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第二章 霧ヶ峰のヤマネ
銀河鉄道に乗って
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「ねえ、中原くん..........。」
そう言った佑夏の手は僕の髪に触れたまま、彼女はジッと僕を見つめている。
キラキラ瞬く高原の星空の下で、僕達は並んで仰向けに横になっているのである。
ついに来た!「キスOK」のサイン!?
僕はこの時を三年も待っていた!!!
「あのね.......。」
分かってるよ!佑夏ちゃん!キスして欲しいんだろ!?
もう、こっちから覆いかぶさってしまおう!!!!!
完全に「いただきます状態」だぁー!!いくぞ!!!
「天体は地上の出来事や、人間の運勢に強い影響を持ってて、それで占星術があったりするんだけど............。」
え?
「暗闇の中に揺らめく光は、人の心を癒すわ。広い夜空に輝く星なら、なおのことね。」
なんだ、キスしてくれるんじゃないのか。
佑夏は、7月7日七夕生まれ、星には人一倍、強い思い入れがあるのかもしれない。
「うん。俺も星空は好きだよ。」
佑夏はクスクス笑う
「そう言ってくれると思ったわ。」
なんとなく、僕も調子に乗って
「自然の光は癒しの力があるんだよね。」
「そうね。ロウソクや蛍の光も素敵だけど、いつか消えてしまう。
だけど、星の光は、私達には永遠と言っていい時間だわ。」
佑夏は顔を星空に向けて、手足を大の字に広げ、目を閉じて、スゥーッと一つ大きく息をする。
くどいようだが、「どうぞキスして下さい状態」に見えるんだけど?佑夏ちゃん!?
だけど、そんな僕の劣情も、いつしか消えてゆく。
彼女を性欲の対象として見たことなど、一度も無い。
(と、言いたいところだが、そうも言い切れないところは悲しい。)
「私達が見てる星の光は、もう何千年も前のもので、その星はもう、この世に無いかもしれないのよね。
なんだか、自分がすごくちっぽけに思えるわ、ロマンチックね~。」
佑夏の口元に、いつもの優しげな微笑みが浮かぶ。
「いやー、ホントだよ。」
「キスしたい病」は去っていき、僕も星の世界の住人に。
「佑夏ちゃん、幸福論に星空の話は出てくるの?」
「うん、出てくるわ。アランのね。゛遠くを見なさい“って。
人の目は遠いところを見ると落ち着くんだって。
だから、星空や海の地平線を見ることは、目がやすらいで、思考も自由になることなのね。」
「それ、合氣道も同じだよ。俺も“目線は遠くに向けろ゛って教えてる。」
「そうなの?星空を見ると内臓までしなやかになって、身体もしっかりしてくるって書いてあったわ。
凄いわね。
でも、自分の意志でそうしようとすると、反対にぎこちなくなってしまう。
だから、アランは言うのね、゛自分のことを考えないで遠くをみなさい“って。」
「深い話だね。武術に通じるよ。」
「そーかー、フフフ。合氣道も素敵ね。」
昼間のトレッキング中の佑夏は元氣いっぱいで、いかにも子供を遊ばせる小学校の先生といった感じだった。
しかし今、月光と星明かりを浴び、幻想的に白く光り輝く彼女は、優雅に、エレガントで落ち着いた大人の女性の魅力全開だ。
いくつもの違った表情を持っているのが、この人のただ者ではない所である。
物真似が死ぬほど上手いのは、記憶に新しい。
髪の白い貝殻についている、ピンク、黄色、水色の三色の星形シーグラスが、まるで夜空の星に共鳴するように美しく輝く。
本当に、月と星の女神だ。
でも、佑夏は、同年代の他の女子大生のように、恋人と花火大会を観たいと思わないのだろうか?
