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Chap.3 鏡の国の
Chap.3 Sec.9
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シャワー室へ行って戻ってきたはずのセトは、なぜかシャワーを浴びていなかった。ティアとしても戻りが早すぎる気はしていたので、べつだん驚きはしなかったが疑問には思っている。引き換えにサクラがシャワー室へと向かったため、理由を尋ねるタイミングを見計らっていたところ、セトがキッチンへと消えてしまった。下段の棚をあさっている音がする。イスに座ったまま通路に身を出してキッチンの方をうかがっていると、ほどなくして戻ってきた。見間違いでなければ、ブランデーの入ったボトルと、チューリップ型のグラスをふたつ手にしている。
「おいティア、呑むぞ」
「……はいっ?」
セトの唐突すぎる提案に、思わず裏返った声が出た。テーブルの上にドンっと乱暴にボトルが置かれ、ティアの前にグラスがひとつ滑ってくる。
「え? セト君さっき、早く眠るって言ってなかった?」
「気が変わったんだよ。いいだろ、付き合え」
「や……いいけど。あれ? 見張りって呑んでいいんだっけ?」
「酔わなきゃいいんだよ」
「暴論じゃない?」
脚のあるチューリップ型のグラスに、セトがブランデーをそそいでいく。紅茶によく似た赤褐色の液体が、思いのほかたっぷりと入れられた。ストレートでその量は……どうなのか。
「ちょ、ちょっと! 僕そんなに飲めないからね。ワインじゃないんだから、僕のは少なくしてね?」
「ならワイン取ってきてやろうか」
「え! ……あっ、たしかハウスに置いてきたよねっ? セト君が、こんなに酒要らないだろって言ってさ!」
「そんときは要らねぇと思ったんだよ。お前大量に持ってこうとするし」
「横暴だ……セト君の好きなブランデーだけちゃっかり積んでるしさ。せめて僕の赤1本くらい……ブルゴーニュ……」
「悪かったな。次は赤でも白でも積んでやるよ」
本当に悪気があるのか(……これっぽっちもないに決まってる)飄々とした態度で、セトはこちらのグラスにブランデーを注いだ。底から指一本くらい。分量は配慮してもらえた。
「ね、おつまみは?」
「そんなもんねぇよ」
「や、あるでしょ。どうしてそこは横着なの」
仕様がないので自分でキッチンへと探しに行く。あのブランデーは飲んだことがないので未知数だが、チーズとドライフルーツなら外れることはないだろう。グラスにそそがれたときの香りから、高カカオのチョコレートも合いそうだと感じたが、セトに食べ尽くされる未来が見えているのでやめておく。
好みで盛ったつまみを持ってテーブルに戻ると、けっこうな量がすでにセトのグラスからなくなっていた。
「あのさ……ブランデーってそんな一気に飲むものじゃないよね?」
「ひとそれぞれだろ」
そうだろうか。それを言われたらもう何も言えないが、誰であれアルコールによる危険性はあるような。注意しても聞く耳を持たないだろうから放っておくことにした。
「——で、なんで急に呑みたくなったの?」
尋ねてから、グラスに口を寄せる。芳醇なアロマには紅茶やバニラが感じられた。わずかに舌にのせると、樽香と花の香りがあいまって、とても深みのあるドラマティックな香りが鼻に抜けた。ボトルのラベルを見るとエクストラクラスの、つまるところかなり古いコニャックで、間違ってもセトのように雑にあおっていい酒ではない気がする。
「……べつに。理由なんてねぇよ」
「そう? ……話したくないならいいけどさ……今しかないよ? サクラさん、すぐに戻ってきちゃうよ?」
「………………」
テーブルに肘をついて掌に顎をのせ、そっぽを向いていたセトが考えるように沈黙する。アルコールの効果か、意外と早い判断で彼は口を開いた。
「……ウサギの、ことだけどよ」
「うん」
「もう、あいつ……置いてかねぇか?」
「うん?」
予測どおりの話題だったが、想像と45度くらいずれた展開だった。セトは壁を睨んだまま、ブランデーをひとくち。
「……連れて帰る必要あるか? ハウスに他人を入れて、また何かあったらどうすんだよ」
