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過保護
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「肉よーし! 野菜よーし! カレーよし!」
ラウルのご両親に食事を振る舞う日がやってきた。
ちゃんと食事代も払ってもらえるというのに、炭と器材、飲み物なども先方で準備をしてくれる上、馬車の用意までもしてくれると言うありがたくお受けすることにした。
それならば食材だけでもしっかり持っていこうと思うのが、元日本人の性と言うものである。
今日はバーベキューだが、用意したすべてに太鼓判を押せるほど気合を入れた。
過去最高の再現率になった焼き肉のタレを筆頭に、ニンニクを効かせた葡萄牛のスペアリブ。手作りのサングリア。ラウルとリチャードにも好評のカレーも作る予定だ。
デザートにはバーベキューでは外したくない、マシュマロも用意した。
みんなで楽しく焼いて食べるのだ! と調子に乗って作っていたら笑えるほど大量に作ってしまったのは内緒だ。
食材の持ち運びにはクーラーボックスを使うのだが、この世界のクーラーボックスには氷の魔法が使われていて、使い方によっては電力なしで一週間も冷蔵庫のような冷たさが維持できる、前世にもあったら爆売れ間違いなしの一品だ。
今はそのクーラーボックスに今回持っていく食材を忘れないようにしっかり詰めていく作業中である。
何かあった時の為にこっそり虹色のポーションも数本忍ばせておく。
「アオ、このちっちゃい鍋も持ってくのか?」
「それ大事! 持ってく!」
荷物運びを手伝ってくれているマークが、小ぶりの鍋を手にしていた。
ラウルの母は良くなったとは言え病み上がりだ。
食欲はずいぶん出てきて、今は何でも食べる、と聞いてはいたのだが、万が一の時には小鍋で作った雑炊とちょっとしたものを食べてもらおうと思っていたのだ。
忘れないようにマークに荷車に入れてもらうようにお願いする。
乗合い馬車に乗せられる量ではないので手押し車でいかなくてはいけないのに、あれもこれもと考えていたら、思ったよりも量が多くなってしまった。
「ちょっと多いんじゃないか?」
「だって働いている人たちもご飯食べたくなると思うんだよね」
「貴族の主人と同じ時間に使用人は食事しないと思うぞ?」
「え? そうなの?」
そう言えば前世で読んだ貴族物の小説などには確かにそんな記載があった気がする。
「まぁ、肉と野菜がメインだから、勝手に焼いて食べられるから無駄にはならないだろ」
「置いてきちゃえば後で食べてもらえるよね」
「お前の作った飯を食わない奴はいないよ」
とマークは言ってくれたが、心配になってきた。
「それはそうと、アオ、ほんとにその服で行くのか?」
「なんで? 青い服で行くって宣言したじゃん」
バーベキューは匂いも付くしブルースーツで行く気満々だ。
虫よけ機能付きだし、何より汚れても気にならない。
「それはそうなんだが……」
何故かマークの歯切れが悪い……
「まさか」
「まさか?」
「この青い服色褪せしてる?」
確かに今着ているのは作り始めた頃から着ているもので、青味が若干ではあるが薄くなってきている気はしていた。
「あ~、ちょっとだけな。だから他の服に着替えた方がいいんじゃないか?」
「う~ん。マークがそういうなら着替えてくるよ」
マークのなんだか少しだけほっとしたような顔の意味は分からないが、気になるほどだったならラウルのご両親に失礼かもしれないと着替えることにした。
アイオライトが二階に上がった直後に、ラウルがアイオライトを迎えに来た。
「こんにちわ。アイオライトは?」
「おう、ラウル。今着替え中」
「着替え? あの青い服じゃないの?」
「まぁな。なんとか着替えさせたんだが、何を着て降りてくるかはわからん」