だが、僕には分かる。
彼女が花火を観るなら、男と一緒ではなく、施設にいる親の無い子供達を連れて行くだろう。
この子は、そういう子だ。
それに、人混みの中で、押すな押すなで花火を観るより、この高原の星空の方が、僕の姫にはずっと似合っている。
「子供達にね、もっと星に興味持って欲しいんだけど。」
佑夏は澄んだ瞳で夜の天空を見つめ、宇宙と一体化している。
「全然ダメなの?」
「そうなのよ、フフフ。特に男の子なんか、”ワラテルマン”や”仮面ライバー”の怪獣や怪人の名前とか、”ガガガの下駄郎”の妖怪の名前とか、”鬼亡の刀”の鬼の名前とか、そんなのばっかり覚えてるわ。」
「分かるよ。俺もそうだったな~、ハハハ!」
水野さんのカリンバが聴こえる宿との距離、うるさくないかな?僕達は控えめに小声で笑い合う。
それにしても、これだけいい雰囲気なのに、何も起きないとは。
やはり、佑夏の心はもう、あの男の元に飛んでいるのだろうか?
残念なんてもんじゃないが、ぽん太の言う通り、この子のことは諦めるしかないのかもしれない。
もし、彼女が日本を離れることになっても、その時はアラン流に笑顔で見送ってあげよう。
これでも、僕は武術家だ。
みっともなく、女にすがったりするような真似はできない。
しかし、どこまでも生徒思いの佑夏は、男の話より、子供の話をする。
「子供達にね、星座のカードゲームやボードゲームで星の名前、覚えてもらおうと思ったんだけど、高いのが多くて。私、自分で作ろうかな?」
「うん、それがいいよ。佑夏ちゃん、絵上手いからな~。」
佑夏手製のゲームで遊べるのか?楽しいだろうな、羨ましい生徒達だよ。
「中原くん、ほら、山羊座の星じゃないかな?上ってきたよ!」
佑夏が南の空を指差す。
「俺の星座、覚えてくれてたの?」
嬉しいが、優しい佑夏のことだから、知り合い全員の星座を覚えているだろう。
しかし星空は、こんなにも心を落ち着かせてくれるのか。
そして、また、夜風が佑夏の肌の甘い香りを運んでくる。
まさに至福。夢のような一時。
だが、そろそろ宿に戻る時間だ。
「もう、メシの時間だね。」
「お夕飯の後、理夢ちゃんに勉強教えることになってるの。」
「こんなとこに来てまで、勉強させられるの?気の毒だな。」
「わりと、いい大学、狙ってるみたいよ。」
その時、一筋の流れ星が、夜空を駆け抜けていった。
教員採用試験の合格発表まで、あと半日ちょっと。
吉兆なのか?そうであってくれ。
「高原に 幸せ告げる 流れ星」
第二章・完
第三章 「幸福論の四季」に続く
そう言った佑夏の手は僕の髪に触れたまま、彼女はジッと僕を見つめている。
キラキラ瞬く高原の星空の下で、僕達は並んで仰向けに横になっているのである。
ついに来た!「キスOK」のサイン!?
僕はこの時を三年も待っていた!!!
「あのね.......。」
分かってるよ!佑夏ちゃん!キスして欲しいんだろ!?
もう、こっちから覆いかぶさってしまおう!!!!!
完全に「いただきます状態」だぁー!!いくぞ!!!
「天体は地上の出来事や、人間の運勢に強い影響を持ってて、それで占星術があったりするんだけど............。」
え?
「暗闇の中に揺らめく光は、人の心を癒すわ。広い夜空に輝く星なら、なおのことね。」
なんだ、キスしてくれるんじゃないのか。
佑夏は、7月7日七夕生まれ、星には人一倍、強い思い入れがあるのかもしれない。
「うん。俺も星空は好きだよ。」
佑夏はクスクス笑う
「そう言ってくれると思ったわ。」
なんとなく、僕も調子に乗って
「自然の光は癒しの力があるんだよね。」
「そうね。ロウソクや蛍の光も素敵だけど、いつか消えてしまう。
だけど、星の光は、私達には永遠と言っていい時間だわ。」
佑夏は顔を星空に向けて、手足を大の字に広げ、目を閉じて、スゥーッと一つ大きく息をする。
くどいようだが、「どうぞキスして下さい状態」に見えるんだけど?佑夏ちゃん!?
