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Chap.11 致死猫は箱の中
Chap.11 Sec.11
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まばゆい光の満ちた部屋で、にぎやかな声があがっていた。
「イェ~イ! クリア~!」
「ロキ、ナイス! 全部クリティカルヒットやが!」
「よゆ~♪ 高難度でもい~よ」
「これ最上やって! ……あっ、タイム見て! このステージめっちゃ早かった! ほら! うちらすごいわ!」
「すごいのはオレだけじゃねェ?」
「うちも活躍してたし!」
ヘッドセットを着けたまま、大きなチェアに座っていたハオロンは傍らのワゴンに手を伸ばし、ドリングボトルを掴んだ。サイダーがパチパチと弾けながら喉に流れていく。
「やっぱしパートナーはロキやの。セトとは全然違うわ」
「まァ~ね。これ、次もこの装備でい~の?」
「ん~ん、防御重視に替えて。武器はグレネードランチャーで炸裂弾と……あとは地雷と手榴弾やの」
「爆発系じゃん! いいねェ! 爆破しまくって派手にいこ~ぜっ!」
「ほやの! みんな吹き飛ばしてやるわっ!」
室内にはふたりの声のみが響いている。しかし、互いの脳内ではゲームのBGMや操作音が鳴っているため、声量が大きい。深夜のテンションも相まって非常にやかましい。
水分を摂取したハオロンとロキは、ゲームにおけるステージを進んだ。
「ロキは右端に地雷セットしといて」
「右端ってどこ?」
「マップの右端」
「いや、そっちがマップどう見てるか知らねぇって。方角で言って」
「うちのマップ、今は左が北やわ」
「つまり南でい~の? こっち?」
「えっ、どこ行ってるんや? 下やよ?」
「下? 降りられねぇけど?」
「マップの下やって」
「アンタの北は今どこ?」
「左上!」
「エレベータの手前?」
「そうそう! 後でそっちに逃げるからぁ……いい感じにセットしといて!」
「指示が雑……」
「大丈夫! うちロキを信じてる!」
「ハイハイ」
「セットした? はよ戻って来て! うち死ぬんやけど!」
「はァっ? なんで秒で死にかけてンの?」
「こいつめっちゃ強い! あっ避けられた! ちょっ痛いって! やめてや!」
「ハオロン今どこ?」
「上! 北も上!」
「それは最初から北でい~じゃん?」
「はよして! 死ぬって!」
「見っけ。なんか血まみれだなァ……ハオロン死にかけてねェ~?」
「死ぬってずっと言ってるやろ! はよ助けてや!」
「これさァ、炸裂弾で撃つとハオロンも被弾して死なねェ?」
「ほんとやわ! あかん! やめて! ハンドガンかライフルで撃って!」
「……どっちも置いて来たけど?」
「なんでっ? どっちかは持っといてよ! あほ!」
「武器はアンタが指示したじゃん!?」
ぎゃあぎゃあとした喧噪を乗り越えて、小休止。からくも敵を倒したハオロンとロキは、各自でゲーム内の探索を始めた。
「死ぬかと思ったわ……ロキがいないとハードモードは無理やの……」
「ギリギリだったなァ~……まァ、あれくらいスリルあったほうが楽しくねェ?」
「ほやの。……あ、鍵こっちやったわ」
「回復がねェな~」
「ハードは回復アイテム落ちてないよ?」
「は? マジで? ……やばくねェ? オレから見えるハオロン、真っ赤なんだけど?」
「もうちょっと先で売人いるし、そこで買おか。それまではロキがうちを護っといて」
「えェ~? この武器で護るのムリじゃねェ?」
「大丈夫やって。今日のロキ、絶好調やし」
「護りながらやるの怠ィじゃん……爆破しまくりたかったのにさァ……」
「あんたの本領はスナイパーやが」
「今日は爆破のテンション」
「どんなテンションやし」
ハオロンと会話を続けながら、ロキはベッドの上で背面に寄り掛かった。丸いベッドのヘッドサイドはクッション性のある背もたれで、ソファのそれとよく似ている。
「もともとオレは爆発物スキなんだけど?」
「そぉなんかぁ? まぁ、うちも好きやけどぉ……ん、次のとこ行こか」