「今さらだね……“アリスちゃんは危険じゃない派”じゃなかった?」
「身体能力は低い。けど、分かんねぇだろ? どっかのスパイかも知んねぇし。身体を使って情報を聞き出す、とか」
「えぇぇぇ……? それ、言ってて恥ずかしくない?」
「うるせぇな。確率はゼロじゃねぇだろ」
「や、それはゼロだね。僕が保証する」
きっぱり言いきると、セトがふんっと鼻を鳴らし、グラスを傾けた。
「そんなら適当に置いてこうぜ。サクラさんには内緒で。逃げたことにすりゃいいじゃねぇか」
「……ほんとにどうしたの? そんなことしたら、サクラさんに絶対バレるよ? 分かってるよね?」
「……分かってる。言ってみただけだろ」
「そう? …………アリスちゃんとどうかした?」
話が読めないので核心を突いてみると、セトが押し黙った。シャワー室へ行くまでは機嫌が悪くなかった(むしろ彼女が服を気に入っている理由を聞いて、まんざらでもなかった)ようなのに、ちょっと目を離しただけでどうしてこうなるのか。
「……セト君。サクラさん、戻ってきちゃうよ?」
追いうちをかける。すると、いきなり残りのブランデーを一気に飲み干したかと思うと、琥珀色の眼球をギロリとこちらに向け、
「嫌いだとよ」
「………………は?」
意味が分からず、ティアにしては非常に失礼な反応が出た。セトはそれを見て更なる怒りが湧いてきたのか、手にしていたグラスを強くテーブルに打ち付け、
「だから、俺らのことが嫌いだって言われたんだよ! 面倒みてやってんのによ。むかつくだろ」
「……えーっと…………え、まって。アリスちゃんが、そう言ったの? 嫌いって? 僕らを?」
「あ? お前いま何聞いてたんだ」
アルコールのせいか怒りのせいか知らないが、完全に目が据わっている。ティアは笑顔を引きつらせた。
「やだな、落ち着いてよ。聞いてたよ? ……でもさ、なんかちょっと確信がもてないっていうか。ほんとかな~って」
「こんなことで嘘ついてどうすんだ」
「うん、そうだね。分かるよ、落ち着いて。いったん水飲もっか?」
「酔ってねぇよ」
「そう? ……それはそれで怖いんだけど」
セトが追加のブランデーを入れようとしたので、あわててボトルを押さえた。鋭い目で睨まれる。はっきりいって怖い。もともと吊り上がったきつい印象を与える目ではあったが、今や凶悪すぎて直視できない。セトが暴力に訴えたらティアは秒で負ける。
「あのっ……あのさ、もうちょっとこう……話をね、噛み砕きたいんだけど」
「……あ?」
「威嚇しないで。こわい」
「してねぇよ」
「してるよ!」
ティアの必死な様子に、セトは不満がありそうだが手を引いた。
「アリスちゃんが……僕らのこと嫌いって、ほんとにそう言った? あの子、話せないのに?」
疑問を口にすると、セトが記憶をなぞるように横を見た。その隙にそうっとボトルを彼から離しておく。
「……いや、あいつは言ってねぇけど」
「えっ、やっぱり言ってないの?」
「やっぱりってなんだ! 直接は言ってねぇってことだよ」
「……間接的に嫌いってどう伝えるの?」
「俺が、俺らのこと嫌いなのかって訊いたら、否定しなかったんだよ」
「…………え、それだけ?」
「あ?」
「だから威嚇しないでってば」
機嫌をとるべく、ドライフルーツとチーズの載った皿を差し出す。セトはアプリコットをつまんで口に放り込んだ。こうなるとチョコレートも並べておけばよかったと、頭の端で悔やむ。
「そもそも、なんでそんなこと訊いちゃうかな……アリスちゃんが僕らのこと好きなわけないのに……」
「は? なんでだよ」
「ん?」
「なんで好きなわけねぇんだよ」
「……え? それ本気で言ってる?」
ぱくぱくとドライフルーツを消費するセトの顔は無表情で、ふざけているわけではないらしい。そういう冗談を言う人間でないのは知っているが、本気で言えるのも理解しがたい。そして、フルーツだけ食べすぎている。チーズとバランスよく食べてほしい。
「……あのさ、もうこの際はっきりしておくけど」
「なんだよ」
「アリスちゃんは、僕らと……その、寝たいわけじゃ……ないんじゃない?」
「あっちが提案したのに? セックスするから面倒みろって」
