いきなり告白ラッシュ! 僕は自分の手で幸せを掴み取ります!

楓乃めーぷる

文字の大きさ
2 / 10

2.解放戦線

しおりを挟む
 二人で雑談をしているうちに、署長室の前へ辿り着いた。
 僕が軽くノックすると、中からどうぞと低い声が聞こえてくる。

「オカフュさんをお連れしました」
「わざわざすまないな。では、オカフュ君。よろしく頼むよ」
「はい、署長。よろしくお願いします」

 僕は一礼をして、そのままお茶の準備をしようと給湯室へ向かう。
 署長は濃いめの緑茶、オカフュさんは熱いお茶が得意じゃないので少し冷ましてから淹れる。
 何度か淹れているうちに二人の好みを覚えてしまった。

「……という訳だ。君も忙しいとは思うが、頼めるか?」
「そうですね。絶対とお約束はできませんが、子どもたちの安全を守ることも仕事ですので」
「失礼します。お茶をお持ちしました」

 話している二人の間の机の上に、好みのお茶を置いていく。
 署長も話の切れ目だったためか、すぐにお茶に手を付けた。

「うむ。君のお茶はいつも好みピッタリだな。助かる」
「……本当に。トッカーブ君は気遣いもできて素晴らしいよ」
「いえ。お話の途中ですみませんでした。では、僕はこれで」

 一礼して部屋を出て行こうとすると、オカフュさんの綺麗な瞳と目が合った。
 その黒の瞳は何かを語ろうとしている気がしていたが、署長がすぐに続きの話を始めてしまったので真相を知ることはできなかった。
 僕はそのまま静かに部屋を出ていく。

「……今日もオカフュさん、最高にカッコよかったなぁー」

 僕も大勢の中の一人ではあるけれど、オカフュさん推しだ。
 なんでもこなす彼は憧れだし、手の届かない存在だとしても大好きだという気持ちには変わりがない。
 僕はこの少しのやり取りだけでも天にも昇る気持ちだった。
 お尻の尻尾がむずむずと震えているのが分かる。

「お。お帰り。ご機嫌みたいだな」
「うん。おかげさまで。オカフュさんに褒められたよ。ありがとう、トパント」
「貸しだからな。今度笹ケーキでもおごってくれよ」
「了解」

 耳をぴょこぴょこさせて笑いあいながら、僕らもいつもの業務へ戻る。
 署長とオカフュさんは暫く話し込んでいたみたいだけど、何の話をしていたのかは結局分からなかった。

 +++

 数日後、事件が起こった。
 最近噂されている、解放戦線の爆破事件らしい。
 長い間守られてきた希少種獣人区画で、爆破事件なんて……物騒だよな。
 というか、僕が警察官になってからは初めてな気がする。

 解放戦線は希少種たちの自由と開放を宣言している団体で、閉鎖されている区画を開放し外への行き来を自由にしろと訴えている団体だった。
 最初は街頭演説程度だったので見逃されていたのだけど、最近は区画を仕切るゲートを破壊するといった過激なことも行うようになっているせいか警察の動きも活発化していた。
 でも、まさか爆破なんて……過激すぎるよな。

「またか……僕たちはのんびり暮らせればそれでいいのに。どうしてだろう?」
「世の中には色々と考えるヤツがいるんだよ。でも、オレたちだって一度も区画の外へ行ったことはないじゃないか」
「まあね。だって。それが当たり前だと思って生きてきたから」

 広報課でも危険な場所へ近づかないようにと、学校や幼稚園を回って紙芝居や演劇で何度も伝えてきた。
 最近はその依頼も多くて、大きい学校にはオカフュさんと一緒に出向いて特に力を入れて広報活動をしていたのだ。

「でも、オカフュさんが参加してくれると子どもたちも良く話を聞いてくれるから助かるよ」
「さすがオカフュさんだよ。刑事課の仕事も今は特に忙しいのに……優しいよね」

 僕たちはオカフュさんの活躍を応援することくらいしかできないけど、応援も推し活の一種だと信じて毎日オカフュさんのポスターへ向かって無事を祈っていた。
 そして、また数日後。オカフュさんがついにリーダーを見つけたという話が舞い込んできた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

赤い頬と溶けるバニラ味

hamapito
BL
在宅勤務が選べるようになっても出社し続けているのは、同期の岡野に会うためだった。 毎日会うのが当たり前になっていたある日、風邪をひいてしまい在宅勤務に切り替えた。 わざわざ連絡するのもおかしいかと思ってそのままにしていたけれど……。    * 岡野はただの同期。それ以上でも以下でもない。 満員電車に乗ってでも出社している理由だって「運動不足になりそうだから」って言ってたし。 岡野に会えるのが嬉しい俺とは違う。    *

「好きって言ったら負け!」完璧すぎる生徒会コンビの恋愛頭脳戦は今日も平行線です~恋は勝ち負けじゃないと知るまでの攻防戦

中岡 始
BL
「好きって言ったら負け」 それが、俺たちの間にある、たったひとつのルールだった。 星遥学園の顔、生徒会長・一ノ瀬結翔と副会長・神城凪。 容姿、成績、カリスマ性――すべてが完璧なふたりは、周囲から「最強ペア」と呼ばれている。 けれどその内側では、日々繰り広げられる仁義なき恋愛頭脳戦があった。 ・さりげない言葉の応酬 ・SNSでの匂わせ合戦 ・触れそうで触れない、静かな視線の駆け引き 恋してるなんて認めたくない。 でも、相手からの“告白”を待ち続けてしまう―― そんなふたりの関係が変わったのは、修学旅行での一夜。 「俺、たぶん君に“負けてもいい”って思いかけてる」 その一言が、沈黙を揺るがし、心の距離を塗り替えていく。 勝ち負けなんかじゃない、想いのかたちにたどり着くまで。 これは、美形ふたりの駆け引きまみれなラブコメ戦線、 ついに“終戦”の火蓋が落ちるまでの物語。

【16話完結】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /チャッピー AI比較企画作品

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

六日の菖蒲

あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。 落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。 ▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。 ▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず) ▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。 ▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。 ▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。 ▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。

そんなの真実じゃない

イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———? 彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。 ============== 人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。

処理中です...