてきた。
本当は生きていたって仕方ないってのに、身体は自然と動いてしまう。
生きている限り、冒険者としての本能だけが働くからだ。
依頼を引き受けて、狩りをして、食いつなぐ。
ため息交じりで差し出された金貨の入った革袋を受け取り、懐へとしまい込む。
「飲みすぎるんじゃないよ」
適当に手をあげて返答し、ギルドから抜け出した。
+++
ざわつく酒場の隅の席を陣取り、いつものエールを煽る。
伸びきった銀髪を整えてくれる相方はもういない。
一人でいる俺の辛気臭い顔を見てると酒が不味くなると絡まれたものだが、一度絡んでくるヤツを捻り倒してからは遠巻きで見られるくらいで静かに酒が飲めるようになった。
「あのあの、もしかして疾風のシルヴァさんですか?」
「……」
無言で顔をあげると、黒いローブと黒のとんがり帽子を纏った少年が話しかけていることに気づく。
この二つ名を考えたのもアイツだったが、未だに呼ばれるとは思っていなかった。
俺の雰囲気に臆せず話しかけた度胸だけは認めるが……一体何の用だろうか?
「そうだが、あんたは?」
「はい。僕はサニーディアという魔法使い見習いです。どうしても貴方にお願いしたいことがあって……」
「悪いが、他を当たってくれ。気分じゃない」
「で、でも貴方にしか頼めないんです! お願いします!」
必死に縋ってくるのも鬱陶しくて、少し黙らせようと覇気を出す。
サニーディアと名乗った少年の帽子が拭き飛び、柔かそうな茶色の髪が揺れる。
彼はペタンと尻もちをついた。
「その……気分を害してしまったのなら、ごめんなさい。でも、また来ますから!」
俺が何かを言う前に慌てて立ち上がると、帽子を拾ってペコリと頭を下げて走って行ってしまった。
一体何だったのだろうか?
だが……サニーディアと名乗った少年は、どこか少し色づいて見えた。
目の前の受付嬢にため息を吐かれ、心配と呆れが混ざり合った視線を投げかけられる。
前はもっと根掘り葉掘り突っ込まれたものだが、俺の心に響かないと悟ったのか最近は苦言を呈するくらいに留まっている。
「シルヴァ! あんたまた無理をして……」
「約束のオークの牙だ」
「はぁ……見てられないね」
ミューンがいなくなってからは心が空っぽになり、ただ日々を過ごすだけだった。
何もかも失ってしまったような喪失感。
この気持ちが愛だったのだと気付いてしまったのは、ミューンがいなくなってからのことだった。
もう二度と、愛などという感情を抱きたくはない。
そう思い、感情を殺して生きてきた。
本当は生きていたって仕方ないってのに、身体は自然と動いてしまう。
生きている限り、冒険者としての本能だけが働くからだ。
依頼を引き受けて、狩りをして、食いつなぐ。
ため息交じりで差し出された金貨の入った革袋を受け取り、懐へとしまい込む。
「飲みすぎるんじゃないよ」
適当に手をあげて返答し、ギルドから抜け出した。
+++
ざわつく酒場の隅の席を陣取り、いつものエールを煽る。
伸びきった銀髪を整えてくれる相方はもういない。
一人でいる俺の辛気臭い顔を見てると酒が不味くなると絡まれたものだが、一度絡んでくるヤツを捻り倒してからは遠巻きで見られるくらいで静かに酒が飲めるようになった。
「あのあの、もしかして疾風のシルヴァさんですか?」
「……」
無言で顔をあげると、黒いローブと黒のとんがり帽子を纏った少年が話しかけていることに気づく。
この二つ名を考えたのもアイツだったが、未だに呼ばれるとは思っていなかった。
俺の雰囲気に臆せず話しかけた度胸だけは認めるが……一体何の用だろうか?
「そうだが、あんたは?」
「はい。僕はサニーディアという魔法使い見習いです。どうしても貴方にお願いしたいことがあって……」
「悪いが、他を当たってくれ。気分じゃない」
「で、でも貴方にしか頼めないんです! お願いします!」
必死に縋ってくるのも鬱陶しくて、少し黙らせようと覇気を出す。
サニーディアと名乗った少年の帽子が拭き飛び、柔かそうな茶色の髪が揺れる。
彼はペタンと尻もちをついた。
「その……気分を害してしまったのなら、ごめんなさい。でも、また来ますから!」
俺が何かを言う前に慌てて立ち上がると、帽子を拾ってペコリと頭を下げて走って行ってしまった。
一体何だったのだろうか?
だが……サニーディアと名乗った少年は、どこか少し色づいて見えた。
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