「うん、もうちょっとオブラートに包んで。……それでさ、そこまではっきり言ってないよね? ……サクラさんが言ったのは、前は身体を売ることで世話してもらっていたってだけでしょ?」
「だからなんだよ?」
「ひとまずそれを前提とするよ? たとえば……それが嫌で、前のところを逃げ出した可能性は?」
「は? ……だったら、なんで俺なんかに頼るんだよ。何度も言うけど俺は攫ってねぇぞ。あっちが縋ってきたんだからな」
「それはさ、たまたま助けられて、セト君なら優しくしてくれると思って……ついてきちゃったんじゃない? あるいは、相手がセト君ひとりならマシだと思ったか」
「………………」
「僕は、“身体を引き換えに”っていうの、本人が割りきってるとは思えないんだけど」
「……けどよ、最初の夜に……あいつが、言ったんだぞ。面倒みてくれたお礼に、身体で返すとかなんとか。最初は俺がいいって、サクラさんが……」
セトの言い分に、吐息がこぼれた。ティアは思わず笑っていた。セトの、あまりの盲目さに。
「ちょっと待ってよ。……誰が言ったって?」
「誰ってウサギの話だろ」
「違うよね? ……さっきもこれ、確認したけど。アリスちゃんは話せないんだよ」
「それは共通語がだろ。サクラさんが訳したんだよ」
「つまり全部サクラさんが言ったんだ? アリスちゃんに誰がいいか訊いて、セト君に抱きついたから、とか聞いてたけど。もしかして、あれ、嘘?」
「嘘じゃねぇよ」
「そうかな? なんかちょっと、セト君のことも信じられなくなってきたな……」
「何言ってんだ」
セトの怪訝な目に、ほほえんだ。ティアは今まで怒ったことがない。そういう火が点くような激しい感情をもつ機会がなく、きっとこれから先も誰かに対して怒ることはない。常に相手に期待していないからというのも考えられるが、怒りの感情が表に出る前に呆れに置き換わっているのだと、自分では解釈している。
「話を戻そうか……サクラさんが、くる前に」
ゆっくりと、唇を動かす。セトへの恐怖心はもうなく、ただ静かに、平坦な感情で事実を確認する。
「アリスちゃんが、僕らを嫌いって……否定しなかったんだよね?」
「そこに戻るのかよ」
「どうしてそういう話になったのか、僕が気になるからね。……彼女が言葉を理解していない可能性もあるけど、とりあえずそれは置いておくよ?」
「あれは分かってた」
「うん、じゃ、そこはセト君の勘を信じるとして。……なんで、そんな質問したの?」
「なんでって……覚えてねぇけど」
「ちゃんと思い出して」
「…………あぁ、たしか……ハウスの話をしてたら……様子がおかしくなって。それで、ハウスに帰りたくねぇのかって、訊いたような……俺らが嫌いだから、帰りたくねぇのかって。そんな流れだったと思うけど」
「流れが分かんないんだけど。僕ら今、ハウスにいないでしょ。ハウスに帰りたくない——そこからなんで、僕らが嫌いに結びつくの?」
「それは、なんつぅか……目が」
「目?」
「説明できねぇけど……そういう感じだったんだよ」
「ちょっと。大事なとこ雑に判断しないでよ。それ、セト君の悪いとこだよ」
「うるせぇな」
「じゃ、そこはもういいよ。……ハウスの話って何? 帰る話なら先に僕も言ったし、サクラさんも説明してたと思うけど。セト君、なにか余計な情報を与えたんじゃないの?」
「俺は別に、服の話くらいしか…………あ」
宙を泳いでいたセトの視線がぴたりと止まり、ティアに戻る。
「あぁ、人数か」
「……人数?」
「ハウスにあと4人いるっつって。俺らと合わせて8人。数を教えてやったんだよ、たしか」
「……なにそれ。もう答え出てるよね……」
ティアは嘆息して、グラスの中の液体を喉に流した。きょとんとしたセトを細い目で見返して、偏った残り方をしているチーズをひとつ口に含む。クリーミーなチーズは風格あるコニャックによく合っていて、辟易する気持ちの打ち消しを手伝ってくれた。「おいティア。食ってねぇで説明しろ」皿を取りあげるセトに解答を伝えるのが、ひどく億劫だ。グラスに映る虚像を見つめつつ、
「だからさ……ハウスに帰ることで人が増えるから、ショック受けたんでしょ? そんなにいると思わなかったか、前のとこより多いからかは知らないけどさ。そこまで想定していなかったってことだよ」
