現実放棄し異世界へ

井出 遥玖

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第一章

一ー一

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 ふと目を開けると、目の前に誰かいた。
 …逆さ向きで、胡座をかいて、
「お前誰だ?」
 俺は思わず同学年の奴と話すようなぞんざいな口調で問いかけた。
「お、起きた起きた」
 相手は軽い口調で話しかけて来た。
「それにしても、神様相手にお前って、そりゃないっしょ」
 うん、まぁ予想はしてた。俺、確実に死んだし。相手浮いてるし。
 ただ、それでも敬語を使う気になれないのには、理由がある。
「アンタ本当に神様か?」
「見りゃわかるだろ?神様だよ」
 そう言った神様の姿を見る。
「…神様に見えねぇ」
 そう、その神様はどう見ても神様に見えなかった。体格は大体同年代男子の平均くらいだろう。金髪碧眼だし日本人じゃないのは確かだが、服装は渋谷にでも行けば上手く馴染めそうな、いわゆる今どきの高校生のような服装だ。
「ひっでーなぁ。これでも神様なんだぜ?まぁ、死神だけど」
 ついでにこの口調だし…
「話し進まねーからもういい?事情説明してぇんだけど?」
「ああ、わかった」
 もういいや、とりあえず話を聞こう。一々気にしていたらきりがない。
「んじゃ、まず、お前は自殺した。ここは死後の世界への別れ道、オーケー?」
「はいはい」
 そのぐらいは大体予想している。問題はそのあとだ。
「んで、お前には選択肢があります。生まれ変わるか、天国に行くか、地獄に行くか、異世界に行くか、どれがいい?」
「異世界」
 即答した。
「ま、どうせ生まれ変わりだとわかってたけど…て、はぁ!?」
 何で驚いてるんだ?普通に答えただけだろ?
「悪い取り乱した。異世界とは思わなくてな」
「?どう言うことだ?」
「あー、つまりな、大抵の自殺した人間はな、もうやだって言って生まれ変わるか、楽に生きたいって天国選ぶんだよ」
 なるほど、確かに大抵はそうだろうな。
「うーん」
「どうした神様?」
 何やら唸っていたから話しかけてみた。すると、
「そうそう、なかなか転生者は現れなかったからな、色々とサービスしてやるよ」
「サービス?」
「そ、ホントは行く異世界を決めて、あっちで会話を出来るようにしておくだけなんだけどな。な~んか俺が転生させた奴って、皆んな面白くなくってな。お前は面白そうだからな、時々見させて貰うぜ。あ、干渉はしないから安心しな」
 …少し引っかかる所もあるが、サービスが貰えるなら、まぁいいだろう。
「てことで、どんなサービスが欲しいんだ?順番に決めていこうぜ」
 なら、せっかくのサービスだ。好き勝手させて貰おうか…くっくっく…
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