ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

文字の大きさ
255 / 305
第十四章 礼拝堂で

ヤマネ姫誕生

しおりを挟む
「大花火 宴の後は ゴミの山」

 一次試験終了後、佑夏は、若葉寮でのボランティアと、ぽん太の世話を再開。

 珍しく、彼女が施設の子供達に、「花火大会に行こう~!」と言うもので、驚いたのも束の間。

 僕達が行ったのは、市の最も大きな花火大会の、翌日、それも何故か午前中である。

 何故ならば、目的はなんと、「ゴミ拾い」!

 佑夏によれば、ゴミ拾いの本を出している人がいて、この社会奉仕によって人は上機嫌となり、アランの幸福論と同じ効果が得られるのだという。

「ゴミを拾う人は、神様が誉めてくれて、幸せになれるよ~!人の捨てた運を拾っちゃおう!」

 と、子供達を鼓舞する佑夏。美人なだけじゃなくて、つくづく魅力的な人だ。
 ダメとは分かっていても、惚れ直したくなってしまう。

 子供にとっては、お宝のようなキャラ物を拾う子もいて、ゴミ拾い大会は大いに盛り上がる。

 実際、ゴミ拾いは運氣も上がり、他者へ想いをはせて、思いやりの心が生まれ、利己性を克服することもできる。
 自己肯定感も上がって、幸せを感じられるのだという。しかも、タダ。至れり尽くせりだ。

 ゴミ拾いの後は、毎年、恒例となっている、天の川を観る会。
 また、佑夏のお父上がバスで送迎してくれて、楽しい夜となった。

 人込みの花火大会の中、自分達しか目に入らないで、ゴミをまき散らす愚行に比べ、なんて美しいのだろう。
 佑夏が美しいのは、容姿だけではない、その人生のセンスの良さには舌を巻いてしまうな。


 そして、また、ぽん太の世話に来てくれた彼女に、二次試験の合格発表の日、僕は、この町にはいないことを伝える。

「佑夏ちゃん、俺、二次の合格発表の日、長野に行ってくるから。」

 大切な日に、自分はここにいない。
 暗に、潮崎さんとお幸せに、というメッセージを込めたつもりだ。

「え?長野?何しに行くの?」

「霧ヶ峰で、ヤマネを30年、撮り続けてる写真家の人がいてさ。本人のガイドで撮影場所を回るツアーに、行ってくるんだ。」

 ここで、スマホの、ツアー詳細画像を見せる。

「へぇ~、おもしろそ~!ねえ、中原くん、相手は?一人で行くの?」

 なんで、そんなことを聞く?
 君にフラれた男が、失恋の痛手を癒す、男の傷心一人旅だよ。

「うん、俺一人で行くよ。これ、その人の写真集。」

 東山大悟氏のヤマネの写真集を、僕は佑夏に手渡す。だが、表紙の愛くるしいヤマネの姿を見た彼女は絶叫!

 いくら止めても、自分も一緒に行くと言って聞かない。

 こうして、佑夏は僕の脳内で「ヤマネ姫」と呼ばれることになったのである。

 幸福論の一人、ラッセルは、とかく行動することの重要性を説いている。

 悩んでいる暇があったら、行動しろ!ということだ。

 確かに、自室に閉じ籠もって合格発表の結果に怯えていては、恐怖は何十倍にも増幅されそうだ。

 こんな大事な日に長野旅行。

「幸せ研究家」の佑夏らしいと言えば、佑夏らしい。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

鷹鷲高校執事科

三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。 東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。 物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。 各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。 表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

学園のアイドルに、俺の部屋のギャル地縛霊がちょっかいを出すから話がややこしくなる。

たかなしポン太
青春
【第1回ノベルピアWEB小説コンテスト中間選考通過作品】 『み、見えるの?』 「見えるかと言われると……ギリ見えない……」 『ふぇっ? ちょっ、ちょっと! どこ見てんのよ!』  ◆◆◆  仏教系学園の高校に通う霊能者、尚也。  劣悪な環境での寮生活を1年間終えたあと、2年生から念願のアパート暮らしを始めることになった。  ところが入居予定のアパートの部屋に行ってみると……そこにはセーラー服を着たギャル地縛霊、りんが住み着いていた。  後悔の念が強すぎて、この世に魂が残ってしまったりん。  尚也はそんなりんを無事に成仏させるため、りんと共同生活をすることを決意する。    また新学期の学校では、尚也は学園のアイドルこと花宮琴葉と同じクラスで席も近くなった。  尚也は1年生の時、たまたま琴葉が困っていた時に助けてあげたことがあるのだが……    霊能者の尚也、ギャル地縛霊のりん、学園のアイドル琴葉。  3人とその仲間たちが繰り広げる、ちょっと不思議な日常。  愉快で甘くて、ちょっと切ない、ライトファンタジーなラブコメディー! ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

『俺アレルギー』の抗体は、俺のことが好きな人にしか現れない?学園のアイドルから、幼馴染までノーマスク。その意味を俺は知らない

七星点灯
青春
 雨宮優(あまみや ゆう)は、世界でたった一つしかない奇病、『俺アレルギー』の根源となってしまった。  彼の周りにいる人間は、花粉症の様な症状に見舞われ、マスク無しではまともに会話できない。  しかし、マスクをつけずに彼とラクラク会話ができる女の子達がいる。幼馴染、クラスメイトのギャル、先輩などなど……。 彼女達はそう、彼のことが好きすぎて、身体が勝手に『俺アレルギー』の抗体を作ってしまったのだ!

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...