「……人数が増えるとなんで衝撃なんだ……?」
「はい? ……なに言ってるの?」
「いや、だからなんで人が増えるとウサギが困るのかって訊いてんだよ」
「相手する人数が増えるでしょ? そうしたら嫌でしょ、普通は」
「いや、そこよく分かんねぇ……俺ら今、夜は順番に寝てるよな? 仮にひとりしか相手がいないにしても、毎晩するなら回数変わらなくねぇか? それなら、いろんなやつとするほうが退屈しねぇんじゃねぇか……?」
「うわ……もうやだ。セト君、きみちょっとダメだ。どこから突っこめばいいのか分かんない」
「いや俺も、お前の言ってること全然分かんねぇけど……」
「なんで!? えっ僕がおかしいの? 知らない人とセックスするの、普通は抵抗あるものじゃないのっ? 自分ひとりでも当たりまえのようにアリスちゃんと毎日するのが前提なセト君が間違ってるんじゃないのっ?」
「オブラートはどうした……つぅか。もしかしてお前、酔ってねぇ?」
「酔ってない」
「けどなんか……テンションたけぇぞ」
「酔っぱらいのセト君に言われたくない」
「俺は酔ってねぇよ」
「酔っぱらいは大概そう言うんだよ」
「ならお前もじゃねぇか。……大体、普通普通って言ってるけど、ウサギは娼婦だろ。その時点で理屈が変わるだろが」
「だから娼婦じゃないんだって!」
吐き出してからハッとした。驚いて目をぱちくりとさせているセト。図らずしも高くなった声にティア自身もびっくりしている。
「……ごめん、今のなし。水取ってくる」
短くつぶやいて、セトが言葉を咀嚼する前に席を立った。しかし、セトの反応は早い。脊髄反射のようにティアの腕を掴んでいた。
「……待てよ。無しってなんだよ」
「酔ってるみたい。うるさくしてごめんね」
「そうじゃねぇだろ」
「セト君も酔ってるよね? 水取ってこようか」
「おい」
「チョコにする?」
「ティア!」
耳をたたく呼び名に、目をつむった。やかましい、わずらわしい。耳を塞ぎたくなる恐れのようなこの感情は、そう遠くない記憶と同じだ。
「ウサギが……娼婦じゃねぇって、なんだよ」
引きずり出されそうな記憶を抑え、代わりに深く息を吐き出し、目を開けた。目前の琥珀の眼は、戸惑いに満ちている。
「深い意味はないよ? 娼婦にしては覚悟が足りないよねって、それだけの話」
「ほんとか? あいつがそう言ったんじゃねぇのか?」
「あの子は話せないでしょ」
「でも、お前なら……分かるんじゃねぇの」
「なんで? 知らない言語なのに?」
「だってお前、」
「セト君」
セトの言葉を遮った。掴まれていた手を振り払い、笑顔の仮面を貼りつける。
「君は、サクラさんを信じてるんでしょ? ……なら、僕の言うことなんて——聞く意味、ないよ?」
試すような意思が混ざったのは、否定しない。たたみ掛けようとしていたセトが、ティアの牽制によって躊躇し、口をつぐんだ。彼を縛りつけるのは、サクラへの忠誠心だろうか。盲目的なまでに愚かな彼の信用が、長い時のなかで培われたものだとしたら、ティアにはとうてい太刀打ちできない。太刀打ちしたいわけでも、ないが。
「……ほら。サクラさん、帰ってきたよ?」
琥珀の眼が、ティアを放した。サクラが寝室からキッチンへ入ってきたところで、水を飲むためだろう水流の音がする。ティアも同じものを求めてキッチンへと移動した。
「サクラさん、僕にも水くれる?」
水を飲んでいたサクラが、ちらりと目だけでこちらを見た。波打つ曲線のならんだ幾何学模様の着物が、濃い藍色のせいか、伸びる青白い手脚をひどく不健康にみせる。自身が口をつけていたクリスタルのグラスを洗浄機に入れてから、サクラは新たなグラスを取り出した。
「ついでにセト君のも」
「ティア、……お前、酔っていないか?」
「ちょっとね。でも、セト君のほうが酔ってるよ。叱るならセト君ね」
サクラがグラスに水をそそぐ。それを受け取りながらセトの飲酒を告げ口すると、リビングから「俺は酔ってねぇだろ!」反論が聞こえた。胸中だけで舌を出しておく。
「……楽しそうだな?」
「そう? サクラさんも呑む?」
「いいや、今夜は遠慮しておくよ」
「賢明な判断だよね。あのブランデー、悪酔いするよ」
肩をすくめ、グラスの水をあおった。そんなティアの様子にサクラはふっと笑って、セトへと別のグラスを持っていく。