「オレが先な。……爆発物はさ、ゲームじゃなくて、リアルで作るのが好きだったンだよなァ~」
「わかる! ラボに忍び込んでやろ? うちも爆薬作ってラボ破壊したことあるわ!」
「いや、オレはハウス来る前……ってか破壊って……それこそ血まみれじゃん。死ななかったワケ?」
「安心して。目の前で今も生きてるやろ?」
「アンタじゃなくて他の人間」
「ひとりで作ってたし、喰らったのはうちだけ。……けどぉ、そのせいでラボのセキュリティめっちゃ堅くなって……うちクラッキング無理やのに、ケガしたせいか、誰もロック外してくれんし……それ以降、禁止されたも同然やの……」
「オレに頼めばよかったンじゃねェ? なんか交換条件出してさ」
「頼んだよ? ……人殺しとか言われたくねぇし? とか言って断られたよ?」
「……あァ、あれね。……まァ、昔のオレだったらやらねェよなァ~」
「なんやって! やったげてや! 過去のうち可哀想やわ!」
「それでアンタが死んだら、みんなに怨まれるし。オレのが可哀想じゃん?」
「ロキも一緒に作ってくれたらよかったんやが……あ、せっかくやし、明日にでも作ろっさ」
「何がせっかくなワケ?」
「趣味が同じやった記念やの♪ セトの許可とって、森でなんか爆破しよさっ」
「森のもん爆破なんて犬がキレるんじゃねェ? ……ってか、オレの対象は人」
「えっ? ……ロキ、意外と過激やの……人間を爆破したいんか……」
「殺す気ねェから。こまかく言うと、ムカつく奴に喰らわすのがスキだったワケ」
「それもだいぶ過激やけどぉ……」
「なァ、先進むなって。護れねェじゃん」
「ロキが遅いんやが」
「アンタの分も倒してるからだろ? 真っ赤なくせに、なんで進んでくかなァ~?」
「人の本能やの。……ねぇ、ロキが作った爆弾って、どんなんやったの?」
「ン~? ……大抵はプレゼント型。箱の中に仕込んどく」
「あんたはテロリストか。めっちゃ犯罪やが……なんで捕まらんのやし」
「正確には爆弾じゃねェな……殺傷力ねェし。爆発しても虫とか小麦粉が舞うだけ」
「……それ面白いんかぁ?」
「オレは面白かったケド? ……表面にさ、そいつの欲しがってた物とか書いておくと、いいリアクションが見られるンだよなァ。……欲しい物を期待した先で、裏切られるワケ。泣いてる奴もいて愉しかったなァ~」
「子供相手に陰湿な嫌がらせしてるんやの……」
「大人にもやったけどねェ~……オレも子供だったし? オレを不快にさせた奴にしかやってねェよ?」
「あぁ……仕返しか。それやったら、うちも似たようなことしたわ」
「……ムカつく奴にはさ、やり返せばい~よ。こっちがムカついてるって、知らせてやらねェと……何回でもやってくるじゃん。うぜェよ」
「ほやの。他人にうちのハッピーライフ邪魔されたくないわ……あ! そこ売人いるとこ! 入ろ!」
「早く回復して」
「ロキは武器交換しときね」
血で染まっていたハオロンの使用アバターが、すっきりと本来の姿に戻った。ロキは所持する武器を一部変更する。
「おっけェ! 行こォぜ!」
「次はうちも倒すわ! ……ところで、ロキ今日テンション高くないかぁ?」
「爆破のテンションって言ったじゃん?」
「なんでそんなテンション?」
「ン~? ……ナイショ」
「えぇ~? 気になるんやけどぉ……」
「…………昔からさ、犬が、オレの手ェ出したコとはヤらないの知ってる?」
「知らん。セトって誰でもいいんかと……あ! やばいわ! これ無理!」
「アンタなんで突っ込んでくワケ!?」
「人の本能!」
「もう回復ねェんだろっ? 考えてやれよ!」
「やった! 倒した!」
「オレだし!」
「危なぁ……ダメージ喰らわんかったからセーフやの……」
「マジで下がっててくんない? ここで死んだら面倒」
「大丈夫やって。……で? セトがなんやって?」
「オレが遊んだコと、犬はヤらねェの」
「その日の話やなくて?」
「長期にわたって」
「ん~……兄弟と比べられるのがぁ……嫌なんやろかぁ……?」
「そんな繊細かねェ~?」
「セトに限ってないかぁ……」
「ひとの手垢ついたのがイヤなんじゃねェ?」
「あぁ~……それかロキに遠慮してたとかぁ?」
「なんで?」
「取られたみたいで嫌やし?」
「フーン……」
「ロキに遠慮なんて無意味やの……」
「まァね……オレは犬と遊んだコでも気にしねェから~……気に入ったコは普通に誘ったンだけどォ……」
「あぁっ! また避けられた!」
「パターン決まってンだから、避けられるの想定して撃てばい~のに」
「分かってるけど! 反射的に撃ちたくなるんやって!」
「ハイハイ、本能ね」
「そぉ! ……ん? セトは遠慮してくれてたのに、ロキは手ぇ出してたんかぁ?」
「遠慮してるとか知らねェし。……まァ、だからさァ……オレのほうは犬がどんな感じか知ってンだよなァ~……」
「どんな感じってなに?」
「冷てェとか怖いとか……いろいろ。やり方も」
「えぇ~? 兄弟のそんなん聞きたくないわ……相手のコもなんで喋るんや……?」
「訊いたら教えてくれたァ~」
「あんたが訊いたんか……なに訊いてるんやって……」
「……ダメなわけ?」
「ダメやと思うよ?」
「なんで?」
「セトが嫌がるからぁ?」
「嫌がられてないけど?」
「それは知らんだけで……知ったら嫌がるやろ。……しかもセト、ぼろくそ言われてるし……顔が怖いのは分かるけどぉ……あれは生まれつきやが……」
「怖いかねェ~? ……てか、怖いのは顔じゃなくて態度らし~よ」
「セトは昔から優しいよ? ……ロキに怖いもんなんてあるんかぁ……?」
「さァ~……どォだろな~……」
「ねぇ……」
「ン~?」
「うちら、なんでセトの話なんてしてるんや……?」
「爆破テンションの理由が、犬にあるから」
「……よぉ分からん……」
「ウサちゃんに、爆弾を仕掛けたの」
「はっ? あんた何してるんやって……えっ? セト無事なんか?」
「前見て」
「あぁっ! ……危な!」
「最低でも前は見といてくんねェ?」
「え、まってや。……セトは? ありすに爆弾ってなに?」
「爆弾は嘘」
「……なんや……びっくりした……」
「仕掛けたのは、嫌がらせのプレゼント。上手く爆発したらい~なァ……って期待してるトコ」
「何したんやって……ロキはセトに嫌がらせしすぎやわ……すぐ怒らせるし……あんましすると嫌われるよ?」
「……どうでもいいよ。オレは今、ウサギが欲しい」
「ありすはみんなのやよ」
「ヤだね、オレが貰う」
「あかんって……あっ、なんで見捨てるんや!? 手伝ってよ!」
「どォしよっかなァ~?」
「痛っ……ロキ! 手伝って! うち死ぬって!」
「ウサちゃんの順番、全部オレに譲ってくれる?」
「はぁっ? 嫌やし!」
「じゃァ知らねェ~」
「なんで!? あとちょっとでクリアやのに!」
「独りで頑張るしかないねェ~?」
「無理やって! こんなとこで見捨てんといてや!」
「ン~……ならさ、ウサちゃんに痛いことしねェって、約束する?」
「えぇ~っ? それも嫌やけど……」
「じゃァ仕方ないねェ~? 可哀想だけど頑張って」
「まって! するする! めっちゃ約束する!」
「言質ちょうだい、残しとくし」
「ありすに痛いことせんから! 戦って! あとちょっとでクリアやから!」
「破ったら裁判な」
「大事すぎんかぁ!? ちょっとならいい!?」
「ダメ。一切ナシ」
「なんでやって! 意地悪!」
「あァ~死にそォだな~?」
「あかん、約束するで戦って! ありすに痛いことせん! 絶対!」
「言ったね?」
「言ったから! はよして! 死ぬって!」
「ハイハ~イ」
助力を得るため、安易に約束を交わしたハオロン。ロキはヘッドセットの下で唇を曲げた。無論ハオロンには見えていない。
「やったぁ! 殲滅完了!」
「いぇ~い」
嬉々としたハオロンの声に、ロキのゆるい感嘆詞が重なる。ヘッドセットのなかで、ロキは軽く目を閉じた。隣の部屋が爆発するイメージ——ではなく、期待したプレゼントの中身が最悪の贈り物だったときに見られる、人々の表情。裏切られたときに顕在化する、悲しみと怒り。
それらを思い出しながら、ロキは惨虐な笑みを浮かべていた。
味わえばいい——少しでも、同じ思いを。
彼女の背に仕掛けられた悪意は、暗い忠告を孕んでいる。
——いちど捨てたくせに、何も手放さないまま都合よく取り戻せると思うなよ?
「イェ~イ! クリア~!」
「ロキ、ナイス! 全部クリティカルヒットやが!」
「よゆ~♪ 高難度でもい~よ」
「これ最上やって! ……あっ、タイム見て! このステージめっちゃ早かった! ほら! うちらすごいわ!」
「すごいのはオレだけじゃねェ?」
「うちも活躍してたし!」
ヘッドセットを着けたまま、大きなチェアに座っていたハオロンは傍らのワゴンに手を伸ばし、ドリングボトルを掴んだ。サイダーがパチパチと弾けながら喉に流れていく。
「やっぱしパートナーはロキやの。セトとは全然違うわ」
「まァ~ね。これ、次もこの装備でい~の?」
「ん~ん、防御重視に替えて。武器はグレネードランチャーで炸裂弾と……あとは地雷と手榴弾やの」
「爆発系じゃん! いいねェ! 爆破しまくって派手にいこ~ぜっ!」
「ほやの! みんな吹き飛ばしてやるわっ!」
室内にはふたりの声のみが響いている。しかし、互いの脳内ではゲームのBGMや操作音が鳴っているため、声量が大きい。深夜のテンションも相まって非常にやかましい。
水分を摂取したハオロンとロキは、ゲームにおけるステージを進んだ。
「ロキは右端に地雷セットしといて」
「右端ってどこ?」
「マップの右端」
「いや、そっちがマップどう見てるか知らねぇって。方角で言って」
「うちのマップ、今は左が北やわ」
「つまり南でい~の? こっち?」
「えっ、どこ行ってるんや? 下やよ?」
「下? 降りられねぇけど?」
「マップの下やって」
「アンタの北は今どこ?」
「左上!」
「エレベータの手前?」
「そうそう! 後でそっちに逃げるからぁ……いい感じにセットしといて!」
「指示が雑……」
「大丈夫! うちロキを信じてる!」
「ハイハイ」
「セットした? はよ戻って来て! うち死ぬんやけど!」
「はァっ? なんで秒で死にかけてンの?」
「こいつめっちゃ強い! あっ避けられた! ちょっ痛いって! やめてや!」
「ハオロン今どこ?」
「上! 北も上!」
「それは最初から北でい~じゃん?」
「はよして! 死ぬって!」
「見っけ。なんか血まみれだなァ……ハオロン死にかけてねェ~?」
「死ぬってずっと言ってるやろ! はよ助けてや!」
「これさァ、炸裂弾で撃つとハオロンも被弾して死なねェ?」
「ほんとやわ! あかん! やめて! ハンドガンかライフルで撃って!」
「……どっちも置いて来たけど?」
「なんでっ? どっちかは持っといてよ! あほ!」
「武器はアンタが指示したじゃん!?」
ぎゃあぎゃあとした喧噪を乗り越えて、小休止。からくも敵を倒したハオロンとロキは、各自でゲーム内の探索を始めた。
「死ぬかと思ったわ……ロキがいないとハードモードは無理やの……」
「ギリギリだったなァ~……まァ、あれくらいスリルあったほうが楽しくねェ?」
「ほやの。……あ、鍵こっちやったわ」
「回復がねェな~」
「ハードは回復アイテム落ちてないよ?」
「は? マジで? ……やばくねェ? オレから見えるハオロン、真っ赤なんだけど?」
「もうちょっと先で売人いるし、そこで買おか。それまではロキがうちを護っといて」
「えェ~? この武器で護るのムリじゃねェ?」
「大丈夫やって。今日のロキ、絶好調やし」
「護りながらやるの怠ィじゃん……爆破しまくりたかったのにさァ……」
「あんたの本領はスナイパーやが」
「今日は爆破のテンション」
「どんなテンションやし」
ハオロンと会話を続けながら、ロキはベッドの上で背面に寄り掛かった。丸いベッドのヘッドサイドはクッション性のある背もたれで、ソファのそれとよく似ている。
「もともとオレは爆発物スキなんだけど?」
「そぉなんかぁ? まぁ、うちも好きやけどぉ……ん、次のとこ行こか」
「オレが先な。……爆発物はさ、ゲームじゃなくて、リアルで作るのが好きだったンだよなァ~」
「わかる! ラボに忍び込んでやろ? うちも爆薬作ってラボ破壊したことあるわ!」
「いや、オレはハウス来る前……ってか破壊って……それこそ血まみれじゃん。死ななかったワケ?」
「安心して。目の前で今も生きてるやろ?」
「アンタじゃなくて他の人間」
「ひとりで作ってたし、喰らったのはうちだけ。……けどぉ、そのせいでラボのセキュリティめっちゃ堅くなって……うちクラッキング無理やのに、ケガしたせいか、誰もロック外してくれんし……それ以降、禁止されたも同然やの……」
「オレに頼めばよかったンじゃねェ? なんか交換条件出してさ」
「頼んだよ? ……人殺しとか言われたくねぇし? とか言って断られたよ?」
「……あァ、あれね。……まァ、昔のオレだったらやらねェよなァ~」
「なんやって! やったげてや! 過去のうち可哀想やわ!」
「それでアンタが死んだら、みんなに怨まれるし。オレのが可哀想じゃん?」
「ロキも一緒に作ってくれたらよかったんやが……あ、せっかくやし、明日にでも作ろっさ」
「何がせっかくなワケ?」
「趣味が同じやった記念やの♪ セトの許可とって、森でなんか爆破しよさっ」
「森のもん爆破なんて犬がキレるんじゃねェ? ……ってか、オレの対象は人」
「えっ? ……ロキ、意外と過激やの……人間を爆破したいんか……」
「殺す気ねェから。こまかく言うと、ムカつく奴に喰らわすのがスキだったワケ」
「それもだいぶ過激やけどぉ……」
「なァ、先進むなって。護れねェじゃん」
「ロキが遅いんやが」
「アンタの分も倒してるからだろ? 真っ赤なくせに、なんで進んでくかなァ~?」
「人の本能やの。……ねぇ、ロキが作った爆弾って、どんなんやったの?」
「ン~? ……大抵はプレゼント型。箱の中に仕込んどく」
「あんたはテロリストか。めっちゃ犯罪やが……なんで捕まらんのやし」
「正確には爆弾じゃねェな……殺傷力ねェし。爆発しても虫とか小麦粉が舞うだけ」
「……それ面白いんかぁ?」
「オレは面白かったケド? ……表面にさ、そいつの欲しがってた物とか書いておくと、いいリアクションが見られるンだよなァ。……欲しい物を期待した先で、裏切られるワケ。泣いてる奴もいて愉しかったなァ~」
「子供相手に陰湿な嫌がらせしてるんやの……」
「大人にもやったけどねェ~……オレも子供だったし? オレを不快にさせた奴にしかやってねェよ?」
「あぁ……仕返しか。それやったら、うちも似たようなことしたわ」
「……ムカつく奴にはさ、やり返せばい~よ。こっちがムカついてるって、知らせてやらねェと……何回でもやってくるじゃん。うぜェよ」
「ほやの。他人にうちのハッピーライフ邪魔されたくないわ……あ! そこ売人いるとこ! 入ろ!」
「早く回復して」
「ロキは武器交換しときね」
血で染まっていたハオロンの使用アバターが、すっきりと本来の姿に戻った。ロキは所持する武器を一部変更する。
「おっけェ! 行こォぜ!」
「次はうちも倒すわ! ……ところで、ロキ今日テンション高くないかぁ?」
「爆破のテンションって言ったじゃん?」
「なんでそんなテンション?」
「ン~? ……ナイショ」
「えぇ~? 気になるんやけどぉ……」
「…………昔からさ、犬が、オレの手ェ出したコとはヤらないの知ってる?」
「知らん。セトって誰でもいいんかと……あ! やばいわ! これ無理!」
「アンタなんで突っ込んでくワケ!?」
「人の本能!」
「もう回復ねェんだろっ? 考えてやれよ!」
「やった! 倒した!」
「オレだし!」
「危なぁ……ダメージ喰らわんかったからセーフやの……」
「マジで下がっててくんない? ここで死んだら面倒」
「大丈夫やって。……で? セトがなんやって?」
「オレが遊んだコと、犬はヤらねェの」
「その日の話やなくて?」
「長期にわたって」
「ん~……兄弟と比べられるのがぁ……嫌なんやろかぁ……?」
「そんな繊細かねェ~?」
「セトに限ってないかぁ……」
「ひとの手垢ついたのがイヤなんじゃねェ?」
「あぁ~……それかロキに遠慮してたとかぁ?」
「なんで?」
「取られたみたいで嫌やし?」
「フーン……」
「ロキに遠慮なんて無意味やの……」
「まァね……オレは犬と遊んだコでも気にしねェから~……気に入ったコは普通に誘ったンだけどォ……」
「あぁっ! また避けられた!」
「パターン決まってンだから、避けられるの想定して撃てばい~のに」
「分かってるけど! 反射的に撃ちたくなるんやって!」
「ハイハイ、本能ね」
「そぉ! ……ん? セトは遠慮してくれてたのに、ロキは手ぇ出してたんかぁ?」
「遠慮してるとか知らねェし。……まァ、だからさァ……オレのほうは犬がどんな感じか知ってンだよなァ~……」
「どんな感じってなに?」
「冷てェとか怖いとか……いろいろ。やり方も」
「えぇ~? 兄弟のそんなん聞きたくないわ……相手のコもなんで喋るんや……?」
「訊いたら教えてくれたァ~」
「あんたが訊いたんか……なに訊いてるんやって……」
「……ダメなわけ?」
「ダメやと思うよ?」
「なんで?」
「セトが嫌がるからぁ?」
「嫌がられてないけど?」
「それは知らんだけで……知ったら嫌がるやろ。……しかもセト、ぼろくそ言われてるし……顔が怖いのは分かるけどぉ……あれは生まれつきやが……」
「怖いかねェ~? ……てか、怖いのは顔じゃなくて態度らし~よ」
「セトは昔から優しいよ? ……ロキに怖いもんなんてあるんかぁ……?」
「さァ~……どォだろな~……」
「ねぇ……」
「ン~?」
「うちら、なんでセトの話なんてしてるんや……?」
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「……よぉ分からん……」
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「はっ? あんた何してるんやって……えっ? セト無事なんか?」
「前見て」
「あぁっ! ……危な!」
「最低でも前は見といてくんねェ?」
「え、まってや。……セトは? ありすに爆弾ってなに?」
「爆弾は嘘」
「……なんや……びっくりした……」
「仕掛けたのは、嫌がらせのプレゼント。上手く爆発したらい~なァ……って期待してるトコ」
「何したんやって……ロキはセトに嫌がらせしすぎやわ……すぐ怒らせるし……あんましすると嫌われるよ?」
「……どうでもいいよ。オレは今、ウサギが欲しい」
「ありすはみんなのやよ」
「ヤだね、オレが貰う」
「あかんって……あっ、なんで見捨てるんや!? 手伝ってよ!」
「どォしよっかなァ~?」
「痛っ……ロキ! 手伝って! うち死ぬって!」
「ウサちゃんの順番、全部オレに譲ってくれる?」
「はぁっ? 嫌やし!」
「じゃァ知らねェ~」
「なんで!? あとちょっとでクリアやのに!」
「独りで頑張るしかないねェ~?」
「無理やって! こんなとこで見捨てんといてや!」
「ン~……ならさ、ウサちゃんに痛いことしねェって、約束する?」
「えぇ~っ? それも嫌やけど……」
「じゃァ仕方ないねェ~? 可哀想だけど頑張って」
「まって! するする! めっちゃ約束する!」
「言質ちょうだい、残しとくし」
「ありすに痛いことせんから! 戦って! あとちょっとでクリアやから!」
「破ったら裁判な」
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「ダメ。一切ナシ」
「なんでやって! 意地悪!」
「あァ~死にそォだな~?」
「あかん、約束するで戦って! ありすに痛いことせん! 絶対!」
「言ったね?」
「言ったから! はよして! 死ぬって!」
「ハイハ~イ」
助力を得るため、安易に約束を交わしたハオロン。ロキはヘッドセットの下で唇を曲げた。無論ハオロンには見えていない。
「やったぁ! 殲滅完了!」
「いぇ~い」
嬉々としたハオロンの声に、ロキのゆるい感嘆詞が重なる。ヘッドセットのなかで、ロキは軽く目を閉じた。隣の部屋が爆発するイメージ——ではなく、期待したプレゼントの中身が最悪の贈り物だったときに見られる、人々の表情。裏切られたときに顕在化する、悲しみと怒り。
それらを思い出しながら、ロキは惨虐な笑みを浮かべていた。
味わえばいい——少しでも、同じ思いを。
彼女の背に仕掛けられた悪意は、暗い忠告を孕んでいる。
——いちど捨てたくせに、何も手放さないまま都合よく取り戻せると思うなよ?
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