ラウルは別に青い服でも良いと思っていたし、この前冒険者ギルドでマークに話したように、両親も気にしないと思うと言ったのだが、
「お前に会うだけなら問題ないが、お前の両親と会うのは話が別だろ!」
とのことであった。
そんな会話を繰り広げていると、店の中からアイオライトが出てくるのが見えた。
「あ! ラウルさん! おぉ……普段着なんですね。今日はよろしくお願いします」
出てきたアイオライトは、いつもの青い服を着ている。
「お、おい! アオ、お前着替えてきたんじゃないのかよ」
「着替えたよ? 新品の青い服なんだ。これなら色褪せしてないし、ラウルさんのご両親の前に出ても恥ずかしくないよね」
せっかく着替えをさせることに成功したのに、着替えた先がまた同じ服だとは思いもしなかったマークは、可愛がっている妹分の残念な思考にがっくりと肩を落としてしまった。
「アオ、もう少し余所行きの服持ってるだろ?」
「持ってるけど、バーベキューなんだしこれでいいと思うんだけどな~。おかしいでしょうか?」
「いや、いいんじゃない……かな?」
実際、他の服を着ているアイオライトを見たいとは思ってはいる。
きっと何を着ても似合うはずだ。
が、今日は、青い服でいい。とラウルは思う。
「ですよね! 動きやすい服の方がいいですからね!」
ご満悦な笑顔で今日の肉の説明をするアイオライト。
それを優しい笑顔で聞いているラウル。
そのラウルの目の奥に、マークは何かの熱を見たような気がしたが、まだ本人が自覚してないなら、と気のせいにすることにした。
「さて、そろそろ行こうか。正門に馬車を用意してあるよ」
「馬車まで準備していただいて、ありがとうございます。提案したのは自分なのにお世話になりっぱなしで恐縮です……。その分楽しく皆さんで食事しましょう!」
準備等至れり尽くせりで、申し訳ない気持ちが頭の隅を掠めたが、人の好意には好意で返すことの方が気持ちがすっきりするというものだ。
「まずはこの荷物を正面の門まで引いていかなくちゃいけないですけれどね」
三人で手押し車を引いて正門まで歩く。
「今日は天気が良くて良かったですよね。ちょっと暑いですけれど、ラウルさんのお父さんもお母さんも野営地にはもう到着しているんですか?」
「うん。さっき知らせが届いてコンロなんかも準備始めてるって。俺たちが着いたときにはもう始められるかもしれないよ」
今は手押し車を引いているし、車輪の音で聞こえない可能性もある。馬車の中ならそこまでうるさくはないし、距離も近いから、聞こえないなんてこともないはずだ……。
と、穏やかな会話を繰り広げているが、内心ラウルはいつ切り出すかを考えていた。
「今日はスペシャルなデザートも準備したので、楽しみにしていてくださいね」
金の林檎亭からそれなりに距離があるはずだが、楽しく話をしていると、あっという間に正門の馬車停留所に到着した。
「ラウル、この馬車でいいのか?」
「うん。ありがとう。マーク。」
手押し車から荷馬車にクーラーボックスを移動させたアイオライトは、荷馬車には余裕で乗る量で一安心していた。
「いいよこれぐらい。俺はこの後仕事だから付いて行ってやれないが、アオのこと頼むぞ」
「わかってる」
「あと、遅くなったらお前がちゃんと家まで送ってやってくれよ。知らない奴にアオを任せられないからな、あとは……」
「マーク! そんなに遅くなったりしないし、そんなにあれこれラウルさんにお願いしちゃだめだよ。帰りの馬車もちゃんと手配してもらってるし大丈夫だよ。もう、心配性だな」
「だってだな~」
アイオライトは、マークとリリが自分に対して過保護なのは承知しているが、今日はものすごく念入りな気がしてつい口調が強くなってしまう。
「もう十七だし。立派な大人だって言ってるのに」
それを聞いたラウルは心の中で絶句していた。
十七!!