「お前も要るか?」
「……貰う」
素直に水を受け取っているらしいので、ティアはもう何も言わず残りの水を飲み干すことだけに集中した。
思い出したくない過去も、迷い込んだ他人のことも、今は考えたくない。煩雑なものすべて忘却のはるか彼方に追いやって、ただ透きとおる水の冷たさだけ感じていよう。
「おいティア、呑むぞ」
「……はいっ?」
セトの唐突すぎる提案に、思わず裏返った声が出た。テーブルの上にドンっと乱暴にボトルが置かれ、ティアの前にグラスがひとつ滑ってくる。
「え? セト君さっき、早く眠るって言ってなかった?」
「気が変わったんだよ。いいだろ、付き合え」
「や……いいけど。あれ? 見張りって呑んでいいんだっけ?」
「酔わなきゃいいんだよ」
「暴論じゃない?」
脚のあるチューリップ型のグラスに、セトがブランデーをそそいでいく。紅茶によく似た赤褐色の液体が、思いのほかたっぷりと入れられた。ストレートでその量は……どうなのか。
「ちょ、ちょっと! 僕そんなに飲めないからね。ワインじゃないんだから、僕のは少なくしてね?」
「ならワイン取ってきてやろうか」
「え! ……あっ、たしかハウスに置いてきたよねっ? セト君が、こんなに酒要らないだろって言ってさ!」
「そんときは要らねぇと思ったんだよ。お前大量に持ってこうとするし」
「横暴だ……セト君の好きなブランデーだけちゃっかり積んでるしさ。せめて僕の赤1本くらい……ブルゴーニュ……」
「悪かったな。次は赤でも白でも積んでやるよ」
本当に悪気があるのか(……これっぽっちもないに決まってる)飄々とした態度で、セトはこちらのグラスにブランデーを注いだ。底から指一本くらい。分量は配慮してもらえた。
「ね、おつまみは?」
「そんなもんねぇよ」
「や、あるでしょ。どうしてそこは横着なの」
仕様がないので自分でキッチンへと探しに行く。あのブランデーは飲んだことがないので未知数だが、チーズとドライフルーツなら外れることはないだろう。グラスにそそがれたときの香りから、高カカオのチョコレートも合いそうだと感じたが、セトに食べ尽くされる未来が見えているのでやめておく。
好みで盛ったつまみを持ってテーブルに戻ると、けっこうな量がすでにセトのグラスからなくなっていた。
「あのさ……ブランデーってそんな一気に飲むものじゃないよね?」
「ひとそれぞれだろ」
そうだろうか。それを言われたらもう何も言えないが、誰であれアルコールによる危険性はあるような。注意しても聞く耳を持たないだろうから放っておくことにした。
「——で、なんで急に呑みたくなったの?」
尋ねてから、グラスに口を寄せる。芳醇なアロマには紅茶やバニラが感じられた。わずかに舌にのせると、樽香と花の香りがあいまって、とても深みのあるドラマティックな香りが鼻に抜けた。ボトルのラベルを見るとエクストラクラスの、つまるところかなり古いコニャックで、間違ってもセトのように雑にあおっていい酒ではない気がする。
「……べつに。理由なんてねぇよ」
「そう? ……話したくないならいいけどさ……今しかないよ? サクラさん、すぐに戻ってきちゃうよ?」
「………………」
テーブルに肘をついて掌に顎をのせ、そっぽを向いていたセトが考えるように沈黙する。アルコールの効果か、意外と早い判断で彼は口を開いた。
「……ウサギの、ことだけどよ」
「うん」
「もう、あいつ……置いてかねぇか?」
「うん?」
予測どおりの話題だったが、想像と45度くらいずれた展開だった。セトは壁を睨んだまま、ブランデーをひとくち。
「……連れて帰る必要あるか? ハウスに他人を入れて、また何かあったらどうすんだよ」
「今さらだね……“アリスちゃんは危険じゃない派”じゃなかった?」
「身体能力は低い。けど、分かんねぇだろ? どっかのスパイかも知んねぇし。身体を使って情報を聞き出す、とか」
「えぇぇぇ……? それ、言ってて恥ずかしくない?」
「うるせぇな。確率はゼロじゃねぇだろ」
「や、それはゼロだね。僕が保証する」
きっぱり言いきると、セトがふんっと鼻を鳴らし、グラスを傾けた。
「そんなら適当に置いてこうぜ。サクラさんには内緒で。逃げたことにすりゃいいじゃねぇか」
