払暁の魔獣使い フォルナ

小鳥葵

文字の大きさ
4 / 31
道中の邂逅

2.盗賊との戦闘

しおりを挟む

 フォルナと石屋の男の視線が交わった、その時。

「盗賊が裏門から村に入ってきた!! 逃げろ!」

 悲鳴と叫ぶ声が聞こえ、その交わりが解けて声のした方へ顔を向ける。

 大振りの剣を持った大男がこちらへ突進する勢いで向かってきていた。


「宝石屋を狙うつもりだ! おい、リュキもそれ置いて逃げろ!」

 宝石屋の主人は、リュキという名らしい。

 リュキは店の外へ出るが、その場を動かない。その顔には、意思がみなぎっていた。


(立ち向かうつもりだ!)

「おい! 何してるんだ、リュキ!」

 大男は今にも大剣をリュキに振り下ろしそうだ。


 フォルナは、覚悟を決め、盗賊の男に近づいた。

 懐から美しい宝玉のついたブーメランを素早く取り出して、大男に狙いを定め力強く投げた。

 ブーメランはまるで意思をもつ鳥のように空中で屈曲し、大男の眉間に当たった。男は叫びながら倒れこむ。


「うぅおおぉぉぉぉぉ!」

 男は片手で額を押さえ、鋭い目がフォルナを睨みつけていた。


「……よくも、よくもこの俺をやってくれたな!!」

 男はフォルナにつかみかかろうとしてくる。

 フォルナはバックステップで避け、胴体に蹴りを入れたが、素早く足をとられて転倒した。


(この男、力が強い‥!)

 殴られる、と思った時背後からリュキが男に突進し、フォルナは攻撃を免れた。


「こ、の‥‥なにしやがる!」

 男がリュキに振り向いた瞬間、男の動作が止まり、リュキを見つめた。


 その様子にリュキも疑問に思ったようだが、機を逃さずすぐに男へ追撃を仕掛けた。

 男はリュキの拳に気づき、防御の姿勢をとって守った後、村の外へ一目散に逃げていった。


 ◆


「君、大丈夫か? ‥‥青痣になってるじゃないか!」

 後ろから声をかけられたフォルナは驚いて、首の後ろの傷に手を当てた。


「え、ええ。心配ないわ。私、薬師なの」

「‥‥薬師、なんだ」


 フォルナはリュキに振り返り、急いで鞄からガーゼを取り出して、接着用の薬液をつけてから傷口を覆った。

「僕は見ての通り宝石屋をしているから、盗賊には前も襲われたんだ」

「そうなのね……あなたは怪我していない?」

「どこも怪我していないよ。お気遣いありがとう」


 リュキは脱げた手袋を取って、手にはめた。

「それよりも、この石はとても綺麗ね。こんな美しいもの、この村に来るまで見たことがなかったわ」

 フォルナは店頭に並んでいる真紅の宝石を指差した。

「これは‥‥」

「旅人さん! 大丈夫か? 怪我はないかー?」

 我に返った村人達がフォルナの元へ駆け寄ってきた。


「大丈夫。どこも怪我していないわ」

「なら良かった。さあ、今日はもう宿屋で休むといい」

「そうさせていただくわ。……では」


 フォルナは村人達に連れられて、宿屋で休むことにした。

 客室に1人になると、首の傷口を隠すガーゼを手で当てた。

(あの人には血を見られたかもしれない。もうすぐここを去らなければいけないわね)


 数分経つと、ノックとともに飯の支度ができたが食べるかと宿屋の者が聞きにきてくれた。

(ここで食べてから、準備をして旅立とう)

 食べると返事をし、食堂へ足を運んだ。


 室内は、窓から差し込んでくる光が部屋を照らして心地良い空間となっている。

 フォルナの他に泊っている旅人達が席に座って、楽しげに談笑していた。


「あ、さっきの旅人さん。こっちの席にどうぞ」

 そう声をかけてきたのは、先程の案内人だった。


「あら、あなたはこの宿屋の息子だったのね」

「そうだ。今は案内人の特訓中だからな」


 案内人の少年は、胸を張った。

 フォルナが席に腰掛けると、たくさんの美味しそうな料理が運ばれてきた。


「これがパン料理ね……とても美味しそうだわ」

「そうだ。母ちゃんが焼いたパンだから、口に合うと思うぜ」

 案内人も、隣の席に座って食事をとった。


「おや旅人さん、先程は大丈夫でしたか? この村に来たばかりだというのに、申し訳ありませんなぁ。この辺りには荒くれた者が多くいまして」

 他の旅人と話していた村長も、フォルナを気にして言った。

「大丈夫です。少し驚きましたが」

「……あんた、すごく勇敢なんだな!さっきの盗賊のやつに向かっていく姿、格好よかったぜ」

 案内人は、目を輝かせて言った。


「‥‥そんなことは、ないわ」

「謙遜するなよ。あんたのおかげで宝石屋は何も盗まれなかったんだから。一体どんな武器を使ったんだ?剣……ではないよな。短剣か?」

「ブーメランよ」

 フォルナは懐からブーメランの先を見せる。

「うおっ、いつでもその中に入れているのか」

「そう。父からの形見で……大切な物だから」

「へぇ。こんな武器見たことがなかったな。乗っていた変なロビンといい、この世界にはまだまだ知らないことがたくさんあるんだな」

「そうね……私も、この世界には知らないことがたくさんあるわ」


 フォルナは食べ始めると空腹から料理を残らず平らげた。

「ご馳走さまでした。自然の恵みに感謝します」

 フォルナは食後の祈りを捧げた後、案内人らにも感謝を告げて自室に戻った。


「さてと、これから準備しないとね」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

拾われ子のスイ

蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】 記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。 幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。 老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。 ――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。 スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。 出会いと別れを繰り返し、生命を懸けて鬩ぎ合い、幾度も涙を流す旅路の中で自分の在り方を探す。 清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。 これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。 ※基本週2回(木・日)更新。 ※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。 ※カクヨム様にて先行公開中(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載) ※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。 ※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! 仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。 カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

処理中です...