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第九節 〜遷(うつり)・彼是(あれこれ)〜
110 クソエロガッパの出来損ない 2
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109 110 111 112 は“ひと綴りの物語”です。
クソエロガッパは必死こいて戦っています。
《その2》
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
貴方が出し惜しみした事が原因です。本来ならもっと楽に抜けられた。
と結論 ∮〉
解らない。渡す魔力量など考えたこともない。ただパスを通して流れていると感じ取っていたに過ぎない。意識したこともない。パスが細いって事だろうか。繋がりは強固であったはずだ。そう思いたいだけなのか。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
繋がっていますよ。象の足のように太い経路が。ただ、例えるなら電流は高いが電圧は可哀想な程に低かった。お嬢さん自身の従者であったサチに送っていた魔力のほうが遥かに多い程です。いい子ですね、貴方の砲台は。
重要事項です。魔力素粒子を減退させる魔導具は公彦に設定されています。貴方が魔導具に近づけばその威力を急激に高めます。公彦をハナ様の足下に蹴飛ばしたのも公彦は侮っていましたが、女男爵は態とです。
何故ならその所為でハナ様の腐食侵攻は急激に進む事になるからです。急に動かなくなったのもその結果です。もう動けないほど衰弱していますよ。もうまもなく死にます。残念ですが。
女男爵は敵対者として当然にえげつないんです。舐めてません?
と結論 ∮〉
……どうすればいい。答えろ。賢者なんだろ。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
どうせ何も出来ないですよ。チキンには。
と結論 ∮〉
いいから教えろ。どうすればいい。やってやる。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
シンプルです。体内の魔力値を限界まで高めます。次に砲撃に向かって歩を進め、ハナ様から離れます。執務机を破壊して“魔力減退領域”を無効化します。ハナ様に刺さった杭を抜き椅子から退かします。
それでハナ様は助かります。
それが出来れば苦労はしないと言いたげな顔をされていますね。本来ならばこれぐらい出来て当然なんですけどね。
では注意点を。
執務机の半径五メートル以内は“魔力減退最大値の領域”に入ります。公彦自身への影響は今のままでは普通人以下になりますが、今出せる魔力最大値をマークさせれば乗り越えられます。
この減衰魔法の主な効果はパス路を遮断し、“御たる誰か”と連携を断つ事が目的のようです。
同じ理由から私は再び凍結されます。情報の提供は不可能となり、当然に“危険時緊急自動保全機能”は発動出来なくなります。先程のような致命的な一撃を喰らえばそのまま死ぬことになります。お気をつけて。
なお、執務机を破壊する前に女男爵の無力化をお勧めします。彼女がげ現存している場合での成功の確率は1%を切ります。
またまた呆れた顔をされていますが、お願いしますよ、やって下さい。私の模擬実戦なら実現可能なのですから。公彦さえ自らの力を発揮すればの話しですが。
一人が寂ちぃならパスを通した“御たる誰か”に頼りなさい。ああ、彼女はいま囚われの身ですね。ではご武運を。
と結論 ∮〉
話しが長げーんだよ。結局は突貫しろってことだけじゃねーか。クソが。
