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第六節 〜似非魔王と魔物、女王と兵隊〜
063 祈ったんだ、ただ
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結局彼女たちは押しかけ女房なのでしょうか。そんな人と魔物のほのぼのなお話です。
しかしながらハムくんのおケツは小さいですね。
それが本編主人公のマインドクオリティー。でも、キライじゃありません。
弱い者の切羽詰まった時の強さが、本編の描きたいところです。
※注
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
そうですか。迫力が、ッパないです。花魁蜘蛛中の女王陛下って訳ですね。でも此処は腹にグッと力を込めて。
『女王はお前ですよルル。既に譲位は済んでいますから』
『ですがお母様、わたくしは未だ』
『判っています。焦らないで、殿方は、ね。色々複雑なのですよ』
何言ってるかわからん。こっちが交渉の最初の一言を発しようと身構えた処で母娘でワケワカラン話を始められて出鼻を砕かれた。ここは強引でも引き戻さねば。母娘の話の内容も妙に怖ぇーし。
「女王よ」と僕。
『ハイ』と目の前の旧? 女王と頭の上にいる新? 女王が同時に返事をする。なにげにめんどくせえ。でも今は気にしない。ビジネスでも外交でも喧嘩でも交渉事は先ずは主導権を握る。所謂マウント合戦だ。だよな? 合ってるよな? それに既にペースを握られている気も……ええい、ままよ!
「お前たちは僕を魔王と呼ぶが、だが僕は断じて魔王などではない。それを最初にはっきりさせておく」
まず最初に其処をシッカリハッキリさせておく。後で言った言わないになったら嫌だし、これからの交渉内容がまあアレだし、こっちに責任取れって言われたら叶わない。流石に蜘蛛全部の相手はカンベンだし、無理。なんだよ、ビビってねーし。似非黙れ。そして鼻で笑うな。
『御随意のままに』と母娘。
へ? いいの?まあいいや。言質は取った。
「それでも、今だけはお前らの願いを叶えてやらぬでもない。お前たちの今だけ魔王になってやる。その代わり、僕の願いを利け」
『御随意のままに』と母娘。
へ? いいの? カモ? ネギを御背負の鴨様なのか? イイけど。ちょーらっきーなんですけどー。なにせ、似非の云う処では。
『真の魔王様でなければ“眷属”を本当の意味で使役することは出来ませんから』と花魁蜘蛛は言った。
僕の額を一筋の汗が漫画チックに流れる。重いんですけど。“真”って。……俺、言ったじゃん“今だけ”って。
前のギルド長の計画通りに進めても最後のひとつ『不滅の鎧』は手に入らない。何より、二年前より圧倒的に人が足りない。その為には『代わり』がいる。武器でも人員でも。俺には力がないから。
『申し訳ありません、魔王などの呼称は存外のものなのです。
眷属全ては今も昔も、あなた様の物です。生涯の忠誠を誓い従うものです。そして同時に秩序と正統を重んじ、それを守り準じ殉ずるものです』
百に届くかと思われる数の蜘蛛共の斉唱。
『『我が主よ、示せ。我らに『御たる誰か』を総べる『祝たる従者』である証を』』
『我らは“祝たる従者”が示す終末を招き示す鉾にて原初を守るべく示す盾なのです。示すのはただひとり、この世界をお終わりにするのか、もう一度始めるのか。顕せるのは“御身”唯一人のみ。遥か昔から、今この瞬間も』
僕は、足腰に力を込めて、大地から転げ落ちないように務める。でなければ、今すぐ此処から逃げ出してしまうから。
『でも、このままじゃ不味いのよね』と目の前の元女王様は溜め息と共に『主様ったら、まだ娘に“お情け”を掛けていないでしょ?』
へ? “お情け”って?
『もう、お母様ったら、止めてくださいまし。それは夫婦の問題ですから』
と、ルルが頬を染め、顔を手で覆いフリフリ、肩を窄めて恥じ入るように。ちょっと待て、なんだそれ。
『母親が口を出すものじゃないって、判ってはいるのですけど……ほら、殿方のマリッジブルーはコジらすと大変って言うし。ほら、男性ってちょっとのツマズキで不能になっちゃうって。ねぇ。』
ほらってなんだよ。マリッジブルーってなんだよ。ねぇって、なに? 不能になるの? 俺?
