ヤマネ姫の幸福論

ふくろう

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最終章 湖面の誓い

自分の足で

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 車山の山頂には、リフトでも行ける。

 山田さんに、添乗員が「別料金にはなりますけど、お一人だけリフトで登ることも可能です。あるいは、皆さん全員でリフトにもできますが?」と提案するも、山田さんは「ご迷惑でなかったら、皆さんと自分の足で歩いて登りたい」と辞退する。

 せっかく霧ヶ峰在住の有名写真家・東山大悟氏のガイドで登れる貴重な機会だ、当然だろうな。

 もし、その場の流れで全員でリフトで登るなんてことになったとしたら?高所恐怖症の佑夏はたまったものではない。

 リフト案が却下されて、ヤマネ姫様もホッとしているようだ。
 なんで、そんなことが分かるって、顔がほんのり、赤くなってるから。微笑ましいピュアな表情、この子の魅力。

 恥ずかしがってる姫を見て、ちょっと、僕は彼女をからかってみたくなってしまう。

「いや~、良かったね、佑夏ちゃん!」

「や、やめて!仁助さん!」

 赤い顔をして、右手で顔を覆い、左手を振るヤマネ姫に、一同、不思議な顔をする。

「佑夏ちゃん、どうしたのよ?」

「い、いえ、何でもありません!私も、自分の足で歩くのが大好きです!さー!行きましょう!♪」

 水野さんに突っ込まれ、明るく返す佑夏の周囲、また何か、高原に花が咲いたような明るさが満ちて来る。
 訳も分からず、笑い出す僕達。

 道すがら、東山さんは、昨日と同じように、時々、立ち止まって解説してくれる。

東山わたしは、毎年、この美しい紅葉を見て思うんですけどね。木々は春に芽を出して、夏には枝に野鳥を休ませ、葉を生い茂らせて、動物にも人間にも涼しい休み場所を与えてくれます。

 一方で、雨や風、昼夜の温度差に耐えて、昆虫の食草にもなりますしね。

 見方を変えれば、木も厳しい自然の中で頑張って、生きています。

 だから、秋にはご褒美として、神様が色鮮やかな紅葉という贈り物を与えてくれているように感じるんです。

 私達も、この美しさを見て楽しみ、心を豊かにしてもらって、癒されてるんですね。」

 小林さんが、補足する。

「近年は、温暖化の影響がありますが、霧ヶ峰の最高気温は25度、最低気温は-25度。
 年間平均気温は4度あまりで、北海道の稚内とほぼ同じと言われています。」

 ルミ子さんが納得の表情で、高原を見渡しながら、呟く。

「そういうたら、ここは木ぃ少のうて、おっきな木も無おすなぁ。自然環境、厳しいさかいなんですなぁ。」

「そやけど、おかん。そやさかい、遠うまで見晴らしええし、お日様ポカポカ当たって、氣持ちええよ。」

 誰もが、理夢ちゃんの言う通りだと思う。寒くて暗い中、歩きたくないよね。





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