片膝立ちから中腰まで立ち上がる。一歩足を出す。その一歩がなかなか床につかない。砲弾の圧力がとんでもない。でも盾を正対してもなんら問題はないと似非は言った。今は賢者として信用する。自分自身と共に。丹田に力を込める。ただ思う。俺の魔力はこんなモンではないと。
盾が薄らと発光し始める。歩みを始める。
「おお、頑張ってるガンバってる。気づいた? 気づいたんだ。そうだよね、そんな所でダルマになってたら直ぐにお嬢さん死んじゃうもんね。でもやっぱり鈍亀。もうダメっぽいよ、さすが出来損ない、仕事が遅いね。でもなんか悲劇のヒーローぽい頑張っちょります的な歯を食いしばる顔がムカつく。そんな顔が出来るほどオマエは大したもんじゃねーんだよ」
確かに僕の歩みは遅い。強風に向かうように前のめりで支える後ろ足に力を込めないとそのままズルズルと後退していきそうだ。蹴り出す足裏が床を抉る。
でも盾を立て真正面から砲弾を食い止めている。ハナとの距離が開けば“去なし”での流れ弾が直接当たりそうで怖かったから。まだ大して離れられていないが。
「こんなんだったら、コッチから出向いてサクッと終わらせれとけばよかった。ああーあ、本当に馬鹿みたい。一週間も掛けてセコセコすっごく苦労して、コンな部屋もコスプレも拵えなければよかった。誰よ脅威だって言ったのは。
コウイチ君も今回は見誤ったって感じ? 若さゆえの過ち? あれ、これ誰のセリフだっけな? まあ、過ちは絶対認めないだろうけど。
また二年も待たなくちゃなのかな。あーイヤダイヤダ。
この街って退屈でしょ。美味しい食べ物もないし、アミューズメントのアの字も無くて。早く王都に戻りたいよ。……本当は東京に帰りたい。何で転生なんかしちゃったのかなぁ、こんなクソみたいな世界に。何が『剣と魔法のファンタジックな世界にようこそだ』クソだよね」
何とかハナから十メートル離れられた。女男爵までも十メートル弱。約半分の距離、あと五メートルで最大値の魔力減退領域に入る。これ以上は敵も警戒するだろう。よし、行こう。ここから勝負に出る。
踏み足に力を込める。床板が陥没するほどのダッシュ。
“万有間構成力制御魔技法”を発動。地球の中心からの重力を感じ、身に取り込み、瞬発力に変換! 行け。
蹴り足と二歩目は驚くほど加速するが後が続かないのは百も承知。両足とも圧潰するから。瞬く間に直せるが、即時の戦闘にはどうしても遅れる。でも問題ない。二歩で最接近出来るから。
腰裏の剣鉈ナイフを抜き取りテルミットの灼熱の剣を発現させ、大きく振りかぶる。女男爵の顔がとっても楽しそうに歪む。カモンベイビーとか言ってそう。
射程一メートル内に達した時、俺は“蜘蛛の糸”を飛ばし強引に軌道を変えた。狙うは執務机の魔導具だ。真横にズレ、今まで俺がいた背後の影からハナを縫い止めていた杭四本が迫る。事前に蜘蛛の糸を忍ばせておいたものを、この瞬間を待って抜き取り、飛ばした。
執務机に寄り掛かっていた女男爵は当然反対側に逃げる。両手は塞がっている。
その隙に執務机にテルミットを突き入れ魔装具を破壊。その嫌らしい魔力減退の領域が消えた次の刹那。
頼む、無理させてゴメン。
ハナは折れた火縄銃モドキ改の引き金を絞る。狙いは執務机の反対にこれから回避を行う女男爵の虚空。
ハナが撃ち出した弾丸は速度を重視して威力は犠牲にした。ハナは限界だった。でもそれで充分だった。
“魔力減退領域”を打ち破り、即座にハナに魔力を大量に送り治癒し、加えて背後からの狙撃を要請しようと考えていた。
僕は呆れる程に弱いから。一人では無理だから。
だがその治癒前にハナは杭が抜けると同時に穴が空いたままの血塗れの手で火縄銃モドキ改を掴み取り、即座に射撃姿勢に入っていた。
僕の狙撃依頼の前に。治癒が始まる前に。
ハナももう守られるだけの存在ではないし、怒ってもいた。狙撃が間に合ったのは出来るだけ魔力を温存し、チャンスを待ってたハナの意思だ。僕を信じて。再開したパスからそんな思いが最初に伝わっていた。