『主様、いい加減に娘と“契”ってやって下さいましな。今だけの魔王の臨時妻でも、二号さんでも、現地妻でも』とお母さんはオヨオヨと膝を流す横座りで袖で涙を隠し『親としては不憫でなりませんが、娘が、娘が望んでおりますので』
ごめんなさい。本当にゴメンナサイお母さん。僕が、全て悪いんです。僕が不甲斐ないばかりに。
『そうですよほんとに。しっかりしてくださいよもう。ではコレで決まりと言うことで』
『お母さま、ありがとうございました』
『しっかり励みなさい。アッチの方もね』下品か。
後で聞いた処、“お情け”とか、“契”とかは単に“パスを通す”ことらしい。単になんて簡単に言ってしまったが、“パス”自体がよく分から無いし、どうやったらいいのかなんてまるで謎。
“パス”といえば、ハナとの間にある繋がり? 的な? 僕とハナの魔力素粒子が繋がってるゲな。
でも、魔物である“花魁蜘蛛”との“パス”は少し違うらしい。受け取り側のほうが。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告
この世界とは別種である公彦の固有魔力素粒子を生み出す第ゼロ基門同軸亜次元領域【恒真星型】核魔融合炉と魔女であるハナ様の【簡易】核魔融合炉が納められた基本亜次元領域とが高多次元作用線での螺旋干渉で繋がり【トルク】と【燃費】の向上に貢献するブースト機能の事です。
と結論 ∮〉
出た、似非のカッチョイイ漢字ただ並べてルビ付って悦に入る得意の『博学な私は頭脳明晰眉目秀麗』解説。いいかよく聴け、お前の説明は何時も表面的で浅い、そして何処へも辿り着けない。
∮ 検索及び検証考察結果を報告
ガァーン!
でも最後まで聞いて下さい。魔女・魔人とのパスは唯のブーストですが、魔物とは直接的な公彦の魔力素粒子の受け渡しです。受託した魔物は以後、公彦の“眷属”となります。眷属とは“力”を与える代わりに、生殺与奪の権を得ることです。
と結論 ∮〉
重。重すぎる。そんなのいりません。
『まあ、大体あってますけど、難しく考えないで下さい。なにより、私達はそれを望んでいるのです。切望と言って良い程に』
と蜘蛛のお母さん。だけどもさ……、パスの通し方なんて、知らないし……。
『誰でも自身の固有の魔力を持っています。主様ほど特異ではありませんが、難しく考えずにそれを伝え合うだけでいいんです。言葉による会話とか、何となくの気持ちでもいいんです。相手をちょっとだけ気遣ったり、思い合ったり。手をつなぎたいなって思ったり。それが最初の“始まり”となります』
なんかそれ、現代社会では逆に非常に難しい事のように思えるけど。思いがあるだけに壁をつくるとか。
『ああ、それはもうひとりのサキュバスの娘さんですね。罪作りですね、主様は。特大岩石に当たって死ねばいいのに。ウチの娘泣かせたらタヒますよ」
なにげに酷いこと言ってナイカイ。それとサキュバス娘って、サチの事だよな、あの人を上から蔑む、死んだ魚を見るような目で僕を見るサチだよね。僕は何もしてないよ、したか。納得、でも放置。
『ウチの娘に対しては……娘に、怖いと、仰っていましたね』
確かにルルに『私は怖いか』と尋ねられ『怖いと』と返した。ただ何となく、なんとなくそう思ったから。
『それは、ご自分が抱えるある“思い”の反照が主様をその様なお気持ちにさせていると思われます。主様はご自分でも気づいておいでです。ご自分が人外の“眷属”をお持ちになる意味を。
我々眷属と一旦でも契れば、それは足を踏み出す事と同義なのです。足を踏み出せば、歩み始めなければなりません。何処かに向かって。
でも、主様は未だに迷っていらっしゃる、何方に決めるのが、怖いのです』