おかしなことはない。幼く見えても、同じぐらいだろうなとは思ってはいた。が、実際本人の口から聞いた衝撃は凄まじい。
あと一年もたたずに成人を迎えてしまう。
貴族間では女性の場合、十五の年までに婚約するのが普通だ。そして庶民の場合はもう少し遅く、成人を迎えてから結婚することが多いと聞いたことがある。
ラウルは言いようのない焦りを感じて、アイオライトを凝視していた。
一方のアイオライトはそんなに驚く?と、ラウルを仰ぎ見ると、少し間をおいてから、
「俺と一つしか違わないんだね。もうすぐ成人だ」
と優しく微笑みながら声をかけてくれた。
若干の挙動不審があったが、この爽やか王子の笑顔が素敵過ぎて大好きだー!と聞こえていたらドン引きされるほど、心の中でやまびこが鳴るぐらい全力で叫んでしまっていた。
そして、忘れてはいけない。
一つ年上という事は現在十八歳で成人を迎えたばかり。
推しが大人と認められていたことと、成人を迎えたお礼を述べる。
「大人の階段を上ったんですね。成人おめでとうございます!」
「え?」
「アオ、変な言い方すんな。ラウルも! 深い意味はない」
とマークに頭をはたかれた。どうにも解せぬ。
「お客さ~ん。荷物全部乗ったなら、そろそろ出発しますよ~」
御者が出発の声をかける。
「おい、アオ、何かあったらラウルになんでもお願いするんだぞ。ちゃんと眠くなる前に帰ってくるんだぞ。あと、知らない人についていくな。絶対だ!」
小学生かよっ!という突っ込がしたくなるほど過保護なマークを置いて馬車に乗り込む。
「だから子供じゃないから大丈夫だよ。ね、ラウルさん」
「大丈夫です。俺、ちゃんと送って帰りますから」
「念のためラウルに店のスペアキー渡しておくからな」
そこまで心配されるほど子供かな、と自分自身が心配になってしまう。
「マーク、大丈夫。今日中に家に送り届けるよ。それから、あとでちゃんとアイオライトに言うから」
最後にラウルがマークに何を言ったのかは聞こえなかったが、今日中には家に帰るつもりだし、ラウルのご両親や、そのお付きの人達にも迷惑をかけるつもりも無い。
今は実年齢に引っ張られて若干幼い思考回路ではあるが、礼節を重んじる文化で何十年も生きてきたのだ。
と、謎の自信をみなぎらせて、国の王と王妃が待つとは知らぬまま、アイオライトは野営地に向けて出発した。
ラウルのご両親に食事を振る舞う日がやってきた。
ちゃんと食事代も払ってもらえるというのに、炭と器材、飲み物なども先方で準備をしてくれる上、馬車の用意までもしてくれると言うありがたくお受けすることにした。
それならば食材だけでもしっかり持っていこうと思うのが、元日本人の性と言うものである。
今日はバーベキューだが、用意したすべてに太鼓判を押せるほど気合を入れた。
過去最高の再現率になった焼き肉のタレを筆頭に、ニンニクを効かせた葡萄牛のスペアリブ。手作りのサングリア。ラウルとリチャードにも好評のカレーも作る予定だ。
デザートにはバーベキューでは外したくない、マシュマロも用意した。
みんなで楽しく焼いて食べるのだ! と調子に乗って作っていたら笑えるほど大量に作ってしまったのは内緒だ。
食材の持ち運びにはクーラーボックスを使うのだが、この世界のクーラーボックスには氷の魔法が使われていて、使い方によっては電力なしで一週間も冷蔵庫のような冷たさが維持できる、前世にもあったら爆売れ間違いなしの一品だ。
今はそのクーラーボックスに今回持っていく食材を忘れないようにしっかり詰めていく作業中である。
何かあった時の為にこっそり虹色のポーションも数本忍ばせておく。
「アオ、このちっちゃい鍋も持ってくのか?」
「それ大事! 持ってく!」
荷物運びを手伝ってくれているマークが、小ぶりの鍋を手にしていた。
ラウルの母は良くなったとは言え病み上がりだ。
食欲はずいぶん出てきて、今は何でも食べる、と聞いてはいたのだが、万が一の時には小鍋で作った雑炊とちょっとしたものを食べてもらおうと思っていたのだ。