「まかせて」
黒色の盾を出現させ、ハナの弾丸を防ぐ女男爵。
狙うはハナの弾丸を防ぐ動作で生まれる確かな隙。
確かにハナの弾丸が黒い盾に打ち込まれたと確信したと同時に何の前兆もなく、女男爵の身体が後退した。予備動作は感じ取れなかった。何かの力で強引に後ろに引かれるように。
目標を失いそのまま身体が流れた俺の頭に向かって、何時の間にか盾から変えた細く黒い棒で軽く、態と楽しむようにゆっくりと横に振った。
女男爵の満面の、天真爛漫な笑顔がムカつく。
それは本当に弱々しい打撃だった。それなのに俺の身体はフルスピードの重積載車《ダンプ》に撥ねられる程の衝撃を受け、加えて飛んでいった先の壁にべチャリと張り付き、血の跡を描きながら下に落ちた。
もう動けなかった。意識を失う間際、似非に注意された言葉を思い出した。次は無い。
「……逃げろ、ハナ」
「ふふ、ありがとう。お嬢ちゃんが実弾を撃ってくれたおかげで助かっちゃったみたい。でもびっくりしたな。出来損ない君にもお嬢ちゃんにも。最後っ屁ってやつ? でもやっぱりまだまだね。残念。
これがね、“万有間構成力制御魔技法・中級”の技よ。
お嬢ちゃんの弾丸を起源とした威力を操り、後退だけをする力に改造したの。すごいでしょ。出来損ないを打ち据えたのも同じ要領の魔法。力を一方的なベクトルに変換して何十倍にも増加すさせたの。これがコウイチ君の得意技よ。
でもまあ、使い所のない魔法なんだけど、コウ・シリーズの象徴みたいな魔法で、大切にしてるんだって。知らんけど」
そんなセリフを吐きながらゆっくりとハナに歩み寄る。既に再起不能と思ったのか俺を無視して。その通りなのだが。
ハナは最後の射撃で力尽きたのか、傷は塞がっていたが手を床に突き、四つん這いのまま息も荒く、立ち上がることが出来ずにいた。
見下す女男爵。それを悔しそうに見上げるハナ。そのまま女男爵は屈むと徐ろにハナの掌に再び杭を撃ち込んだ。悲鳴を押し殺すハナ、奥歯を噛み締めて、耐える。
「あらあら、悲鳴を挙げないなんてご立派ね。さすが貴族のご令嬢様、無様な姿は晒せないわよね。ムカつくわ。凄く」
それを壁際で這いつくばって、霞む視界で追いかけていた。
―――――――――
お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
クソエロガッパは必死こいて戦っています。
《その2》
ご笑覧いただければ幸いです。
※注
白い◇は場面展開、間が空いた印です。
―――――――――
貴方が出し惜しみした事が原因です。本来ならもっと楽に抜けられた。
と結論 ∮〉
解らない。渡す魔力量など考えたこともない。ただパスを通して流れていると感じ取っていたに過ぎない。意識したこともない。パスが細いって事だろうか。繋がりは強固であったはずだ。そう思いたいだけなのか。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
繋がっていますよ。象の足のように太い経路が。ただ、例えるなら電流は高いが電圧は可哀想な程に低かった。お嬢さん自身の従者であったサチに送っていた魔力のほうが遥かに多い程です。いい子ですね、貴方の砲台は。
重要事項です。魔力素粒子を減退させる魔導具は公彦に設定されています。貴方が魔導具に近づけばその威力を急激に高めます。公彦をハナ様の足下に蹴飛ばしたのも公彦は侮っていましたが、女男爵は態とです。
何故ならその所為でハナ様の腐食侵攻は急激に進む事になるからです。急に動かなくなったのもその結果です。もう動けないほど衰弱していますよ。もうまもなく死にます。残念ですが。
女男爵は敵対者として当然にえげつないんです。舐めてません?