俺は、永遠の80年代モラトリアムかいってな。手の震えが止まらねえぜ。チキンで悪かったな。だって決められるか。世界を終わらせるか、もう一度始めるかなんて。
『申し訳ありません、出過ぎた真似を。
私達“眷属”はあなた様の永遠の下僕です。ですが、今世の主様とは“契”を結んでいない現況では真に私達を使役する事は難しいかと。主様がお望みの“力”を示すことは、叶いません』
なんか、イイように引きずり回されイイように絞められたのは僕の方だったぽい。ずっと主導権を握られてて。さすが何百年も生きているだけ在る。
∮ 検索及び検証考察結果を報告
主様、女性に年齢のことは。
と結論 ∮〉
それにルルだよ、股間の小公女蜘蛛って、ロ○路線で『ちゃま・でちゅ』語はどうした。マトモに喋ってたよね。
∮ 検索及び検証考察結果を報告
主様、女性は魔性。
考えたら負けです。
と結論 ∮〉
似非よ、お前だけでも、オレのことを“主”って呼んでくれるなよ。
∮ 検索及び検証考察結果を報告
公彦、肩の力を抜いて下さい。
と結論 ∮〉
結局、“パス”は通った。“お情け”とか“契”とか、特別なことは無かった。よく分かんなかったし。
だだ、ああ、今パスが通ったんだなあ。と思っただけだ。
パスがっ通って、僕は“花魁蜘蛛”を理解した。そして前ギルド長が残した“糸”への魔法陣章の定着方法も。
其れだけではなく、全てを。その先をも。
誤算っていうかなんて言うか、パスが通ったと思ったら途端にルルは母になった。卵を沢山生んだ。もうゴッチャリと。
『ごしゅじんちゃま、わたしたちの赤ちゃん、かわいいでちゅね」
母親になってまでもまだ「でちゅね」キャラ強行するのかよ。業突くだなオイ。
そして当然のことながらハナの詰問を受けた。
「オイよお、テメーよー。シャレんなんねーよなぁ。どうすんだこれ」
結局、僕は選んでいない。選べるかそんなもん。僕はこの世界から見たら異世界人で、色々特殊っぽいけど。それがどうした。
僕は僕だし、魔王なんかでは絶対ない。関係ない。何処かにそう明記されている訳でもなく、誰かに強要される言われもない。“祝たる従者”なんてクソッタレだ。
ただ、思ったんだ。この世界に来て、数も時間も少ないくせに、はからずも結んでしまった僕の周りの人達との何かを、願ったんだ。
そしたら、あっさりと“パス“が通っていた。
サチとは未だ通っていないけど。
祈ったんだ。ただ。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
しかしながらハムくんのおケツは小さいですね。
それが本編主人公のマインドクオリティー。でも、キライじゃありません。
弱い者の切羽詰まった時の強さが、本編の描きたいところです。
※注
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
そうですか。迫力が、ッパないです。花魁蜘蛛中の女王陛下って訳ですね。でも此処は腹にグッと力を込めて。
『女王はお前ですよルル。既に譲位は済んでいますから』
『ですがお母様、わたくしは未だ』
『判っています。焦らないで、殿方は、ね。色々複雑なのですよ』
何言ってるかわからん。こっちが交渉の最初の一言を発しようと身構えた処で母娘でワケワカラン話を始められて出鼻を砕かれた。ここは強引でも引き戻さねば。母娘の話の内容も妙に怖ぇーし。
「女王よ」と僕。
『ハイ』と目の前の旧? 女王と頭の上にいる新? 女王が同時に返事をする。なにげにめんどくせえ。でも今は気にしない。ビジネスでも外交でも喧嘩でも交渉事は先ずは主導権を握る。所謂マウント合戦だ。だよな? 合ってるよな? それに既にペースを握られている気も……ええい、ままよ!