「……ほんとにどうしたの? そんなことしたら、サクラさんに絶対バレるよ? 分かってるよね?」
「……分かってる。言ってみただけだろ」
「そう? …………アリスちゃんとどうかした?」
話が読めないので核心を突いてみると、セトが押し黙った。シャワー室へ行くまでは機嫌が悪くなかった(むしろ彼女が服を気に入っている理由を聞いて、まんざらでもなかった)ようなのに、ちょっと目を離しただけでどうしてこうなるのか。
「……セト君。サクラさん、戻ってきちゃうよ?」
追いうちをかける。すると、いきなり残りのブランデーを一気に飲み干したかと思うと、琥珀色の眼球をギロリとこちらに向け、
「嫌いだとよ」
「………………は?」
意味が分からず、ティアにしては非常に失礼な反応が出た。セトはそれを見て更なる怒りが湧いてきたのか、手にしていたグラスを強くテーブルに打ち付け、
「だから、俺らのことが嫌いだって言われたんだよ! 面倒みてやってんのによ。むかつくだろ」
「……えーっと…………え、まって。アリスちゃんが、そう言ったの? 嫌いって? 僕らを?」
「あ? お前いま何聞いてたんだ」
アルコールのせいか怒りのせいか知らないが、完全に目が据わっている。ティアは笑顔を引きつらせた。
「やだな、落ち着いてよ。聞いてたよ? ……でもさ、なんかちょっと確信がもてないっていうか。ほんとかな~って」
「こんなことで嘘ついてどうすんだ」
「うん、そうだね。分かるよ、落ち着いて。いったん水飲もっか?」
「酔ってねぇよ」
「そう? ……それはそれで怖いんだけど」
セトが追加のブランデーを入れようとしたので、あわててボトルを押さえた。鋭い目で睨まれる。はっきりいって怖い。もともと吊り上がったきつい印象を与える目ではあったが、今や凶悪すぎて直視できない。セトが暴力に訴えたらティアは秒で負ける。
「あのっ……あのさ、もうちょっとこう……話をね、噛み砕きたいんだけど」
「……あ?」
「威嚇しないで。こわい」
「してねぇよ」
「してるよ!」
ティアの必死な様子に、セトは不満がありそうだが手を引いた。
「アリスちゃんが……僕らのこと嫌いって、ほんとにそう言った? あの子、話せないのに?」
疑問を口にすると、セトが記憶をなぞるように横を見た。その隙にそうっとボトルを彼から離しておく。
「……いや、あいつは言ってねぇけど」
「えっ、やっぱり言ってないの?」
「やっぱりってなんだ! 直接は言ってねぇってことだよ」
「……間接的に嫌いってどう伝えるの?」
「俺が、俺らのこと嫌いなのかって訊いたら、否定しなかったんだよ」
「…………え、それだけ?」
「あ?」
「だから威嚇しないでってば」
機嫌をとるべく、ドライフルーツとチーズの載った皿を差し出す。セトはアプリコットをつまんで口に放り込んだ。こうなるとチョコレートも並べておけばよかったと、頭の端で悔やむ。
「そもそも、なんでそんなこと訊いちゃうかな……アリスちゃんが僕らのこと好きなわけないのに……」
「は? なんでだよ」
「ん?」
「なんで好きなわけねぇんだよ」
「……え? それ本気で言ってる?」
ぱくぱくとドライフルーツを消費するセトの顔は無表情で、ふざけているわけではないらしい。そういう冗談を言う人間でないのは知っているが、本気で言えるのも理解しがたい。そして、フルーツだけ食べすぎている。チーズとバランスよく食べてほしい。
「……あのさ、もうこの際はっきりしておくけど」
「なんだよ」
「アリスちゃんは、僕らと……その、寝たいわけじゃ……ないんじゃない?」
「あっちが提案したのに? セックスするから面倒みろって」
「うん、もうちょっとオブラートに包んで。……それでさ、そこまではっきり言ってないよね? ……サクラさんが言ったのは、前は身体を売ることで世話してもらっていたってだけでしょ?」
「だからなんだよ?」
「ひとまずそれを前提とするよ? たとえば……それが嫌で、前のところを逃げ出した可能性は?」
「は? ……だったら、なんで俺なんかに頼るんだよ。何度も言うけど俺は攫ってねぇぞ。あっちが縋ってきたんだからな」
「それはさ、たまたま助けられて、セト君なら優しくしてくれると思って……ついてきちゃったんじゃない? あるいは、相手がセト君ひとりならマシだと思ったか」