と結論 ∮〉
……どうすればいい。答えろ。賢者なんだろ。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
どうせ何も出来ないですよ。チキンには。
と結論 ∮〉
いいから教えろ。どうすればいい。やってやる。
〈∮ 検索及び検証考察結果を報告。
シンプルです。体内の魔力値を限界まで高めます。次に砲撃に向かって歩を進め、ハナ様から離れます。執務机を破壊して“魔力減退領域”を無効化します。ハナ様に刺さった杭を抜き椅子から退かします。
それでハナ様は助かります。
それが出来れば苦労はしないと言いたげな顔をされていますね。本来ならばこれぐらい出来て当然なんですけどね。
では注意点を。
執務机の半径五メートル以内は“魔力減退最大値の領域”に入ります。公彦自身への影響は今のままでは普通人以下になりますが、今出せる魔力最大値をマークさせれば乗り越えられます。
この減衰魔法の主な効果はパス路を遮断し、“御たる誰か”と連携を断つ事が目的のようです。
同じ理由から私は再び凍結されます。情報の提供は不可能となり、当然に“危険時緊急自動保全機能”は発動出来なくなります。先程のような致命的な一撃を喰らえばそのまま死ぬことになります。お気をつけて。
なお、執務机を破壊する前に女男爵の無力化をお勧めします。彼女がげ現存している場合での成功の確率は1%を切ります。
またまた呆れた顔をされていますが、お願いしますよ、やって下さい。私の模擬実戦なら実現可能なのですから。公彦さえ自らの力を発揮すればの話しですが。
一人が寂ちぃならパスを通した“御たる誰か”に頼りなさい。ああ、彼女はいま囚われの身ですね。ではご武運を。
と結論 ∮〉
話しが長げーんだよ。結局は突貫しろってことだけじゃねーか。クソが。
片膝立ちから中腰まで立ち上がる。一歩足を出す。その一歩がなかなか床につかない。砲弾の圧力がとんでもない。でも盾を正対してもなんら問題はないと似非は言った。今は賢者として信用する。自分自身と共に。丹田に力を込める。ただ思う。俺の魔力はこんなモンではないと。
盾が薄らと発光し始める。歩みを始める。
「おお、頑張ってるガンバってる。気づいた? 気づいたんだ。そうだよね、そんな所でダルマになってたら直ぐにお嬢さん死んじゃうもんね。でもやっぱり鈍亀。もうダメっぽいよ、さすが出来損ない、仕事が遅いね。でもなんか悲劇のヒーローぽい頑張っちょります的な歯を食いしばる顔がムカつく。そんな顔が出来るほどオマエは大したもんじゃねーんだよ」
確かに僕の歩みは遅い。強風に向かうように前のめりで支える後ろ足に力を込めないとそのままズルズルと後退していきそうだ。蹴り出す足裏が床を抉る。
でも盾を立て真正面から砲弾を食い止めている。ハナとの距離が開けば“去なし”での流れ弾が直接当たりそうで怖かったから。まだ大して離れられていないが。
「こんなんだったら、コッチから出向いてサクッと終わらせれとけばよかった。ああーあ、本当に馬鹿みたい。一週間も掛けてセコセコすっごく苦労して、コンな部屋もコスプレも拵えなければよかった。誰よ脅威だって言ったのは。
コウイチ君も今回は見誤ったって感じ? 若さゆえの過ち? あれ、これ誰のセリフだっけな? まあ、過ちは絶対認めないだろうけど。
また二年も待たなくちゃなのかな。あーイヤダイヤダ。
この街って退屈でしょ。美味しい食べ物もないし、アミューズメントのアの字も無くて。早く王都に戻りたいよ。……本当は東京に帰りたい。何で転生なんかしちゃったのかなぁ、こんなクソみたいな世界に。何が『剣と魔法のファンタジックな世界にようこそだ』クソだよね」
何とかハナから十メートル離れられた。女男爵までも十メートル弱。約半分の距離、あと五メートルで最大値の魔力減退領域に入る。これ以上は敵も警戒するだろう。よし、行こう。ここから勝負に出る。
踏み足に力を込める。床板が陥没するほどのダッシュ。
“万有間構成力制御魔技法”を発動。地球の中心からの重力を感じ、身に取り込み、瞬発力に変換! 行け。
