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更なる試練
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休日開け、久保拓也に正式な「中将昇進」の辞が下る。
同時に「統合参謀本部付 特別管理官」なる未知のポストに任ぜられる。
まぁ、今の「自由過ぎる」立場や言動への追認とも言えるのであるが…。
大本営統合参謀本部
「おい、見ろよ、久保中将閣下だぜ?」
「なんなんだろうな。異例の出世とか、情実人事とか、そういう騒ぎじゃねえぞ。」
「あー、案外山本閣下がアレでアレなのかも…。」
「しっ、聞こえるぞ。」
丸聞こえなんだが…。
どこかの参謀部らしき佐官級二人と敬礼を交わし、参謀総長室の扉をノックする。
「開いておるよ。」
懐かしい声だ。
「山本参謀総長閣下、ご無沙汰しております!」
最敬礼する久保。
「はっは、そんな君ももはや中将閣下。
大袈裟でなく我が軍の采配を一手に委ねてしまっているからな。
いっそ今の俺のポストを譲りたい位だ。」
「はは、いやそんな恐れ多い…。」
山本らに頼み込み、久保はメディアへの露出を極端に避けていた。
別に英雄願望的なのが皆無な訳ではないが、これ以上陸海軍の強硬、守旧派に目をつけられたくないのと、何よりもアメリカの諜報員にマークされるのを嫌ったのである。
自分個人の戦略戦術を解析されると、後々が面倒になる…。まぁ、ある程度勘づかれてはいるかもしれないが。
「さて…現状の戦況であるが…。」
山本が表情を引き締める。
「マリアナ、サイパン方面に頻繁にBー29が、時に3桁単位で襲来してきておる。」
「はっ、聞き及んでおります。
我が方は54型零戦からの改三号噴進弾の上方発射と、88ミリFLAK改高射砲で損害は与え、善戦するも、2.3隻のエセックス級空母が戦線に復帰しつつあるとの話…それ経由で護衛戦闘機がつくと、かなり厄介です。」
「うむ…そうなると、零戦の強化が急務だが…本当に『アレ』で行くつもりかね?」
「御意、すでに試作段階での不具合解決にも目処がついております。
三菱としては『オリジナル』を超える気概でいくとのことで…。
来月にも制式採用といけるかと。」
「それならば頼もしいな。うむ。
ところで満州の件は確かなのかね?」
「はい。中村が言うには、地質学者を総動員し、これまでとは違う切り口で発見に至ったようで…。」
「獲得できれば我が帝国の抱える問題の半分は一気に解決…しかし内外に新たな火種を撒くことになるな。」
「仰る通りです。
故に、現在は総理と閣下のみの超極秘事項として…。」
「うむ。そうだな…。」
二人はもうしばし、今後の戦略について語り合うこととなる。
同時に「統合参謀本部付 特別管理官」なる未知のポストに任ぜられる。
まぁ、今の「自由過ぎる」立場や言動への追認とも言えるのであるが…。
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「おい、見ろよ、久保中将閣下だぜ?」
「なんなんだろうな。異例の出世とか、情実人事とか、そういう騒ぎじゃねえぞ。」
「あー、案外山本閣下がアレでアレなのかも…。」
「しっ、聞こえるぞ。」
丸聞こえなんだが…。
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「はっは、そんな君ももはや中将閣下。
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いっそ今の俺のポストを譲りたい位だ。」
「はは、いやそんな恐れ多い…。」
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「さて…現状の戦況であるが…。」
山本が表情を引き締める。
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「はっ、聞き及んでおります。
我が方は54型零戦からの改三号噴進弾の上方発射と、88ミリFLAK改高射砲で損害は与え、善戦するも、2.3隻のエセックス級空母が戦線に復帰しつつあるとの話…それ経由で護衛戦闘機がつくと、かなり厄介です。」
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