「………………」
「僕は、“身体を引き換えに”っていうの、本人が割りきってるとは思えないんだけど」
「……けどよ、最初の夜に……あいつが、言ったんだぞ。面倒みてくれたお礼に、身体で返すとかなんとか。最初は俺がいいって、サクラさんが……」
セトの言い分に、吐息がこぼれた。ティアは思わず笑っていた。セトの、あまりの盲目さに。
「ちょっと待ってよ。……誰が言ったって?」
「誰ってウサギの話だろ」
「違うよね? ……さっきもこれ、確認したけど。アリスちゃんは話せないんだよ」
「それは共通語がだろ。サクラさんが訳したんだよ」
「つまり全部サクラさんが言ったんだ? アリスちゃんに誰がいいか訊いて、セト君に抱きついたから、とか聞いてたけど。もしかして、あれ、嘘?」
「嘘じゃねぇよ」
「そうかな? なんかちょっと、セト君のことも信じられなくなってきたな……」
「何言ってんだ」
セトの怪訝な目に、ほほえんだ。ティアは今まで怒ったことがない。そういう火が点くような激しい感情をもつ機会がなく、きっとこれから先も誰かに対して怒ることはない。常に相手に期待していないからというのも考えられるが、怒りの感情が表に出る前に呆れに置き換わっているのだと、自分では解釈している。
「話を戻そうか……サクラさんが、くる前に」
ゆっくりと、唇を動かす。セトへの恐怖心はもうなく、ただ静かに、平坦な感情で事実を確認する。
「アリスちゃんが、僕らを嫌いって……否定しなかったんだよね?」
「そこに戻るのかよ」
「どうしてそういう話になったのか、僕が気になるからね。……彼女が言葉を理解していない可能性もあるけど、とりあえずそれは置いておくよ?」
「あれは分かってた」
「うん、じゃ、そこはセト君の勘を信じるとして。……なんで、そんな質問したの?」
「なんでって……覚えてねぇけど」
「ちゃんと思い出して」
「…………あぁ、たしか……ハウスの話をしてたら……様子がおかしくなって。それで、ハウスに帰りたくねぇのかって、訊いたような……俺らが嫌いだから、帰りたくねぇのかって。そんな流れだったと思うけど」
「流れが分かんないんだけど。僕ら今、ハウスにいないでしょ。ハウスに帰りたくない——そこからなんで、僕らが嫌いに結びつくの?」
「それは、なんつぅか……目が」
「目?」
「説明できねぇけど……そういう感じだったんだよ」
「ちょっと。大事なとこ雑に判断しないでよ。それ、セト君の悪いとこだよ」
「うるせぇな」
「じゃ、そこはもういいよ。……ハウスの話って何? 帰る話なら先に僕も言ったし、サクラさんも説明してたと思うけど。セト君、なにか余計な情報を与えたんじゃないの?」
「俺は別に、服の話くらいしか…………あ」
宙を泳いでいたセトの視線がぴたりと止まり、ティアに戻る。
「あぁ、人数か」
「……人数?」
「ハウスにあと4人いるっつって。俺らと合わせて8人。数を教えてやったんだよ、たしか」
「……なにそれ。もう答え出てるよね……」
ティアは嘆息して、グラスの中の液体を喉に流した。きょとんとしたセトを細い目で見返して、偏った残り方をしているチーズをひとつ口に含む。クリーミーなチーズは風格あるコニャックによく合っていて、辟易する気持ちの打ち消しを手伝ってくれた。「おいティア。食ってねぇで説明しろ」皿を取りあげるセトに解答を伝えるのが、ひどく億劫だ。グラスに映る虚像を見つめつつ、
「だからさ……ハウスに帰ることで人が増えるから、ショック受けたんでしょ? そんなにいると思わなかったか、前のとこより多いからかは知らないけどさ。そこまで想定していなかったってことだよ」
「……人数が増えるとなんで衝撃なんだ……?」
「はい? ……なに言ってるの?」
「いや、だからなんで人が増えるとウサギが困るのかって訊いてんだよ」
「相手する人数が増えるでしょ? そうしたら嫌でしょ、普通は」
「いや、そこよく分かんねぇ……俺ら今、夜は順番に寝てるよな? 仮にひとりしか相手がいないにしても、毎晩するなら回数変わらなくねぇか? それなら、いろんなやつとするほうが退屈しねぇんじゃねぇか……?」