「お前たちは僕を魔王と呼ぶが、だが僕は断じて魔王などではない。それを最初にはっきりさせておく」
まず最初に其処をシッカリハッキリさせておく。後で言った言わないになったら嫌だし、これからの交渉内容がまあアレだし、こっちに責任取れって言われたら叶わない。流石に蜘蛛全部の相手はカンベンだし、無理。なんだよ、ビビってねーし。似非黙れ。そして鼻で笑うな。
『御随意のままに』と母娘。
へ? いいの?まあいいや。言質は取った。
「それでも、今だけはお前らの願いを叶えてやらぬでもない。お前たちの今だけ魔王になってやる。その代わり、僕の願いを利け」
『御随意のままに』と母娘。
へ? いいの? カモ? ネギを御背負の鴨様なのか? イイけど。ちょーらっきーなんですけどー。なにせ、似非の云う処では。
『真の魔王様でなければ“眷属”を本当の意味で使役することは出来ませんから』と花魁蜘蛛は言った。
僕の額を一筋の汗が漫画チックに流れる。重いんですけど。“真”って。……俺、言ったじゃん“今だけ”って。
前のギルド長の計画通りに進めても最後のひとつ『不滅の鎧』は手に入らない。何より、二年前より圧倒的に人が足りない。その為には『代わり』がいる。武器でも人員でも。俺には力がないから。
『申し訳ありません、魔王などの呼称は存外のものなのです。
眷属全ては今も昔も、あなた様の物です。生涯の忠誠を誓い従うものです。そして同時に秩序と正統を重んじ、それを守り準じ殉ずるものです』
百に届くかと思われる数の蜘蛛共の斉唱。
『『我が主よ、示せ。我らに『御たる誰か』を総べる『祝たる従者』である証を』』
『我らは“祝たる従者”が示す終末を招き示す鉾にて原初を守るべく示す盾なのです。示すのはただひとり、この世界をお終わりにするのか、もう一度始めるのか。顕せるのは“御身”唯一人のみ。遥か昔から、今この瞬間も』
僕は、足腰に力を込めて、大地から転げ落ちないように務める。でなければ、今すぐ此処から逃げ出してしまうから。
『でも、このままじゃ不味いのよね』と目の前の元女王様は溜め息と共に『主様ったら、まだ娘に“お情け”を掛けていないでしょ?』
へ? “お情け”って?
『もう、お母様ったら、止めてくださいまし。それは夫婦の問題ですから』
と、ルルが頬を染め、顔を手で覆いフリフリ、肩を窄めて恥じ入るように。ちょっと待て、なんだそれ。
『母親が口を出すものじゃないって、判ってはいるのですけど……ほら、殿方のマリッジブルーはコジらすと大変って言うし。ほら、男性ってちょっとのツマズキで不能になっちゃうって。ねぇ。』
ほらってなんだよ。マリッジブルーってなんだよ。ねぇって、なに? 不能になるの? 俺?
『主様、いい加減に娘と“契”ってやって下さいましな。今だけの魔王の臨時妻でも、二号さんでも、現地妻でも』とお母さんはオヨオヨと膝を流す横座りで袖で涙を隠し『親としては不憫でなりませんが、娘が、娘が望んでおりますので』
ごめんなさい。本当にゴメンナサイお母さん。僕が、全て悪いんです。僕が不甲斐ないばかりに。
『そうですよほんとに。しっかりしてくださいよもう。ではコレで決まりと言うことで』
『お母さま、ありがとうございました』
『しっかり励みなさい。アッチの方もね』下品か。
後で聞いた処、“お情け”とか、“契”とかは単に“パスを通す”ことらしい。単になんて簡単に言ってしまったが、“パス”自体がよく分から無いし、どうやったらいいのかなんてまるで謎。
“パス”といえば、ハナとの間にある繋がり? 的な? 僕とハナの魔力素粒子が繋がってるゲな。
でも、魔物である“花魁蜘蛛”との“パス”は少し違うらしい。受け取り側のほうが。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告
この世界とは別種である公彦の固有魔力素粒子を生み出す第ゼロ基門同軸亜次元領域【恒真星型】核魔融合炉と魔女であるハナ様の【簡易】核魔融合炉が納められた基本亜次元領域とが高多次元作用線での螺旋干渉で繋がり【トルク】と【燃費】の向上に貢献するブースト機能の事です。
と結論 ∮〉
出た、似非のカッチョイイ漢字ただ並べてルビ付って悦に入る得意の『博学な私は頭脳明晰眉目秀麗』解説。いいかよく聴け、お前の説明は何時も表面的で浅い、そして何処へも辿り着けない。
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ガァーン!