だけど、そんな僕の劣情も、いつしか消えてゆく。
彼女を性欲の対象として見たことなど、一度も無い。
(と、言いたいところだが、そうも言い切れないところは悲しい。)
「私達が見てる星の光は、もう何千年も前のもので、その星はもう、この世に無いかもしれないのよね。
なんだか、自分がすごくちっぽけに思えるわ、ロマンチックね~。」
佑夏の口元に、いつもの優しげな微笑みが浮かぶ。
「いやー、ホントだよ。」
「キスしたい病」は去っていき、僕も星の世界の住人に。
「佑夏ちゃん、幸福論に星空の話は出てくるの?」
「うん、出てくるわ。アランのね。゛遠くを見なさい“って。
人の目は遠いところを見ると落ち着くんだって。
だから、星空や海の地平線を見ることは、目がやすらいで、思考も自由になることなのね。」
「それ、合氣道も同じだよ。俺も“目線は遠くに向けろ゛って教えてる。」
「そうなの?星空を見ると内臓までしなやかになって、身体もしっかりしてくるって書いてあったわ。
凄いわね。
でも、自分の意志でそうしようとすると、反対にぎこちなくなってしまう。
だから、アランは言うのね、゛自分のことを考えないで遠くをみなさい“って。」
「深い話だね。武術に通じるよ。」
「そーかー、フフフ。合氣道も素敵ね。」
昼間のトレッキング中の佑夏は元氣いっぱいで、いかにも子供を遊ばせる小学校の先生といった感じだった。
しかし今、月光と星明かりを浴び、幻想的に白く光り輝く彼女は、優雅に、エレガントで落ち着いた大人の女性の魅力全開だ。
いくつもの違った表情を持っているのが、この人のただ者ではない所である。
物真似が死ぬほど上手いのは、記憶に新しい。
髪の白い貝殻についている、ピンク、黄色、水色の三色の星形シーグラスが、まるで夜空の星に共鳴するように美しく輝く。
本当に、月と星の女神だ。
でも、佑夏は、同年代の他の女子大生のように、恋人と花火大会を観たいと思わないのだろうか?
だが、僕には分かる。
彼女が花火を観るなら、男と一緒ではなく、施設にいる親の無い子供達を連れて行くだろう。
この子は、そういう子だ。
それに、人混みの中で、押すな押すなで花火を観るより、この高原の星空の方が、僕の姫にはずっと似合っている。
「子供達にね、もっと星に興味持って欲しいんだけど。」
佑夏は澄んだ瞳で夜の天空を見つめ、宇宙と一体化している。
「全然ダメなの?」
「そうなのよ、フフフ。特に男の子なんか、”ワラテルマン”や”仮面ライバー”の怪獣や怪人の名前とか、”ガガガの下駄郎”の妖怪の名前とか、”鬼亡の刀”の鬼の名前とか、そんなのばっかり覚えてるわ。」
「分かるよ。俺もそうだったな~、ハハハ!」
水野さんのカリンバが聴こえる宿との距離、うるさくないかな?僕達は控えめに小声で笑い合う。
それにしても、これだけいい雰囲気なのに、何も起きないとは。
やはり、佑夏の心はもう、あの男の元に飛んでいるのだろうか?
残念なんてもんじゃないが、ぽん太の言う通り、この子のことは諦めるしかないのかもしれない。
もし、彼女が日本を離れることになっても、その時はアラン流に笑顔で見送ってあげよう。
これでも、僕は武術家だ。
みっともなく、女にすがったりするような真似はできない。
しかし、どこまでも生徒思いの佑夏は、男の話より、子供の話をする。
「子供達にね、星座のカードゲームやボードゲームで星の名前、覚えてもらおうと思ったんだけど、高いのが多くて。私、自分で作ろうかな?」
「うん、それがいいよ。佑夏ちゃん、絵上手いからな~。」
佑夏手製のゲームで遊べるのか?楽しいだろうな、羨ましい生徒達だよ。
「中原くん、ほら、山羊座の星じゃないかな?上ってきたよ!」
佑夏が南の空を指差す。
「俺の星座、覚えてくれてたの?」
嬉しいが、優しい佑夏のことだから、知り合い全員の星座を覚えているだろう。
しかし星空は、こんなにも心を落ち着かせてくれるのか。
そして、また、夜風が佑夏の肌の甘い香りを運んでくる。
まさに至福。夢のような一時。
だが、そろそろ宿に戻る時間だ。
「もう、メシの時間だね。」
「お夕飯の後、理夢ちゃんに勉強教えることになってるの。」
「こんなとこに来てまで、勉強させられるの?気の毒だな。」
「わりと、いい大学、狙ってるみたいよ。」
その時、一筋の流れ星が、夜空を駆け抜けていった。
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