総統戦記~転生!?アドルフ・ヒトラー~

俊也

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難題

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明けて1943年1月4日…


「パレード!?」
宣伝相ゲッベルスは、薄笑いを浮かべながら頷いた。どこか自身の頭脳に絶対的な自信を持つ者特有の、主君をすらかすかに見下すような尊大さを感じさせる立ち居振る舞いであった。
「さようでございます総統閣下、敵の絶望的なまでの大包囲網から奇跡の脱出生還を果たした第6軍将兵は英雄で御座います。メディアでも十分アナウンスして、記録映画も…国民の士気はいやが上にも高まりましょう!」
「いや、そこまでする必要はあるまい。それよりも彼らには十分な休暇を与えたい。宣伝省としては最低限、彼らの労をねぎらう報道がなされればそれでよかろう」
「は、ははっ。では記録映画の報道のみで…。」
ゲッベルズは若干不服そうであった。あまり自身の進言が総統に拒絶されたことが無かったかのかもしれない。
しかしそれでも最敬礼をし、了承はした。


なんかこいつ、大学時代のゼミの教授に似てるな…。生理的にあまり受け付けない…




ゲッベルスを下がらせた後、腕を組んだ。




僕がヒトラーであるとなれば…「ユダヤ人」全般への扱いをどうするかが避けて通れない一大命題だ。
当然、虐殺行為など論外だ。させるわけにはいかない。


一応親衛隊に占領地での虐殺行為を禁止する通達を出してはいるが…。
獰猛な猟犬たる彼らに対しどれだけ効果があるか。
もっと徹底的な保護を命じるべきか。
そもそも側近の高官たちに怪しまれないか。


頭が痛くなるが、おろそかにしては「本来の史実」通りに僕は狂気の独裁者、大罪人となってしまう…。




今後は今現在、強制収容所に入れられているユダヤ人たちを少しでも、人道的に扱うよう指示を出していくしかない。本来は即解放すべきなのだろうが…。あくまでその辺は段階的に進めていくべきだと僕は考えた。そうこの時は…。



ボルマンが入室してきて、次の予定を告げる。


「総統閣下、マンシュタイン元帥との面談のお時間です。」
そうか、今日だったか。




「失礼いたします。」
見事な、国防軍式の敬礼。気品すら感じる。
第二次世界大戦で最も有能と称された将帥の一人。
大戦初期の西方電撃戦の立案者であり、クリミア半島とレニングラード攻撃を指揮。
そして先日のスターリングラード解囲作戦…。
まさに名将…。


そのマンシュタインが、今、僕の目の前にいる。
軍事史マニアとしての興奮を抑えるのに、内心必死だった。


「う、うむ、ご、ご苦労。」
「マイン・フューラ―。早速でありますが本題に入らさせていただきます。
スターリングラードでわが方を跳ね返して以降、赤軍はハリコフ方面への圧力を強めております。
このままですと同地区の友軍が包囲殲滅される危険が御座います。
我々と致しましては一時的にハリコフを放棄してでも、機動力を活かした柔軟な戦術に活路を見出したいと考えます。
何卒ハリコフ放棄の自由をお認めいただきたく…。」


「ふうむ、機動防御かね?」
そのフレーズが僕の口から出たことに、マンシュタインは一瞬驚いたようであった。
「左様で…御座います。」
「貴官がそこまでこだわるのであれば是非もない。ハリコフ方面の防御にまつわる一切を任せよう。無論拠点放棄の自由も認める。」
「はっ!ありがとうございます!」
明らかに、もっと僕の説得に手間取ると考えていたであろうマンシュタインは、意外そうな表情を浮かべつつも敬礼し、退出した。




これで、いい。当面の東部戦線は彼に委ねておけば間違いない。


僕は出されたコーヒーに口をつけた。








ボルマンからは次は診察だと告げられる。


彼と入れ替わりにでっぷりとした白衣の医師が入室してきた。
「総統閣下。お加減はいかがでございましょうか」
ねっとりとした笑み。
ヒトラーの主治医、テオドール・モレルか…。
まったく清潔感を感じない、小屋の中の豚のような印象だ。
「特に変調はない。快調そのものだ。」
僕はそう言った。嘘や強がりでなく、実際史実のヒトラーのような体調不良を感じることは転生以来無いのである。
魂や意識だけでなく、健康面の状態までも25歳の黒田泰年青年になっているのか…。


「左様で御座いますか。」
モレルは笑みを崩さず、注射器を取り出す。
「ではいつもの…失礼いたします」
「ま、待て!それは何だ?」
「ブドウ糖の注射で御座いますよ。ご説明したかと…」
言うや否や、有無を言わせぬ調子でモレルは僕の腕に注射針を刺した…。
今回は…甘んじて受けるしかないか。そもそも本当にブドウ糖かも怪しいが。


去り際に今週の分ですと大量の錠剤を押し付けられる。






もちろん、飲むつもりはない。



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