でも最後まで聞いて下さい。魔女・魔人とのパスは唯のブーストですが、魔物とは直接的な公彦の魔力素粒子の受け渡しです。受託した魔物は以後、公彦の“眷属”となります。眷属とは“力”を与える代わりに、生殺与奪の権を得ることです。
と結論 ∮〉
重。重すぎる。そんなのいりません。
『まあ、大体あってますけど、難しく考えないで下さい。なにより、私達はそれを望んでいるのです。切望と言って良い程に』
と蜘蛛のお母さん。だけどもさ……、パスの通し方なんて、知らないし……。
『誰でも自身の固有の魔力を持っています。主様ほど特異ではありませんが、難しく考えずにそれを伝え合うだけでいいんです。言葉による会話とか、何となくの気持ちでもいいんです。相手をちょっとだけ気遣ったり、思い合ったり。手をつなぎたいなって思ったり。それが最初の“始まり”となります』
なんかそれ、現代社会では逆に非常に難しい事のように思えるけど。思いがあるだけに壁をつくるとか。
『ああ、それはもうひとりのサキュバスの娘さんですね。罪作りですね、主様は。特大岩石に当たって死ねばいいのに。ウチの娘泣かせたらタヒますよ」
なにげに酷いこと言ってナイカイ。それとサキュバス娘って、サチの事だよな、あの人を上から蔑む、死んだ魚を見るような目で僕を見るサチだよね。僕は何もしてないよ、したか。納得、でも放置。
『ウチの娘に対しては……娘に、怖いと、仰っていましたね』
確かにルルに『私は怖いか』と尋ねられ『怖いと』と返した。ただ何となく、なんとなくそう思ったから。
『それは、ご自分が抱えるある“思い”の反照が主様をその様なお気持ちにさせていると思われます。主様はご自分でも気づいておいでです。ご自分が人外の“眷属”をお持ちになる意味を。
我々眷属と一旦でも契れば、それは足を踏み出す事と同義なのです。足を踏み出せば、歩み始めなければなりません。何処かに向かって。
でも、主様は未だに迷っていらっしゃる、何方に決めるのが、怖いのです』
俺は、永遠の80年代モラトリアムかいってな。手の震えが止まらねえぜ。チキンで悪かったな。だって決められるか。世界を終わらせるか、もう一度始めるかなんて。
『申し訳ありません、出過ぎた真似を。
私達“眷属”はあなた様の永遠の下僕です。ですが、今世の主様とは“契”を結んでいない現況では真に私達を使役する事は難しいかと。主様がお望みの“力”を示すことは、叶いません』
なんか、イイように引きずり回されイイように絞められたのは僕の方だったぽい。ずっと主導権を握られてて。さすが何百年も生きているだけ在る。
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主様、女性に年齢のことは。
と結論 ∮〉
それにルルだよ、股間の小公女蜘蛛って、ロ○路線で『ちゃま・でちゅ』語はどうした。マトモに喋ってたよね。
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主様、女性は魔性。
考えたら負けです。
と結論 ∮〉
似非よ、お前だけでも、オレのことを“主”って呼んでくれるなよ。
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公彦、肩の力を抜いて下さい。
と結論 ∮〉
結局、“パス”は通った。“お情け”とか“契”とか、特別なことは無かった。よく分かんなかったし。
だだ、ああ、今パスが通ったんだなあ。と思っただけだ。
パスがっ通って、僕は“花魁蜘蛛”を理解した。そして前ギルド長が残した“糸”への魔法陣章の定着方法も。
其れだけではなく、全てを。その先をも。
誤算っていうかなんて言うか、パスが通ったと思ったら途端にルルは母になった。卵を沢山生んだ。もうゴッチャリと。
『ごしゅじんちゃま、わたしたちの赤ちゃん、かわいいでちゅね」
母親になってまでもまだ「でちゅね」キャラ強行するのかよ。業突くだなオイ。
そして当然のことながらハナの詰問を受けた。
「オイよお、テメーよー。シャレんなんねーよなぁ。どうすんだこれ」
結局、僕は選んでいない。選べるかそんなもん。僕はこの世界から見たら異世界人で、色々特殊っぽいけど。それがどうした。
僕は僕だし、魔王なんかでは絶対ない。関係ない。何処かにそう明記されている訳でもなく、誰かに強要される言われもない。“祝たる従者”なんてクソッタレだ。
ただ、思ったんだ。この世界に来て、数も時間も少ないくせに、はからずも結んでしまった僕の周りの人達との何かを、願ったんだ。
そしたら、あっさりと“パス“が通っていた。
サチとは未だ通っていないけど。
祈ったんだ。ただ。
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お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
毎日更新しています。
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