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第二章 音色が繋いだ現在の二人の関係性
21.音色が繋いだ現在の二人の関係性
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イケメン高校生こと藤川透莉に付きまとわれた俺、風見音流は結局コイツの押しの強さに負けて今も現在進行形でピアノを教えてやっている。
藤川は母さんのピアノ教室にも用事がない限りは必ず顔を出してピアノを弾き続けているせいか、最初の頃に比べると大分ピアノが弾けるようになってきた気がする。
季節は春から夏へと切り替わり、そろそろ夏休みも近づいてきた時期。
これまでは窓を開けながらピアノを弾く方が爽やかな気分にもなって良かったが、今は窓を開けようもんなら……暑くて耐えられない。
ぶっちゃけ、夏は苦手だ。
「風見くん、もしかしてバテてる?」
「当たり前のことを聞くんじゃねぇよ。お前は相変わらず爽やかイケメンだな」
「ねえ、そのイケメンっていうの。いい加減やめない? オレのことは名前で呼んでほしいな?」
学校からの帰り道、藤川は身体を屈めて俺を見ながら楽しそうに微笑んでくる。
俺がもし女子だったら、きゃーって言いながら顔を赤くする場面なんだろうが。
残念ながら俺は男だ。男だが……俺は藤川にやたらと気に入られてしまっている。
そのせいか、藤川は俺に対してやたらとアピールをしてくる訳だ。
「はいはい。俺のために影を作ってくれてありがとうな。藤川」
「……っ! はいっ!」
いや、この程度でなんでご機嫌になってるんだか。
藤川のお尻から生えてる尻尾がブンブンと嬉しそうに揺れている幻が見える気がする。
俺としてはデカくてキモイわんこはノーサンキューだってのに。
なんつーか、デカイ犬をかわいがっている飼い主の気分だ。
「そうだ、コンビニ寄りません? 涼みついでにアイスでも」
「藤川にしてはいいこと言うな。っつー訳で、アイスはお前のおごりな?」
「え? ああ……それで風見くんが喜んでくれるなら」
「……うわ、その気持ち悪い顔。やっぱりいいわ。自分で買う」
藤川は俺への好意を隠さない。だから、時々本当に鳥肌ものの笑顔を見せてくる。
そのスキスキオーラたっぷりの表情を見ているだけで、俺の身体が拒否反応を示す。
「キモイを越えて気持ち悪いって……今日の風見くん、いつもよりひどい」
「んなこと言って。そんな俺も好きとか思ってんだろ?」
「えへへ……バレました?」
そう、コイツには嫌味も通じない。本当に嬉しそうに笑ってくるから、怒る気も失せてくる。
ムカつきついでに藤川の額に思いっきりデコピンをかましてやる。
「ったぁー!」
「バーカ。だーから変態イケメンって言われるんだよ。ほら、さっさと行くぞ。いつまでも外にいたら暑いだろうが」
「へ、変態は酷い! でも、暑いのはオレも納得です。でも、デコピンは結構痛かったし、次からは手加減してもらえると……」
「お前がキモくなければ、俺もしないっての。いい加減分かれ」
身体をグッと押しのけると、藤川は苦笑しながらようやく俺から距離をとってくれる。
コイツは放っておくといつも距離感がバグってくる。なんちゃらスペースがやたらと近いんだよな。
「風見くん、なんちゃらスペースってパーソナルスペースってこと?」
「なっ……俺の独り言を拾うんじゃねぇよ。そうだよ、そのパーソナルスペース! 守れよな。お前、いつも近すぎなんだよ。一定の距離を保てって」
「これでも保ってるのにな。本当はもっと抱きしめて……」
「……」
俺が無視してズカズカと歩き始めると、無視しないでと訴えながら藤川が後をついてきた。
ホント……放っておくとコイツはキモさが増していくんだよな。
藤川は母さんのピアノ教室にも用事がない限りは必ず顔を出してピアノを弾き続けているせいか、最初の頃に比べると大分ピアノが弾けるようになってきた気がする。
季節は春から夏へと切り替わり、そろそろ夏休みも近づいてきた時期。
これまでは窓を開けながらピアノを弾く方が爽やかな気分にもなって良かったが、今は窓を開けようもんなら……暑くて耐えられない。
ぶっちゃけ、夏は苦手だ。
「風見くん、もしかしてバテてる?」
「当たり前のことを聞くんじゃねぇよ。お前は相変わらず爽やかイケメンだな」
「ねえ、そのイケメンっていうの。いい加減やめない? オレのことは名前で呼んでほしいな?」
学校からの帰り道、藤川は身体を屈めて俺を見ながら楽しそうに微笑んでくる。
俺がもし女子だったら、きゃーって言いながら顔を赤くする場面なんだろうが。
残念ながら俺は男だ。男だが……俺は藤川にやたらと気に入られてしまっている。
そのせいか、藤川は俺に対してやたらとアピールをしてくる訳だ。
「はいはい。俺のために影を作ってくれてありがとうな。藤川」
「……っ! はいっ!」
いや、この程度でなんでご機嫌になってるんだか。
藤川のお尻から生えてる尻尾がブンブンと嬉しそうに揺れている幻が見える気がする。
俺としてはデカくてキモイわんこはノーサンキューだってのに。
なんつーか、デカイ犬をかわいがっている飼い主の気分だ。
「そうだ、コンビニ寄りません? 涼みついでにアイスでも」
「藤川にしてはいいこと言うな。っつー訳で、アイスはお前のおごりな?」
「え? ああ……それで風見くんが喜んでくれるなら」
「……うわ、その気持ち悪い顔。やっぱりいいわ。自分で買う」
藤川は俺への好意を隠さない。だから、時々本当に鳥肌ものの笑顔を見せてくる。
そのスキスキオーラたっぷりの表情を見ているだけで、俺の身体が拒否反応を示す。
「キモイを越えて気持ち悪いって……今日の風見くん、いつもよりひどい」
「んなこと言って。そんな俺も好きとか思ってんだろ?」
「えへへ……バレました?」
そう、コイツには嫌味も通じない。本当に嬉しそうに笑ってくるから、怒る気も失せてくる。
ムカつきついでに藤川の額に思いっきりデコピンをかましてやる。
「ったぁー!」
「バーカ。だーから変態イケメンって言われるんだよ。ほら、さっさと行くぞ。いつまでも外にいたら暑いだろうが」
「へ、変態は酷い! でも、暑いのはオレも納得です。でも、デコピンは結構痛かったし、次からは手加減してもらえると……」
「お前がキモくなければ、俺もしないっての。いい加減分かれ」
身体をグッと押しのけると、藤川は苦笑しながらようやく俺から距離をとってくれる。
コイツは放っておくといつも距離感がバグってくる。なんちゃらスペースがやたらと近いんだよな。
「風見くん、なんちゃらスペースってパーソナルスペースってこと?」
「なっ……俺の独り言を拾うんじゃねぇよ。そうだよ、そのパーソナルスペース! 守れよな。お前、いつも近すぎなんだよ。一定の距離を保てって」
「これでも保ってるのにな。本当はもっと抱きしめて……」
「……」
俺が無視してズカズカと歩き始めると、無視しないでと訴えながら藤川が後をついてきた。
ホント……放っておくとコイツはキモさが増していくんだよな。
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