「うわ……もうやだ。セト君、きみちょっとダメだ。どこから突っこめばいいのか分かんない」
「いや俺も、お前の言ってること全然分かんねぇけど……」
「なんで!? えっ僕がおかしいの? 知らない人とセックスするの、普通は抵抗あるものじゃないのっ? 自分ひとりでも当たりまえのようにアリスちゃんと毎日するのが前提なセト君が間違ってるんじゃないのっ?」
「オブラートはどうした……つぅか。もしかしてお前、酔ってねぇ?」
「酔ってない」
「けどなんか……テンションたけぇぞ」
「酔っぱらいのセト君に言われたくない」
「俺は酔ってねぇよ」
「酔っぱらいは大概そう言うんだよ」
「ならお前もじゃねぇか。……大体、普通普通って言ってるけど、ウサギは娼婦だろ。その時点で理屈が変わるだろが」
「だから娼婦じゃないんだって!」
吐き出してからハッとした。驚いて目をぱちくりとさせているセト。図らずしも高くなった声にティア自身もびっくりしている。
「……ごめん、今のなし。水取ってくる」
短くつぶやいて、セトが言葉を咀嚼する前に席を立った。しかし、セトの反応は早い。脊髄反射のようにティアの腕を掴んでいた。
「……待てよ。無しってなんだよ」
「酔ってるみたい。うるさくしてごめんね」
「そうじゃねぇだろ」
「セト君も酔ってるよね? 水取ってこようか」
「おい」
「チョコにする?」
「ティア!」
耳をたたく呼び名に、目をつむった。やかましい、わずらわしい。耳を塞ぎたくなる恐れのようなこの感情は、そう遠くない記憶と同じだ。
「ウサギが……娼婦じゃねぇって、なんだよ」
引きずり出されそうな記憶を抑え、代わりに深く息を吐き出し、目を開けた。目前の琥珀の眼は、戸惑いに満ちている。
「深い意味はないよ? 娼婦にしては覚悟が足りないよねって、それだけの話」
「ほんとか? あいつがそう言ったんじゃねぇのか?」
「あの子は話せないでしょ」
「でも、お前なら……分かるんじゃねぇの」
「なんで? 知らない言語なのに?」
「だってお前、」
「セト君」
セトの言葉を遮った。掴まれていた手を振り払い、笑顔の仮面を貼りつける。
「君は、サクラさんを信じてるんでしょ? ……なら、僕の言うことなんて——聞く意味、ないよ?」
試すような意思が混ざったのは、否定しない。たたみ掛けようとしていたセトが、ティアの牽制によって躊躇し、口をつぐんだ。彼を縛りつけるのは、サクラへの忠誠心だろうか。盲目的なまでに愚かな彼の信用が、長い時のなかで培われたものだとしたら、ティアにはとうてい太刀打ちできない。太刀打ちしたいわけでも、ないが。
「……ほら。サクラさん、帰ってきたよ?」
琥珀の眼が、ティアを放した。サクラが寝室からキッチンへ入ってきたところで、水を飲むためだろう水流の音がする。ティアも同じものを求めてキッチンへと移動した。
「サクラさん、僕にも水くれる?」
水を飲んでいたサクラが、ちらりと目だけでこちらを見た。波打つ曲線のならんだ幾何学模様の着物が、濃い藍色のせいか、伸びる青白い手脚をひどく不健康にみせる。自身が口をつけていたクリスタルのグラスを洗浄機に入れてから、サクラは新たなグラスを取り出した。
「ついでにセト君のも」
「ティア、……お前、酔っていないか?」
「ちょっとね。でも、セト君のほうが酔ってるよ。叱るならセト君ね」
サクラがグラスに水をそそぐ。それを受け取りながらセトの飲酒を告げ口すると、リビングから「俺は酔ってねぇだろ!」反論が聞こえた。胸中だけで舌を出しておく。
「……楽しそうだな?」
「そう? サクラさんも呑む?」
「いいや、今夜は遠慮しておくよ」
「賢明な判断だよね。あのブランデー、悪酔いするよ」
肩をすくめ、グラスの水をあおった。そんなティアの様子にサクラはふっと笑って、セトへと別のグラスを持っていく。
「お前も要るか?」
「……貰う」
素直に水を受け取っているらしいので、ティアはもう何も言わず残りの水を飲み干すことだけに集中した。
思い出したくない過去も、迷い込んだ他人のことも、今は考えたくない。煩雑なものすべて忘却のはるか彼方に追いやって、ただ透きとおる水の冷たさだけ感じていよう。
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