8 / 305
第一章 秋空に特急に怪猫
幸せの駅
しおりを挟む
長野に入ると、風景がガラリと変わった。
「日本アルプス」の名を冠するヨーロッパアルプスに似た山々に、東洋的な情緒が溢れるように相俟って、その美しさは、今まで見た日本のどの絶景とも違っている。
植物の植生にも、変化が見られる。
山梨では無かったモミの木の大木が群生し、言葉を失いそうな迫力が、ズシンと胸を打つ。
ちょっとハイジしてるような?
「素敵ね~!何だか景色が煌めいて見える。」
終着駅の上諏訪駅は、もう目の前。佑夏は子供のように目をキラキラさせている。
山梨より、澄んだ空気の為か、世界全体が輝いているようだ。
明るく強い陽射しが照り付けるのに、気温は上がらない長野独特の気候。
古くから、軽井沢が避暑地として人気のある理由。
そして、快晴の青い空に、トンボが舞っている。
霧ヶ峰で、僕達を待つ小動物はトンボが好物のはず。
冬眠に備えて、食べまくっているだろうか?
夜行性だから、今頃は巣穴の中かな。
その地に向かう僕達の汽車旅も、間もなく終わりを告げることになる。
地元の駅から、新宿までは夜行バスに乗った。
実に六時間もの道のり、しかも出発は深夜。
男一人なら、そのまま特急に乗り継ぐところだが、美しいお姫様をエスコートの最中。
大急ぎで、新宿のネカフェでシャワーを浴び、あずさに飛び乗った。
こんな「美女を何だと思ってるんだ?」と言われそうな旅程にも関わらず、佑夏は、終始にこやかである。
ぽん太の奴、何が「住む世界が違う」だ!
佑夏は、僕とピッタリの庶民派じゃないか。
僕はバブルを知らない世代。
時代によっては現実に存在したらしい、移動はグリーン車か、それなりの車の助手席、宿泊は一流ホテルでなくてダメだという女性。
が、僕はそういった人を知らない。
もし佑夏が、そんな人だったら、今こうして、一緒に列車に乗ってはいないと思う。
再び、彼女が幸福論を解説する。
「アランのお話だとね、汽車から見える景色は無料なんだって。」
「え?俺達は料金、払ってるよ?」
「それは運賃でしょ?風景を見るのに、お金は払っていないのよ。
車窓から見える世界は、人に見せてお金儲けする為に、造られたものじゃないわ。」
「ああ、そりゃそうだね。」
「最高コスパね!
私、ありのままの自然の風景や、線路沿いの人達の普段の生活見れて、とっても楽しかった!
ありがと、中原くん!」
「いや、俺は何もしてないよ。
そういえばさ、インディアンの格言に、
゛大地も自然も、みんな地球の無償の贈り物だ。欲にかまけた連中が自分のものだと言い出して、金を取って見せるようになった“っていうのが、あるんだってさ。」
「そうよねー。自然の美しさは、お金じゃ計れないよね。」
自然の造形美は無料。
こんな当たり前のことが、当たり前でない、今の世の中。
今、氣付いたが、佑夏の口から、T◯Lや、U◯Jの名前を聞いたことが無い。
あれは、今回の長野行きとは対極だ。
僕も興味が無い。
人口の、大していい光景とも思えないものを、バカ高い金を取って見せる。
しかも、観てる時間より、並んでる時間の方が長い。
知り合いに、英会話で知り合った、LA出身のアメリカ人男性がいるんだけど。
彼は、家の目の前がディズ◯ーランドだったが、一度も行ったことが無いそうだ。
「The height of stupidity.」愚の骨頂、というのが、そのアメリカ人のDL評だったりする。
その人とは、僕は氣が合う。
やはり、類は友を呼んでいるのである。
そこ行くと、アラン推薦の汽車旅の何と素晴らしいことか!
彼女が気に入ってくれて、本当に良かった。
「佑夏とはこれでお別れ」。
あの怪猫にそう言われた不安を打ち消す為に、自分に何度も言い聞かせる。
ぽん太!この子と俺は似た者同士だ!
中央本線、特急あずさ3号が、目的地、上諏訪駅に到着したのは、その時である。
「日本アルプス」の名を冠するヨーロッパアルプスに似た山々に、東洋的な情緒が溢れるように相俟って、その美しさは、今まで見た日本のどの絶景とも違っている。
植物の植生にも、変化が見られる。
山梨では無かったモミの木の大木が群生し、言葉を失いそうな迫力が、ズシンと胸を打つ。
ちょっとハイジしてるような?
