ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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最終章 湖面の誓い

幸せの手袋

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 人間達の諍いを他所に、ノビタキ達は、さえずり続けている。
 僕達を包む、朝もや、美しい光の帯もそのまま。

 争いが無ければ、こんなにも、美しい世界。

「下のお名前、なんて仰るんですか?♪」

 普通なら、こんな奴に!と思うだろう。
 しかし、リーダーの男に、どこまでも優しく明るく、ヤマネ姫は話しかけていく。

「佑夏ちゃん!」「佑夏ちゃん!」、

「白沢先生!」「白沢先生!」

 僕と水野さんと、吉岡親子が彼女を制止しようとする。

 左手を振り、笑って振り向くヤマネ姫。

「は~い!♪佑夏で~す!あ、申し遅れました、私、佑夏っていいます!」

 すぐまた、リーダーの男に振り返る。

 違うって、そうじゃなくて.......。だめだ、こりゃ......。

「ごめんなさい。もう一度。お名前、教えて下さい。」

 これだけの美女の微笑み、男なら耐えられないだろう、リーダーの男もホッとしたらしく、少し笑って、重い口を開く。

「あ、テ.......、テツオだ。」

「テツオさん!私の宝物、見て下さい!」

 佑夏は「むすんでひらいて」のポーズで、両掌を、この男に見せる。

 彼女の手袋、なんと左右別なのである。

 それで、さっき、水野さんが聞きかけたのだ。

「あ、う。何か綺麗だな。」

「そうでしょう?新品には無い、趣がありますよね?海岸で、お日様の光に照らされてたんです。
 これも、そうですよ、海のシーグラスです♪」

 佑夏は髪の、真帆さんの貝殻を指差す。三色のシーグラスが、高原の朝日に、この世の物とは思えない、美しい煌めきを放っている。

 利き腕の左のグローブは、山に似合うパステルグリーン、右手は彼女の好きな柑橘類のような、爽やかなオレンジ色。

 ヤマネ姫の言うように、海の砂浜で、日光の力で消毒されていた為、古物なのに、最初から不潔さが無かった。

 東山さん初め、ここにいる誰もが、興味深々で、この手袋を見つめている。
 一先ず、休戦か。

「私、小学校の先生になりたいんですけど、この手袋コレ、小学生の子供達にもらったんです!
 みんなで、砂浜のゴミ拾いした時に♪」

 そう、右手のオレンジ色のグローブは、去年の夏、若葉寮の子供達と海に遊びに行った時(もちろん、僕も行った)、遊んだ後、全員でゴミ拾いをして、これを見つけたエリカちゃんにもらった物。

(エリカちゃんとは、沢遊びで川に落ち、僕が助け起こした子)

 この手袋、片方だけだというのに、佑夏は丁寧に洗浄し、大切に保管していた。

 そして、左手のグリーンのグローブは、今年の五月、潮騒小に教育実習に行った際、生徒達と、真帆さんが消えた海岸のゴミ拾いをして、子供にもらった物である。

「テツオさん、ビニール袋、まだありますか?」

「あ、ああ。あるぞ。」

「今日は、これから、ゴミ拾いにしましょう!ゴミを拾うと、幸せになれますよ!」


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