忘れないようにマークに荷車に入れてもらうようにお願いする。
乗合い馬車に乗せられる量ではないので手押し車でいかなくてはいけないのに、あれもこれもと考えていたら、思ったよりも量が多くなってしまった。
「ちょっと多いんじゃないか?」
「だって働いている人たちもご飯食べたくなると思うんだよね」
「貴族の主人と同じ時間に使用人は食事しないと思うぞ?」
「え? そうなの?」
そう言えば前世で読んだ貴族物の小説などには確かにそんな記載があった気がする。
「まぁ、肉と野菜がメインだから、勝手に焼いて食べられるから無駄にはならないだろ」
「置いてきちゃえば後で食べてもらえるよね」
「お前の作った飯を食わない奴はいないよ」
とマークは言ってくれたが、心配になってきた。
「それはそうと、アオ、ほんとにその服で行くのか?」
「なんで? 青い服で行くって宣言したじゃん」
バーベキューは匂いも付くしブルースーツで行く気満々だ。
虫よけ機能付きだし、何より汚れても気にならない。
「それはそうなんだが……」
何故かマークの歯切れが悪い……
「まさか」
「まさか?」
「この青い服色褪せしてる?」
確かに今着ているのは作り始めた頃から着ているもので、青味が若干ではあるが薄くなってきている気はしていた。
「あ~、ちょっとだけな。だから他の服に着替えた方がいいんじゃないか?」
「う~ん。マークがそういうなら着替えてくるよ」
マークのなんだか少しだけほっとしたような顔の意味は分からないが、気になるほどだったならラウルのご両親に失礼かもしれないと着替えることにした。
アイオライトが二階に上がった直後に、ラウルがアイオライトを迎えに来た。
「こんにちわ。アイオライトは?」
「おう、ラウル。今着替え中」
「着替え? あの青い服じゃないの?」
「まぁな。なんとか着替えさせたんだが、何を着て降りてくるかはわからん」
ラウルは別に青い服でも良いと思っていたし、この前冒険者ギルドでマークに話したように、両親も気にしないと思うと言ったのだが、
「お前に会うだけなら問題ないが、お前の両親と会うのは話が別だろ!」
とのことであった。
そんな会話を繰り広げていると、店の中からアイオライトが出てくるのが見えた。
「あ! ラウルさん! おぉ……普段着なんですね。今日はよろしくお願いします」
出てきたアイオライトは、いつもの青い服を着ている。
「お、おい! アオ、お前着替えてきたんじゃないのかよ」
「着替えたよ? 新品の青い服なんだ。これなら色褪せしてないし、ラウルさんのご両親の前に出ても恥ずかしくないよね」
せっかく着替えをさせることに成功したのに、着替えた先がまた同じ服だとは思いもしなかったマークは、可愛がっている妹分の残念な思考にがっくりと肩を落としてしまった。
「アオ、もう少し余所行きの服持ってるだろ?」
「持ってるけど、バーベキューなんだしこれでいいと思うんだけどな~。おかしいでしょうか?」
「いや、いいんじゃない……かな?」
実際、他の服を着ているアイオライトを見たいとは思ってはいる。
きっと何を着ても似合うはずだ。
が、今日は、青い服でいい。とラウルは思う。
「ですよね! 動きやすい服の方がいいですからね!」
ご満悦な笑顔で今日の肉の説明をするアイオライト。
それを優しい笑顔で聞いているラウル。
そのラウルの目の奥に、マークは何かの熱を見たような気がしたが、まだ本人が自覚してないなら、と気のせいにすることにした。
「さて、そろそろ行こうか。正門に馬車を用意してあるよ」
「馬車まで準備していただいて、ありがとうございます。提案したのは自分なのにお世話になりっぱなしで恐縮です……。その分楽しく皆さんで食事しましょう!」
準備等至れり尽くせりで、申し訳ない気持ちが頭の隅を掠めたが、人の好意には好意で返すことの方が気持ちがすっきりするというものだ。
「まずはこの荷物を正面の門まで引いていかなくちゃいけないですけれどね」
三人で手押し車を引いて正門まで歩く。
