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第四章 行動に移す魔塔主と色々認めたくない弟子
83.ふわふわ心地よくて<レイヴン視点>
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「俺を睨んでもなー。お前がムキになって反応するから弄られるんだよ」
「そうだけど、話し掛けられて無視すると逆にしつこくて。適当に相手しているうちにペースに巻き込まれるから……どうしたらいいのか」
「思い切り巻き込まれて相手を翻弄するか、強い意思をもって距離をおくか。だけど、補佐官の時点で距離をおくのは不可能なんだから、優位に立ちたいなら前者だろ」
「もっと俺が強ければいいのに……何でこうなんだろう」
止める間もなく、料理を口に詰め込んでは飲み、詰め込んでは飲み、と。気がつけばマグは空になってしまっていた。
「あーあー……そのペースはマズイって。ホント、テオドール様のことになるといつもこうだよな。それこそ猫被れば、揶揄われる前に逆にペース握りそうなのに」
「……いつも握られっぱなしですけど、何か?」
「誘惑するくらいすれば、テオドール様ならすぐに餌に食いつく感じするけどな」
「誘惑って……俺が、師匠を?」
ウルガーの話を聞いていたら、なんだかふわふわしてきた。
お酒を一気に煽ったから、酔ってきたのかもしれない。
駄目だ、何か目が開かない。
ぼやぁっとしてきた。
ウルガーに愚痴っていたから、普段より飲んでしまったんだろうけど……ほわほわ心地良い。
ウルガーが戸惑ってる。
何もしてないのに変なの。
何で? と思って、ゆっくりと緩慢に首を傾げた。
「あー……そういう感じだと思いますけどー? レイヴン……酔いが回るの早すぎ……」
「このくらいで酔う訳ないから。俺のこと馬鹿にしてるでしょう?」
「してないしてない! あぁー……テオドール様に見つかりませんように……!」
ウルガーが焦っているのが面白くて笑っていると、いいから食べろとご飯を口に詰め込まれた。
でもご飯は美味しかったし、問題ないのに……。
ウルガーが何故か慌てて駆け込むように残りの料理をたいらげていく。
さすがは良い食べっぷり。
別に急がなくてもいいのに、ウルガーが俺の背中を押すようにしながらお勘定も済ませると俺の身体を外に押し出した。
ひんやりとした風は心地良い。
月も綺麗だし問題ない。
俺は気持ちも目線もどこかふわふわとしているけど、こういうのもたまには悪くない。
ニッコリとウルガーに笑いかけると、ため息を付いたウルガーが急に背を屈めて俺を背負ってくれた。
「……もう少し話す予定だったのに。テオドール様の話をしたタイミング、マズったか?」
背中の揺れが気持ちよくて、俺はだんだんと眠くなってくる。
うとうととしていると、ウルガーは俺を送ってくれるみたいでそのまま街を抜けていく。
魔塔へと続く道を歩いていると、後ろから聞き慣れた低い声が聞こえてきた。
「…………俺が何だって?」
ウルガーが立ち止まって、恐る恐る振り返るのが分かった。
「そうだけど、話し掛けられて無視すると逆にしつこくて。適当に相手しているうちにペースに巻き込まれるから……どうしたらいいのか」
「思い切り巻き込まれて相手を翻弄するか、強い意思をもって距離をおくか。だけど、補佐官の時点で距離をおくのは不可能なんだから、優位に立ちたいなら前者だろ」
「もっと俺が強ければいいのに……何でこうなんだろう」
止める間もなく、料理を口に詰め込んでは飲み、詰め込んでは飲み、と。気がつけばマグは空になってしまっていた。
「あーあー……そのペースはマズイって。ホント、テオドール様のことになるといつもこうだよな。それこそ猫被れば、揶揄われる前に逆にペース握りそうなのに」
「……いつも握られっぱなしですけど、何か?」
「誘惑するくらいすれば、テオドール様ならすぐに餌に食いつく感じするけどな」
「誘惑って……俺が、師匠を?」
ウルガーの話を聞いていたら、なんだかふわふわしてきた。
お酒を一気に煽ったから、酔ってきたのかもしれない。
駄目だ、何か目が開かない。
ぼやぁっとしてきた。
ウルガーに愚痴っていたから、普段より飲んでしまったんだろうけど……ほわほわ心地良い。
ウルガーが戸惑ってる。
何もしてないのに変なの。
何で? と思って、ゆっくりと緩慢に首を傾げた。
「あー……そういう感じだと思いますけどー? レイヴン……酔いが回るの早すぎ……」
「このくらいで酔う訳ないから。俺のこと馬鹿にしてるでしょう?」
「してないしてない! あぁー……テオドール様に見つかりませんように……!」
ウルガーが焦っているのが面白くて笑っていると、いいから食べろとご飯を口に詰め込まれた。
でもご飯は美味しかったし、問題ないのに……。
ウルガーが何故か慌てて駆け込むように残りの料理をたいらげていく。
さすがは良い食べっぷり。
別に急がなくてもいいのに、ウルガーが俺の背中を押すようにしながらお勘定も済ませると俺の身体を外に押し出した。
ひんやりとした風は心地良い。
月も綺麗だし問題ない。
俺は気持ちも目線もどこかふわふわとしているけど、こういうのもたまには悪くない。
ニッコリとウルガーに笑いかけると、ため息を付いたウルガーが急に背を屈めて俺を背負ってくれた。
「……もう少し話す予定だったのに。テオドール様の話をしたタイミング、マズったか?」
背中の揺れが気持ちよくて、俺はだんだんと眠くなってくる。
うとうととしていると、ウルガーは俺を送ってくれるみたいでそのまま街を抜けていく。
魔塔へと続く道を歩いていると、後ろから聞き慣れた低い声が聞こえてきた。
「…………俺が何だって?」
ウルガーが立ち止まって、恐る恐る振り返るのが分かった。
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