ファイナル・ウォー・ファンタジー

れつ

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大轟音

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 魔族との戦いに向かうため、出航してから、9日が経過した。
 あとわずか1日で、魔族が住む「ミゲルクルス大陸」に、到着する予定であった。

 しかし最後の関門が、人類の前に立ちはだかった――人間軍の侵攻を阻むように、大嵐がバルたちの船団に襲いかかったのである。

 猛烈な嵐によって、海上は荒れ狂った。バルが乗船しているスターマイル号を含む人間軍の軍艦が、大嵐に突入してから、すでに4時間は経過したが、この嵐の中から抜けだせる気配は、微塵も感じられなかった。

 猛烈な雨と風が、船体を叩きつけた。ミゲルクルス大陸を目指す、数十隻の船団は、荒れ狂う海によって、木の葉のように、もてあそばれていた。

 強風による激しい揺れで、船内はメチャクチャになった。時には、立っていられないほどの強烈な揺れがあり、バルは何度も、床に叩きつけられた。

そこへ追い打ちをかけるように、紫色の雷光が強襲してきた――次から次へと、雷が落ちてきて、木造の軍艦を直撃したのである。落雷によって、炎上する船が増えてきた。

 船内では、ひどい船酔いで吐く者が続出したが、トマキオもその1人だった。部屋の中で、吐くわけにもいかなかったため、トマキオは部屋の外の廊下に出た。彼は重度の船酔いのため、もはや立ち上がる事すらできず、通路で横たわっていて、190センチはあろうかという大男が、息も絶え絶えになっていた。

 バルもトマキオに付き添うような形で、部屋の外の廊下にいた。心配そうにバルが、トマキオに声をかけた。
「おい、トマキオ、大丈夫か?」

 トマキオが、虫の息で答えた。
「いや・・・・・・オレは、もうダメだ・・・・・・
いっそのこと、オレを殺してくれ・・・・・・」

 その瞬間だった。大轟音とともに、船体に強い衝撃が走った。その激しい揺れに立っていられず、バルは顔から、床に叩きつけられた。

「この船・・・・・・どこかに、ぶつかったんじゃないか?」
バルは直感で、そう感じた。

 しばらくすると、バルの前方にある階段が、人でいっぱいになってきた。下の階から、恐怖で顔をひきつらせながら我先にと、上の階を目指して階段を昇っていく人が増えたのである。

 その中に、褐色の肌をした小柄の見覚えのある男がいた。ジャイラである。

 バルは急いで、ジャイラに近づいて、大声で言った。
「オイ、ジャイラ!
俺だ!バルだ!」

 すると階段を昇っていたジャイラが、バルの方を振り向いた。
 バルはジャイラに聞いた。
「みんな血相変えて、上に逃げてるみたいだけど、何があったんだ!?」

 ジャイラは、肩でハアハア息を切らしながら、答えた。
「強風にあおられて転覆した船に、ぶつかって、船底が破壊されたんだよ!!!
今ひどい浸水で、もう下の階はダメだ!」

「ダメって・・・・・・
修理するとか、何とかなんないのか!?」

「いや、もう何とかなるレベルじゃねぇ!!!
じきに、この船は沈むぜ!
はやく逃げるしかねぇ!!!
アンタも早く、逃げた方が、イイぜ!!!」

 そう言うと、ジャイラは再び、駆け足で階段を昇っていった。

 下の階から、階段を昇ってくる連中の中に、バルの友人がいた。彼もまた、青竜親衛隊の隊員でバルとともに、エクラーザの説得にあたってきた少年だった。彼はバルの姿を見かけると、バルに言った。

「バル、お前も今すぐ、救命艇に乗るんだ!
じきに、この船は沈むからな!」

 バルは狼狽したように言った。
「救命艇って、あのちっぽけな船にか!?
すぐに、大波に飲み込まれるんじゃ・・・・・・
こんな嵐の中で、あんな救命艇に乗るなんて、自殺行為じゃねえか!?」

「でも、それ以外に選択肢は、無いんだ!
ここにいても死ぬぞ!早く来い!」

 ここで急に、エクラーザの姿が、バルの頭をよぎった。
「・・・・・・あのエクラーザって女は?
あの女は救命艇に乗ったのか?」

「エクラーザ???
なんであんな魔族の女の事を?
魔族の女なんて、知ったことか! 救命艇に、アイツを乗せるスペースなんて無い!
ほっとけ!
そんな事よりバル、オマエも早く来い!」

 バルは何も言わなかった。その代わり、地下牢でのエクラーザの姿を思い出していた。
 5年間にも及ぶ幽閉生活における、孤独で悲しげな姿や、死を前にしても『仲間は裏切らない』という彼女の毅然とした態度を、思い出した。

 バルは決心したように言った。
「・・・・・・ちょっと先に、行っててくれ。
あの魔族の女を、助けてくる」

「はあ???
オマエ、正気か!?
早く脱出しないと、オマエも死ぬぞ!」

「かもな!」と言って、バルは走り出した。エクラーザがいる牢屋に向かって走りながら、バルは思った。

「たぶん、あいつは・・・・・・今この瞬間も、1人ぼっちだ。
5年間も牢獄に閉じ込められて、最後は、みんなに見捨てられて、溺死っていうんじゃあ・・・・・・あんまりだ。
神様アンタも残酷な事を、よくするよ。
・・・・・・いや、違う。
神様のせいにしちゃ、いけないか。
残酷なのは・・・・・・俺たち人間だ」

苦しそうな表情をしたままバルは、エクラーザを救うために、走り続けた。

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