「今日は天気が良くて良かったですよね。ちょっと暑いですけれど、ラウルさんのお父さんもお母さんも野営地にはもう到着しているんですか?」
「うん。さっき知らせが届いてコンロなんかも準備始めてるって。俺たちが着いたときにはもう始められるかもしれないよ」
今は手押し車を引いているし、車輪の音で聞こえない可能性もある。馬車の中ならそこまでうるさくはないし、距離も近いから、聞こえないなんてこともないはずだ……。
と、穏やかな会話を繰り広げているが、内心ラウルはいつ切り出すかを考えていた。
「今日はスペシャルなデザートも準備したので、楽しみにしていてくださいね」
金の林檎亭からそれなりに距離があるはずだが、楽しく話をしていると、あっという間に正門の馬車停留所に到着した。
「ラウル、この馬車でいいのか?」
「うん。ありがとう。マーク。」
手押し車から荷馬車にクーラーボックスを移動させたアイオライトは、荷馬車には余裕で乗る量で一安心していた。
「いいよこれぐらい。俺はこの後仕事だから付いて行ってやれないが、アオのこと頼むぞ」
「わかってる」
「あと、遅くなったらお前がちゃんと家まで送ってやってくれよ。知らない奴にアオを任せられないからな、あとは……」
「マーク! そんなに遅くなったりしないし、そんなにあれこれラウルさんにお願いしちゃだめだよ。帰りの馬車もちゃんと手配してもらってるし大丈夫だよ。もう、心配性だな」
「だってだな~」
アイオライトは、マークとリリが自分に対して過保護なのは承知しているが、今日はものすごく念入りな気がしてつい口調が強くなってしまう。
「もう十七だし。立派な大人だって言ってるのに」
それを聞いたラウルは心の中で絶句していた。
十七!!
おかしなことはない。幼く見えても、同じぐらいだろうなとは思ってはいた。が、実際本人の口から聞いた衝撃は凄まじい。
あと一年もたたずに成人を迎えてしまう。
貴族間では女性の場合、十五の年までに婚約するのが普通だ。そして庶民の場合はもう少し遅く、成人を迎えてから結婚することが多いと聞いたことがある。
ラウルは言いようのない焦りを感じて、アイオライトを凝視していた。
一方のアイオライトはそんなに驚く?と、ラウルを仰ぎ見ると、少し間をおいてから、
「俺と一つしか違わないんだね。もうすぐ成人だ」
と優しく微笑みながら声をかけてくれた。
若干の挙動不審があったが、この爽やか王子の笑顔が素敵過ぎて大好きだー!と聞こえていたらドン引きされるほど、心の中でやまびこが鳴るぐらい全力で叫んでしまっていた。
そして、忘れてはいけない。
一つ年上という事は現在十八歳で成人を迎えたばかり。
推しが大人と認められていたことと、成人を迎えたお礼を述べる。
「大人の階段を上ったんですね。成人おめでとうございます!」
「え?」
「アオ、変な言い方すんな。ラウルも! 深い意味はない」
とマークに頭をはたかれた。どうにも解せぬ。
「お客さ~ん。荷物全部乗ったなら、そろそろ出発しますよ~」
御者が出発の声をかける。
「おい、アオ、何かあったらラウルになんでもお願いするんだぞ。ちゃんと眠くなる前に帰ってくるんだぞ。あと、知らない人についていくな。絶対だ!」
小学生かよっ!という突っ込がしたくなるほど過保護なマークを置いて馬車に乗り込む。
「だから子供じゃないから大丈夫だよ。ね、ラウルさん」
「大丈夫です。俺、ちゃんと送って帰りますから」
「念のためラウルに店のスペアキー渡しておくからな」
そこまで心配されるほど子供かな、と自分自身が心配になってしまう。
「マーク、大丈夫。今日中に家に送り届けるよ。それから、あとでちゃんとアイオライトに言うから」
最後にラウルがマークに何を言ったのかは聞こえなかったが、今日中には家に帰るつもりだし、ラウルのご両親や、そのお付きの人達にも迷惑をかけるつもりも無い。
今は実年齢に引っ張られて若干幼い思考回路ではあるが、礼節を重んじる文化で何十年も生きてきたのだ。
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