「素敵ね~!何だか景色が煌めいて見える。」
終着駅の上諏訪駅は、もう目の前。佑夏は子供のように目をキラキラさせている。
山梨より、澄んだ空気の為か、世界全体が輝いているようだ。
明るく強い陽射しが照り付けるのに、気温は上がらない長野独特の気候。
古くから、軽井沢が避暑地として人気のある理由。
そして、快晴の青い空に、トンボが舞っている。
霧ヶ峰で、僕達を待つ小動物はトンボが好物のはず。
冬眠に備えて、食べまくっているだろうか?
夜行性だから、今頃は巣穴の中かな。
その地に向かう僕達の汽車旅も、間もなく終わりを告げることになる。
地元の駅から、新宿までは夜行バスに乗った。
実に六時間もの道のり、しかも出発は深夜。
男一人なら、そのまま特急に乗り継ぐところだが、美しいお姫様をエスコートの最中。
大急ぎで、新宿のネカフェでシャワーを浴び、あずさに飛び乗った。
こんな「美女を何だと思ってるんだ?」と言われそうな旅程にも関わらず、佑夏は、終始にこやかである。
ぽん太の奴、何が「住む世界が違う」だ!
佑夏は、僕とピッタリの庶民派じゃないか。
僕はバブルを知らない世代。
時代によっては現実に存在したらしい、移動はグリーン車か、それなりの車の助手席、宿泊は一流ホテルでなくてダメだという女性。
が、僕はそういった人を知らない。
もし佑夏が、そんな人だったら、今こうして、一緒に列車に乗ってはいないと思う。
再び、彼女が幸福論を解説する。
「アランのお話だとね、汽車から見える景色は無料なんだって。」
「え?俺達は料金、払ってるよ?」
「それは運賃でしょ?風景を見るのに、お金は払っていないのよ。
車窓から見える世界は、人に見せてお金儲けする為に、造られたものじゃないわ。」
「ああ、そりゃそうだね。」
「最高コスパね!
私、ありのままの自然の風景や、線路沿いの人達の普段の生活見れて、とっても楽しかった!
ありがと、中原くん!」
「いや、俺は何もしてないよ。
そういえばさ、インディアンの格言に、
゛大地も自然も、みんな地球の無償の贈り物だ。欲にかまけた連中が自分のものだと言い出して、金を取って見せるようになった“っていうのが、あるんだってさ。」
「そうよねー。自然の美しさは、お金じゃ計れないよね。」
自然の造形美は無料。
こんな当たり前のことが、当たり前でない、今の世の中。
今、氣付いたが、佑夏の口から、T◯Lや、U◯Jの名前を聞いたことが無い。
あれは、今回の長野行きとは対極だ。
僕も興味が無い。
人口の、大していい光景とも思えないものを、バカ高い金を取って見せる。
しかも、観てる時間より、並んでる時間の方が長い。
知り合いに、英会話で知り合った、LA出身のアメリカ人男性がいるんだけど。
彼は、家の目の前がディズ◯ーランドだったが、一度も行ったことが無いそうだ。
「The height of stupidity.」愚の骨頂、というのが、そのアメリカ人のDL評だったりする。
その人とは、僕は氣が合う。
やはり、類は友を呼んでいるのである。
そこ行くと、アラン推薦の汽車旅の何と素晴らしいことか!
彼女が気に入ってくれて、本当に良かった。
「佑夏とはこれでお別れ」。
あの怪猫にそう言われた不安を打ち消す為に、自分に何度も言い聞かせる。
ぽん太!この子と俺は似た者同士だ!
中央本線、特急あずさ3号が、目的地、上諏訪駅に到着したのは、その時である。
11
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
黒に染まった華を摘む
馬場 蓮実
青春
夏の終わりに転校してきたのは、忘れられない初恋の相手だった——。
高須明希は、人生で“二番目”に好きになった相手——河西栞に密かに想いを寄せている。
「夏休み明けの初日。この席替えで、彼女との距離を縮めたい。話すきっかけがほしい——」
そんな願いを胸に登校したその朝、クラスに一人の転校生がやってくる。
彼女の名は、立石麻美。
昔の面影を残しながらも、まるで別人のような気配をまとう彼女は——明希にとって、忘れられない“初恋の人”だった。
この再会が、静かだった日常に波紋を広げていく。
その日の放課後。
明希は、"性の衝動"に溺れる自身の姿を、麻美に見られてしまう——。
塞がっていた何かが、ゆっくりと崩れはじめる。
そして鬱屈した青春は、想像もしていなかった熱と痛みを帯びて動き出す。
すべてに触れたとき、
明希は何を守り、何を選ぶのか。
光と影が交錯する、“遅れてきた”ひと夏の物語。
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。
たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】
『み、見えるの?』
「見えるかと言われると……ギリ見えない……」
『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』
◆◆◆
仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。
劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。
ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。
後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。
尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。
また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。
尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……
霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。
3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。
愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー!
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない
七星点灯
青春
雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。
彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。
しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。
彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる