あやかしあやかしお悩み相談所。

星梅

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プロローグ②

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「はぁ~。どうしようかな・・・。」

つい先程のことでした。家賃を払えなくなり大家さんにアパートを追い出されたのは・・・。

親も分からず僕は赤子のとき捨てられていました。
拾ってくれ育ててくれた人は、不思議なことに顔が思い出せません。
しかし、こればかりは分かります。その人は、僕を愛し大切に育ててくれた。
だが僕が高校生になったとき突然と姿をけしたのです。残していってくれたものは通帳に入っていた多額のお金。捨てられていた時僕を包んでいたハンカチ。そして、その人との思い出のあるマフラー・・・。

まさに今、高校生から社会人に至るまでにつかっていたお金をあらかた使い果たしたのです。買えるのはコンビニのおにぎり数個分だけ。

「もう少し節約すれば良かった・・・。」

僕は、スーツケースに全財産をいれどこか泊まれる場所を探しながら後悔する。

しかしいくら歩いても見つからない。それはそうか。こんな何百円しかもっていない人を止めることが出来るところはあるはずない。一か八かの賭けだったが今日は、野宿しよう・・・。

僕は、野宿できる場所を探し始めた。

「あれ・・・?」

歩くにつれて霧がどんどん濃くなっていく。しかし、違和感を感じ始めた時にはもう遅かった。
一瞬にして霧がはれ目の前には先程いた場所の面影もない綺麗な草原とその上には大きな御屋敷がそびえ立っていた。
御屋敷は、和風な建物で門構えがとても立派で高さは3m近くもある。

近づいてみると門に刻まれた複雑な模様がよく見えた。

ギイィィ・・・

突然僕を誘い込むように扉が開いた。
中から1匹の猿が出てきて

「お客様!こちらへどうぞ。」

といった。

「・・・猿?」

動物園で見た事のありそうな猿が日本語を喋っている。猿は人間の祖先と言ったりするが流石に日本語を話すとは・・・。

「えっ?わいが猿に見えとんかいな。君は人間じゃなくてあやかし・・・じゃないな人間だ。なんならなぜわいが人間じゃなく猿にみえるんだ?」

猿さんによると人間にはあやかしではなく人間に見えるらしい。あやかしにはあやかしにみえる。

「まぁいいわそんなこと取り敢えずついてきてくださいな。」

門をくぐると砂庭やししおどし、鯉や蓮の葉が浮いている池などがあった。
猿さんに連れていかれたのは母屋と別にある離れだった。
離れといっても普通の家よりは大きくこれもまた和を感じさせる作りだった。

「お入りくだせぇ。・・・晴さん!連れてきましたで。」 

「ご苦労様。あとは私が案内するからお茶の準備をしてくれるかい。」

「お任せくだせぇ。」

晴さんと呼ばれる人もまた狐の耳をはやししっぽが九つあってあやかしだった。

「こんどは狐・・・。」

一瞬僕が言ったことに驚いたのか晴さんは動揺していた。
しかしそんなことはなかったかのように客間へと通される。
不思議なことがおこっているはずなのに僕はあまり違和感を感じなかった。それどころが、懐かしさまでも感じた。

客間に入ると席をすすめられ座る。椅子はふかふかなつくりでとても座り心地が良かった。

「今日は、どのようなお悩みをお抱えでですか?ぜひ私に教えてください。できる限り悩みを解決致しましょう。」

「実はお金を使い果たしてしまって・・・あっ!ちゃんと仕事はしていますよ。コンビニのアルバイトを・・・。でも働いているところがブラックでしてお給料が少なくて・・・しかも辞めようと思っても辞めさせてもらえないのです。そしてついに住む場所も無くなったのです。」

「ふむ。貴方は、出来ることならどうしたいですか?」

「コンビニのアルバイトを辞めて他のもっとお給料の高くて人並みの生活くらいはおくりたいですね。叶うのならばの話ですけど」

僕は、苦笑気味に話す。晴さんは、何やら考え込んでいて固まっている。そこにちょうど猿さんがやって来てお茶とあうのか分からないプリンをだしてくれた。

「こちらはここの裏にある畑でとれたお茶の葉をつかったお茶と甘味処の高級プリンです。」

まずはお茶を飲んでみる。心に染みて胸の奥から暖かくなっていく。次はプリンを・・・。えっ・・・、やば。今まで食べたプリンとは全然違う食感と味でとても美味しい。ツルんとしてなめらかで今まで食べていたどのプリンにも及ばない美味しさだった。

急に晴さんが思いついたように

「・・・分かりました。全て叶えて差し上げましょう。」

といった。

「その前に1つ質問です。これを叶えたら貴方がいた人間界に自由には戻れなくなりますがよろしいですか?」

「ここって違う世界だったのですか?」

「はい。ここは悩みを抱えた人やあやかしだけが来ることの出来る場所。人間界と妖魔界の間にある世界です。では、どうされますか?」
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