蹴り足と二歩目は驚くほど加速するが後が続かないのは百も承知。両足とも圧潰するから。瞬く間に直せるが、即時の戦闘にはどうしても遅れる。でも問題ない。二歩で最接近出来るから。
腰裏の剣鉈ナイフを抜き取りテルミットの灼熱の剣を発現させ、大きく振りかぶる。女男爵の顔がとっても楽しそうに歪む。カモンベイビーとか言ってそう。
射程一メートル内に達した時、俺は“蜘蛛の糸”を飛ばし強引に軌道を変えた。狙うは執務机の魔導具だ。真横にズレ、今まで俺がいた背後の影からハナを縫い止めていた杭四本が迫る。事前に蜘蛛の糸を忍ばせておいたものを、この瞬間を待って抜き取り、飛ばした。
執務机に寄り掛かっていた女男爵は当然反対側に逃げる。両手は塞がっている。
その隙に執務机にテルミットを突き入れ魔装具を破壊。その嫌らしい魔力減退の領域が消えた次の刹那。
頼む、無理させてゴメン。
ハナは折れた火縄銃モドキ改の引き金を絞る。狙いは執務机の反対にこれから回避を行う女男爵の虚空。
ハナが撃ち出した弾丸は速度を重視して威力は犠牲にした。ハナは限界だった。でもそれで充分だった。
“魔力減退領域”を打ち破り、即座にハナに魔力を大量に送り治癒し、加えて背後からの狙撃を要請しようと考えていた。
僕は呆れる程に弱いから。一人では無理だから。
だがその治癒前にハナは杭が抜けると同時に穴が空いたままの血塗れの手で火縄銃モドキ改を掴み取り、即座に射撃姿勢に入っていた。
僕の狙撃依頼の前に。治癒が始まる前に。
ハナももう守られるだけの存在ではないし、怒ってもいた。狙撃が間に合ったのは出来るだけ魔力を温存し、チャンスを待ってたハナの意思だ。僕を信じて。再開したパスからそんな思いが最初に伝わっていた。
「まかせて」
黒色の盾を出現させ、ハナの弾丸を防ぐ女男爵。
狙うはハナの弾丸を防ぐ動作で生まれる確かな隙。
確かにハナの弾丸が黒い盾に打ち込まれたと確信したと同時に何の前兆もなく、女男爵の身体が後退した。予備動作は感じ取れなかった。何かの力で強引に後ろに引かれるように。
目標を失いそのまま身体が流れた俺の頭に向かって、何時の間にか盾から変えた細く黒い棒で軽く、態と楽しむようにゆっくりと横に振った。
女男爵の満面の、天真爛漫な笑顔がムカつく。
それは本当に弱々しい打撃だった。それなのに俺の身体はフルスピードの重積載車《ダンプ》に撥ねられる程の衝撃を受け、加えて飛んでいった先の壁にべチャリと張り付き、血の跡を描きながら下に落ちた。
もう動けなかった。意識を失う間際、似非に注意された言葉を思い出した。次は無い。
「……逃げろ、ハナ」
「ふふ、ありがとう。お嬢ちゃんが実弾を撃ってくれたおかげで助かっちゃったみたい。でもびっくりしたな。出来損ない君にもお嬢ちゃんにも。最後っ屁ってやつ? でもやっぱりまだまだね。残念。
これがね、“万有間構成力制御魔技法・中級”の技よ。
お嬢ちゃんの弾丸を起源とした威力を操り、後退だけをする力に改造したの。すごいでしょ。出来損ないを打ち据えたのも同じ要領の魔法。力を一方的なベクトルに変換して何十倍にも増加すさせたの。これがコウイチ君の得意技よ。
でもまあ、使い所のない魔法なんだけど、コウ・シリーズの象徴みたいな魔法で、大切にしてるんだって。知らんけど」
そんなセリフを吐きながらゆっくりとハナに歩み寄る。既に再起不能と思ったのか俺を無視して。その通りなのだが。
ハナは最後の射撃で力尽きたのか、傷は塞がっていたが手を床に突き、四つん這いのまま息も荒く、立ち上がることが出来ずにいた。
見下す女男爵。それを悔しそうに見上げるハナ。そのまま女男爵は屈むと徐ろにハナの掌に再び杭を撃ち込んだ。悲鳴を押し殺すハナ、奥歯を噛み締めて、耐える。
「あらあら、悲鳴を挙げないなんてご立派ね。さすが貴族のご令嬢様、無様な姿は晒せないわよね。ムカつくわ。凄く」
それを壁際で這いつくばって、霞む視界で追いかけていた。
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お読み頂き、誠にありがとうございます。
よろしければ次話もお楽しみ頂ければ幸いです。
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